第112話 学院生活の始まり(二)
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「みんな席に着いたか? このクラスを担当するハレイ・モレーだ。担当教科は数学だ。座学は午前中、実技は午後だ。基本的なカリキュラムはそうなる。この教室を使うのは座学の時と、連絡事項のある今の時間、休み時間、イベント事の話し合いの時だけだ」
教室にいる人間の視線が先生に向いている。
「さて、一年の行事は入学時に配った紙に書いてある通りだ。一年時は基礎的な学習が多いが、一年時から研究室に入ってもよい。授業を受けて気に入った教師に研究室入りを願うのも知識に幅が出ていいことだ。嫡子以外は卒業したら職を持つこともあるだろう。そのための一助にはなる。今のうちに考えておくことだ」
そういいながら、一枚の紙を先生は配っていく。
「一か月のカリキュラムだ。実技は実技棟で行う。その際は実技用の服に着替えておけ。更衣室は実技棟にある」
配られた紙に書かれた授業の割り振りに眩暈がする。実技にマナーとダンスがある!
ダンス……。
紙を持った手が震えた。
(主?)
心配したラヴァが覗き込んできた。額を撫でる。
「今日は数学の授業だ。筆記具を用意。問題と説明は書きとめなさい」
それからすぐに初めての授業が始まった。
書くのに必死だった。
聞いたことは記憶術のおかげで覚えてられるみたいだけど、話す速度に手が追いつかない。
これ、速記とかできないとダメ?
鐘の音が響いた。
「今日はこれまで」
先生が出て行くとみんなが息を吐いた。
筆記具はみんなばらばらだ。書き写すのは木札が多い。インクと羽ペンはみんな共通だ。
俺は和紙なんだけど、羽ペンが引っ掛かる。羊皮紙なら大丈夫そうだから紙に合わせたペンなんだろう。和紙だと、筆ペン? まあ、俺が作るならガラスペンなんだけど。
「ルオ、それ、紙?」
「うん。うちの寄り親の侯爵主導で作っている紙。羊皮紙より安価だけど、多分高いかな?」
「あーなるほど。宣伝頼まれてるって奴か?」
「そんな感じ?」
「そういえば試験の時にもこの紙使ってたな。羊皮紙に変わる紙って事か?」
「羊皮紙より安いからじゃない?」
「経費節約って感じかな?」
「そうかあ」
「うちは節約しないとやってけないからな」
「それはうちも……だったけど、今はどうかな? いろいろやってるみたいだし」
「ああ、陞爵したからか」
「うん。両親は忙しそうだからね。文官大募集中だよ」
「へえ。じゃあ、ルオがめぼしいの見つけたら、親に言って打診すればいいさ」
「そういうもの? 自分のうち手伝うんじゃないの?」
「学院を卒業したら上の学校に通うような生徒はみんな職を探してるんだよ。まあ、俺は卒業したら、士官学校行くか、騎士見習いになるか、冒険者かって考えてたけどな」
「ふふふ~候補にうちも入れてね。ちなみに俺、冒険者に登録してるよ!」
「ええ? マジで!?」
「ダンジョンに入るのに必要だったから登録したの」
「そういえば領にダンジョンあるって言ってたなあ……俺も行ってみたいなあ」
「この辺にないんだよね。来年の夏にルヴェールに戻る予定だからよかったらうちに来る?」
「え、いいの、か?」
「両親に聞いてみる。タビーもお許しが出たらだからね?」
「ああ、もちろん!」
そんな話をしていたら次の座学の先生が来た。
一コマ九十分、午前中は二コマ、お昼を挟んで実技は二コマ分だ。
お昼は六十分。移動時間を含めると実質四十五分くらいかな。
これが六日間続いて一日休みだ。少ないように見えるけど、休みなく働くのが大半だから、学院生は優遇されていると思う。教師は研究があるから休みの日は研究だって。実質休みなしだよ。
ブラックな社会だなあ。
ガラス作るのなら俺もずっとやり続ける気がするから、何とも言えないんだけどね。
「お昼はどうするの?」
授業が終わってみんな席を立っている。クラスのみんなはやっぱり派閥というか、知り合いで固まっているみたいだ。
多分、領地が近いもの同士だろうな。
「食堂行っていいか?」
「もちろん。食堂で、お弁当食べてもいいんだよね?」
「確かよかったと思う」
「じゃあ、行こうか?」
「ああ」
鞄に入れてたお弁当のバスケットを手に、食堂へ向かった。
「ここが食堂かあ」
校舎の一階にある食堂は入口が開け放たれていて、たくさんの生徒が中に入っていくのが見えた。それを見て、タビーが呆然としていた。
「いっぱい人がいるぞ」
「うん。席取れるかなあ? 僕お弁当だから席取りしようか?」
「頼めるか?」
「うん!」
俺は食堂内をきょろきょろと見まわして隅っこの方のテーブルが空いていたのでそこに向かった。
弁当を置いて、席を確保した。
よかった。座れた。
カフェテリア方式なのか、みんな並んでいる。
ぼうっと眺めていたら、見覚えのある女の子が並んでいるのが見えた。
確か侯爵家の娘さんだ。
そういえば一年被るって言ってた気がする。
挨拶行ってないなあ。行った方がいいのかな?
でもクラスとか知らないし。あ、侯爵家だからAかな?
そんなことをぼんやり考えていると、タビーがトレーを抱えてきょろきょろしている。
手をあげると、気が付いたようでこっちに向かってくる。
「いやーすっごい並んだわ」
「ここから見てても並びが凄いの見えたよ」
「早く食べて移動しないとな」
「第二実技棟だっけ?」
「うん。魔法の実技だからな」
「師匠かな?」
「中級って言ってたから違うんじゃないかな?」
「一学年だから初級かな?」
「かなあ?」
タビーのトレーの中はスープとパンにメインの料理。肉みたい。
結構存在感のある肉だから、育ち盛りの生徒も十分お腹いっぱいになりそう。
「美味い」
「ほんと?」
「安かった。まあ、コースによってすっごい高いのもあったけど」
「爵位が上の人用かな?」
「個室があるんだってさ。予約すると使えるみたいだ」
「そうなんだ。まあ、卒業まで縁がなさそうだけど」
「言えてる」
食べ終わるとクラスにバスケットを置いて、着替えを持って実技棟へと向かった。
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