第169話 アダマンタイト
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「さて、ハンス、ちょっと話がある」
「は、はい!」
ハンスの身体がめっちゃビクンって跳ねた。ハンスは俺が説教されてた間顔が引きつってたからな。
「わ、私も正座した方がいいですか?」
「なんでだ。このグラスの件だ。この、普通のガラスを使ったグラスにはあの機械でも削れるし、こんな作品にできる」
「はい」
「確かハンスには四人弟子がいたな。どうだ? 弟子にこれは作れそうか? ガラスペンと適性で分けてもいいが」
「そうですね。やらせてみてからになりますが、新しい素晴らしい物を作るのは職人の本懐なので必死にやると思います」
「職人は必要だな。できれば若いのがいい。独立できるが、資金やなんやらでできない層を狙うか、祝福の儀を狙うか」
「え、誘拐するの?」
「勧誘するんだ」
師匠にデコピンされた。
「ガラスペンと、グラスはそれぞれ部門を分けた方がいいだろう」
「鏡は……」
おずおずとハンスが手を挙げて聞く。
「それもあったな。鏡はこのチャロを中心にしたいが……どうだ? チャロは鉱石から成分を取り出して錬成まで一貫で作れるか?」
「は、はい。魔力が少し、心もとないです。スキルの熟練度がまだまだなので、もっと練習しないと」
「まあ、そこは仕方ないな。俺は魔力が多い方だからそこら辺で苦労したことがないからな。増やせとしか言えんが」
師匠は顎に手をやって唸っていた。
「よし、錬金術ギルドで勧誘するか。とりあえずハンスはバーナーでガラスペン、チャロはポーション作りと鉱石からの成分抽出を軸にしろ」
「はい」
「え、ええと、はい!」
「ルオは……とりあえず、もう何個か、このグラスを作っておけ」
「え……」
「アダマンタイトを使った工具や機械ができてから試すんだろう? 一個だけだと、失敗したらおしまいになるぞ。それと、こっちの試作に作った透明なグラス。ハンスにも作っておいてもらえ」
「わ、わかった」
「透明なグラスは儲かるだろうしな」
あ、師匠の目が金貨に!
「ま、ルヴェール子爵と相談だがな」
師匠が俺の頭に手を乗せて髪をかき乱した!
(僕の色のグラス、もっと作るの?)
(そうだよ。もっとね!)
(僕の色、いっぱい!)
嬉しそうにラヴァが俺の周りを駆け回る。
「とりあえず、ルオはポーション作りだな」
ガラス作りじゃないんだ! がっかりだよ。
それからグラス作りも日課になって、あっという間に残りの冬休みは終わった。
久しぶりの学院に道の端に雪が積もってるのがかすかに残る中、馬車で向かった。
「外は寒いんだな」
(寒い? 暖める?)
ラヴァが首に巻き付いて熱を上げる。
「あったかい。ありがとうラヴァ」
ラヴァにほっこりしながらしばらくすると、学院に着いた。
馬車を降りると、吐く息が白い。踏みしめる石畳から霜が鳴る音がした。
「おはよう。元気だったか?」
「おはよう。元気だよ!」
久しぶりに会うタビーが教室に先に来ていて、手を挙げて挨拶を交わした。
「課題は終わったか?」
タビーがにやにやとした顔で言ってくる。
「もちろんだよ! 終わらせないと他のことをする許可が出ないし」
「ああ、それは自然と片付くようになるな」
「もう少し信頼してくれてもいいと思う」
「ルオは真面目だから、そこは信用できると思うぞ」
「ありがとう! タビー! タビーももちろん課題は終わってるでしょ?」
「もちろんだ」
タビーと話していると先生がやってきて、課題を集めたり、注意事項を話したりして、あっという間に一日目は終わった。
それから学院の日常が戻ってきて、毎日座学や実習にへとへとになる。
そしてアダマンタイトを装着した機械がやってくる日になった。
「よし、これだ」
ジュロンが動かした機械は、回転する円盤がキュイーンと音を立てて回る。
アダマンタイトが使われているはずなのだが、よくわからない。
「それからこれだ」
ジュロンが渡してくれたのはガラスに彫刻を施すための道具。
「問題があったら直すから言ってくれ」
「ありがとう!」
まずは透明なグラスで試し運転をして、ラヴァの色のグラスに線を入れる時が来た。
ごくりとつばを飲み込んで、印をつけた線をなぞる。
機械音を立てながら白い線が入っていく。
「おお、削れているな」
「成功か?」
後ろで師匠やドワーフさんたちが突っ込む。
そっと機械から離してグラスの様子を見る。
削れている。
「これで大丈夫みたい」
俺が言うと、ドワーフさんがわっと喜んだ。
ラヴァのグラスに入った、一筋の光。
アダマンタイトの刃は確かにヒヒイロカネを削っていた。
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