第168話 ヒヒイロカネ
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「ヒヒイロカネは幻の鉱石といわれて、現存するヒヒイロカネはダンジョン産出のドロップ品で、剣のような完成品だけだ。一体どこに鉱石が……」
「ダンジョンドロップ品といえばいえるかな? ほら、採掘ポイントがあるじゃない? あそこから出た石の中にあったんだよ。鑑定で確認して抽出で取り出してガラスに混ぜて加工して、錬成したんだ。綺麗にできたでしょ?」
あれ? 皆さんが何とも言えない顔をしているなあ。
「まて、ダンジョンの採掘ポイントから、だと?」
「転がってきて拾った石の中にあったよ」
「ヴァンデラー師、転がってきたとは?」
「ルオはダンジョンにも好かれているようで、勝手に石の方から拾ってってやってくるんだ」
「お前は何を言ってるんだ?」
ジュロンが眉をよせて師匠に抗議した。
「何って真実だよ。そもそも採掘ポイントを見つけたのはルオがダンジョンの壁を鑑定しまくった結果だし、その採掘ポイントをルオが鑑定すると、ぽろっと石が欠け落ちてルオの足元に転がってくるんだ。俺だって、見間違いかと思ったぞ。だから、ルオにだけ起こる現象なのか、確かめてもらったんじゃないか」
「あ、あの依頼か……」
そしてジュロンがジト目で俺を見た。
「愛し子は相変わらずやることが普通じゃないな」
「愛し子?」
愛し子ってなんだろう?
「ルオ坊っちゃんのことだよ。それだけ精霊に好かれてるんだから愛し子と言って過言じゃないだろう。もしかしてダンジョンにも精霊がいるかもしれん」
「ああ、ダンジョンの精霊か。いそうだな」
師匠がうんうんと頷く。ハンスとチャロは置いてけぼりになったみたいで目をまん丸にしていた。
「まあ、この話は内密で」
魔法契約書で契約した。
ハンスはもともと契約を交わしてるのでなしだった。全員分の契約書は俺の懐から出るらしい。酷い!
「魔法契約書は高いんだ。タダというわけにいかん」
師匠の守銭奴―!
「話を戻すぞ。ヒヒイロカネがこれに混ざっているんだな」
「うん」
「この機械では削れないかもしれないぞ?」
「え? どうして?」
「ヒヒイロカネは硬いからな。ドロップ品の剣に傷一つつかないのはそのせいだろう。そんなに硬いのならどうやって鋳造したか謎なんだが」
「え? ガラスと一緒に溶けて混ざったよ? ガラスの溶解温度でちゃんと溶けるよ」
また俺に視線が集まった。
「でも錬金術で、抽出、加工、錬成したから使わないでやったらできないかもしれないね」
「そこは錬金術か」
ジュロンがなぜかほっとしたように言う。師匠が嬉しそうに頷いている。
なんだかなあ?
「ルオ、やり方をここに書くんだ。特許だ特許」
師匠が羊皮紙を出してきた。本気だ。
「ええ? それも特許なの?」
「とにかく出しておかないと、似たようなものを後から出されて却下されたらもったいないからな」
なんだか前世の商標や特許の仕組みと激似だな。
「ヴァンデラー師それは後回しに」
師匠がジュロンに言われて渋々羊皮紙を引っ込めた。
「あ、アダマンタイトとか、どう?」
師匠が顔を片手で覆った。
「アダマンタイト」
「うん。アダマンタイト」
俺はインベントリから鉱石を出した。
「これ、アダマンタイトが入ってて……『抽出』『加工』」
この鉱石に入っている量は大したことないので、入ってる鉱石を三つ連続で加工する。それで何とか、約10グラムの小さなインゴット。
「こんな感じ?」
師匠が顔に手を当てて天井を仰いだ。ドワーフ工房の面々は目を丸くしてインゴットを見ている。
ハンスはおろおろしてて、チャロは目を瞠っている。
なんだかカオスだな。
「手に取ってもいいか?」
ジュロンの言葉に頷く。
「あー、残念なことに混じりっけなしのアダマンタイトって出たな。よしこれを刃に取り付けてやるからもう少し待て」
ジュロンは機械を持ち上げて帰ろうとする。
「あ、待ってバーナーの確認!」
「あ、そうだったな。ハンスが試すんだと言っていたな」
「は、はい!」
それからバーナーの確認でガラスペンをハンスが作った。
足で踏むペダルで調節する仕組みだ。
「これ、とてもいい感じです」
バーナーはとりあえず大丈夫みたいだった。
「あの、こういうの出来ない?」
俺は手で彫刻できるような道具を作ってもらうことにした。
手の方が何とかなりそうな気がする。
ドワーフ工房の方々が帰っていった。
「ルオ、ちょっとそこに座りなさい」
師匠に正座させられた。
「いいか? スキルは隠すものだって言わなかったか? あの精度で錬金術スキルを使えるのはうちの協会でもそうはいない。成人していたらいいが、まだルオは成長途中の子供なんだ。無茶も無理もするんじゃない。それと、俺にアダマンタイトとヒヒイロカネの鉱石があると、報告がなかった。報告は絶対するように。必要なかったらないというからな」
「はい」
「よし立っていいぞ」
「痺れて立てない~」
「暫く足を伸ばしておけば治る」
「ううう」
俺が涙目になっているとラヴァが頬擦りをした。
(主、元気出す)
「ありがとう、ラヴァ」
(ちょっとルオに厳しんじゃない?)
「いいんだ。常識を……常識ってなんだ?」
(主、しっかりしてよ!)
カルヴァが突っ込んだ。
「あ、あと特許の書類を書くんだ。二枚あるからな」
師匠!!
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