第170話 吹雪
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「一応は成功ってわけだな」
ジュロンがほっとした様子で言う。
「うん。あとは時間かかるから試してみて不具合があったら知らせるね」
「わかった。ヴァンデラー師、あとはよろしく頼むな」
「ああ。報酬はすぐ振り込んでおくよ」
「そういうところは最高だぜ。守銭奴なのになあ!」
「金払いが良くないと、仕事してもらえなくなるだろうが。金払いのいい顧客は大歓迎だがそうでない顧客は二度と来るなって思うだろ? そういうことだ」
「さすがだな。金のことになるとシビアなところは筋金入りだ」
「あんまりガタガタ言うと払わんぞ」
「勘弁してくれ! ハンスの方はどうだ?」
「今のところは問題ありません」
「よし。こっちも不具合が出たらすぐに言ってきてくれ」
「はい」
満足げな表情を浮かべたドワーフさんたちは帰っていった。
「あとは時間のある時に進めなさい」
師匠がドワーフさんたちを見送って戻ってくると、俺の手にあるグラスを見た。
「はい」
もう、時間が遅いからな。仕方ないか。集中すると時間が経つのも気づかないから、ラヴァのグラスを完成させるのは次の休日にすることにした。
その日、王都は珍しく大雪になり、外出が不可能になった。
「これじゃあ、学院にいけないね」
窓を開けると、吹雪いた雪が吹き込んでくるので、窓も開けられない。
スピネルが魔道具のランプを点けて部屋を明るくしてくれた。
俺という魔石電池がいるので、蝋燭より安価という話になった。
対価もらう案件じゃないの!?
と思ったが、師匠のおうちに厄介になっているのは俺なので、素直に魔力を魔石に充填して回った。
ギードとカリーヌに、勉強を教えてもらい、工房への道は俺が切り拓く。
途中で師匠が追いかけてきた。
「ルオ、無理はするな。今日は屋敷にいなさい」
「せっかく学院に行かない日なのに」
ガラス三昧をしようと思ったのに。
「ルヴェールじゃないんだぞ。雪は溶かさなくていいから、お茶を飲んであったまりなさい」
「は~い」
雪が積もったあの日、一心不乱に雪を解かす様子に何か思ったらしいみんなは、俺が雪を溶かそうとするとあの手この手で止めに来る。
なんでかな?
でも今日は吹雪いているから、溶かした端から積もってしまうんだけど。
師匠の言葉に頷いて、談話室の暖炉の前であったまることにした。
ラヴァはすぐに暖炉にダイブして気持ちよさげにしていた。
師匠の淹れる美味しい紅茶と料理人さん渾身のお菓子を食べてほかほかした気持ちになった。
「師匠の淹れる紅茶、すっごく美味しい」
「お? そうか? マナーの一環で身につけたからな。どうせ飲むなら美味しい方がいいだろ」
「うん! それは凄く思う!」
「教えるから淹れ方覚えるか?」
「うん!」
「よし! じゃあ……」
「旦那様、またの機会に準備万端で臨まれる方がよろしいかと」
スピネルが立ち上がりかけた師匠をすかさず止めに来る。
「う。そうしよう」
スピネルの紅茶も美味しいんだよな。スピネル仕込みってわけじゃないのかな?
そんなスピネルの側にギードがいる。
ギードもスピネルの側に付いていろいろ学んでるようだし、カリーヌも侍女見習いとしていろいろ頑張ってるみたいだ。
「ルオ様、お菓子のお代わりはいかがですか?」
大皿に盛ったお菓子をカリーヌが取り分けてくれる。
「ありがとう」
スイートポテトと、モンブランだ。
栗があったのが驚きだ。ルヴェールでは見かけなかった。
気候的に無理なのかな?
いや、苗木をルヴェールに送れば何とかしてくれそうな気がする!
栗ご飯食べたい!
「美味しい」
(僕も食べる)
ラヴァが欲しがったので、小さく分けて皿に置くと、長い舌を出して絡めとって食べた。
(美味しい!)
嬉しそうにくるくる回る様子に、みんながほっこりした。
外は猛吹雪で、ガタガタと鎧戸が揺れて轟々と風が鳴る。
使用人の別棟に行くのにも危ないので、空いた部屋に急遽泊まるそうだ。
「通路で繋ぐか?」
ぼそっと師匠が呟いたので、離れと繋がる日も近いかも。
「ルオ様、『クリーン』」
ギードは俺の部屋の隣の侍従用の部屋に泊まるそうだ。
「何かご用事がありましたらベルでお知らせください」
そう言って下がっていった。
もう完璧じゃない!?
ラヴァと一緒にベッドに入って、風の音を子守唄に眠りについた。
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