第113話 魔法の授業
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「へえ~ここが更衣室か」
実技棟の一階に男女別に更衣室があり、鍵は魔力キーだった。
鍵をかける時魔力を流しロック、開けるとき魔力を流して開けてそこでクリアされる。
暗証番号式と似たような感じだね。
適当な空いているロッカーの前で着替える。
いろんな術式が付与されている運動着だ。これ一着を考えると、貴族ってお金持ってなきゃできないなと本当に思う。
うちもいろんなことがあって、収入が増えて何とかやっていけるけど、前のままだったら俺はバイトくらいしないと卒業できなかった気がする。そもそも筆記試験の成績はもっと低かったと思う。
そこは師匠に感謝だな。ガラス工房も何もかも。
「……あれ、その痣……」
「ん?」
「首筋の、赤い……」
「んん?」
(僕との契約の印だよ!)
あ、あの痣か!
「え、そうなのか?」
「タビーにもあると思うけど、噛みつかれたとこにあると思う」
「え、そうなんだ。気にしてなかったなあ」
「後で確かめてみたら?」
「そうするわ」
着替えて実技授業の行われる教室に向かう。入学試験の魔法の試験を行ったところだ。
教室に入ると、中央に仁王立ちしている人物がいた。
「師匠じゃないね」
「イケメンだな」
二つボタンの上着にシャツ、ブリーチにロングブーツ。切れ長のきりっとした涼やかな目は緑。長めの緑がかった金髪を後ろでリボンで束ねている。この人が魔法の教師だろう。
集まる人数が多いなと思っていたら、他のクラスと合同のようだった。
どうやらAクラスで、何となく煌びやかに見えた。
その中の一人を二度見してしまった。
金髪ドリル!
え、ほんとにあの髪型の人いるの?
「どうした? 気になる女の子でもいたか?」
タビーがにやにやして俺の視線の先を見た。
「めっちゃ高位の令嬢じゃないか?」
「そう思う?」
「思う」
うちのクラスじゃないものね! Aだと伯爵上位以上だもん。
「いや、髪型がね。どうやってあの髪型にするんだろうと思って」
「そりゃあ……どうするんだろうな」
二人でうーんと唸っていると、教師が手を鳴らした。
「揃ったようだな。私が、初級魔法の担当、ディア・ヘクセレイだ。今回は初めての実技授業ということになる」
あれ? 女の人? 某男役の人っぽい人だったよ!
「まず、生活魔法を全て、実演してもらう。できないものは後日追試になる。Aクラスから……」
名前が呼ばれて問答無用で次々と実演していく。
貴族って生活魔法習得率悪いんじゃなかったっけ?
「ヤバい、俺半分くらいしかできないぞ」
「え、そうなの? 僕、最初に全部覚えたけど……」
あ、種火、種火は気をつけないと。
「あ、呼ばれた! 行ってくる」
終わった生徒は繰り返し、できなかった生活魔法を練習している。
タビーが肩を落として帰ってきた。
「追試だ」
「ええ? なんの魔法ができなかったの?」
「送風とクリーンだ」
「クリーンはできないと困るよ?」
「そうだよな。あー」
タビーが落ち込んで膝を抱えた。
「次! フルオライト・ルヴェール!」
「呼ばれた。行ってくる」
先生の前に行くのに生徒の間を通るんだけど、生活魔法の呪文が先生への怨嗟に聞こえた。
「よし、水生成から」
「水を成せ、水生成」
とりあえず、コップ一杯。
それから、種火、盛土、送風、ライト、クリーンと順番にやった。
種火はガスコンロの火ぐらいに絞って頑張った。
先生が俺をじっと見て黙っていた。
「完璧だ。フルオライト、魔力制御は一級品だな。複合魔法を生活魔法と言い張る度胸があるのも頷ける。よし、次の授業から中級へいっていいぞ」
度胸? やっぱりサンドブラストは複合魔法判定なの?
「え?」
先生は一枚の羊皮紙をくれた。
「それは単位を修得した証明書だ。いっぱい集めると飛び級も出来るぞ。現にヴァンデラー師は飛び級していたぞ」
初耳!
「えええ? せ、生活魔法が初級を修めた証拠なの?」
「いや、初級は魔法制御ができるかどうかだ。属性魔法はできるものとできないものがいるからな。スキルによって差も激しい。だから誰でもできる生活魔法を見るんだ。中級からは理論も勉強するから座学も厳しいものになる。頑張れよ」
「ええ?」
俺は羊皮紙を握り締めて困惑した。
「どうした? 生活魔法は全部できたんじゃなかったのか?」
「タビー、僕が見るから、今のうちに合格するんだ」
「な、なんで?」
「じゃないと、僕は次から一人で、中級の魔法授業に出ることになるんだよ!」
「はあ?」
俺は事情を説明した。
「わ、わかった。でも、難しいんだよ」
「魔法はイメージなの! 送風はこう風が肌を撫でていく感じとか、いい?」
俺は髪を一本抜いてふうっと息を吹きかける。髪が風になびく。
「こんな風に風をイメージして!」
「お、おう?」
そうして練習すること十回。
「で、できた!」
「ほら、できた」
「でもクリーンは難しいだろ?」
「クリーン」
俺はタビーにクリーンをかけた。
「え?」
「クリーン」
「えっなんで何度も……」
「クリーン」
「ルオ?」
「いいから。どんな感じ?」
「あー、さっぱりしたというか……?」
「じゃあ、僕にクリーンをかけて」
「おう?」
「かけて」
「ク、クリーン」
「……まだだ。汚れを全て落とす……そうだな。ぬかるみに足突っ込んで、泥まみれになったのを水で洗い流したイメージだ」
「えええええ?」
「クリーン」
「わ、わかったよ! クリーン」
それからまた十回ほど繰り返した。
「……よし。もう一度先生に見てもらうんだ」
がしっと両肩を掴んで迫った。
(主……)
どうやらすべての生徒が終わったようで、練習している生徒にアドバイスしている先生にタビーが突撃していった。
タビーは先生から紙を受け取っていた。
よし!
すごく疲れ切った顔で戻ってきたタビーはため息を吐いた。
「次の時間から中級へ行くようにって。この教室の隣の教室だって」
「次って次のコマってこと?」
「そう」
え、そんな早い次だったの?
次の投稿は明日になります。
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