第111話 学院生活の始まり
「師匠! どういうこと!?」
屋敷に帰ってきた師匠を問い詰めた。
「わはは! 驚いたか!」
してやったりの顔をしている師匠に口を尖らせた。
「驚いたも何も……教師とかやる暇があるのか……」
びくぅっと肩が揺らいだのは見逃さない。
「まあ、何とかなる……はず?」
「師匠も文官を雇うべきだと思うんだけど……」
「錬金術師を補佐でこき使う予定でいるんだが」
「……ブラックな職場にはしないであげてね」
師匠の視線が泳いだ!
「基礎を教えつつだからな。弟子扱いにはなるかな?」
「弟弟子って奴!?」
「……ぱっと見には向こうが兄弟子だが、そうなるな」
「いろいろ教えなくっちゃな~」
「ルオが教える? そもそも、常識は向こうのほうがある。ルオはまず学院に慣れないとな」
「ええ~……はい」
常識は俺にもあるよ!
「彼は今ポーション作りを必死にしているところだ」
「基礎だね」
「ああ。一番の基礎だ」
今、錬金術師は使用人棟に滞在中で、師匠から出された課題をこなしているとのこと。
魔法の基礎はギードとカリーヌが勉強の合間に教えているそう。
学院で忙しいのに、執事見習いも侍女見習いも頑張ってるのは凄いと思う。
そして、今日家族とラントとアグリがルヴェールへ帰る日だ。
みんなを見送ってから学院へ行くことになっている。
「ルオ、元気で! ちゃんと手紙を書くのよ」
「兄様! またね!」
「ルオ……学院は頑張りすぎないように」
「ルオ様、農場はお任せ下さい」
みんなが口々にお別れの言葉をかけてくれる。
「うん! がんばる! またね!」
手を振って馬車を見送った。
ちょっと涙ぐんだが、来年の夏の休みには帰れるはず。
「じゃあ、行くか」
師匠と一緒に馬車に乗り込む。
「師匠は魔法の授業をするって言ってたけど……」
「そうだな。魔法の座学と実技を受け持つが、AクラスとBクラスをメインにと言われててな。やはり魔力量の多い生徒が多いから、とのことだったが」
「爵位が高い方が魔力量が多いってこと?」
「そうだな。血筋的に多いもの同士婚姻したりするからな。あとは魔力量の多い生徒はBクラスになっているからだな」
「あ、タビーがBクラスだったのと関係があるの?」
「精霊に気に入られる魔力量だからな。当然学院側も魔力量の多い生徒には配慮するし、筆記試験の結果がいいものと悪いものっていうのは学習に金をかけられたかどうかにもよるんだよ。座学の授業の質にも関係するし、下位のクラスはマナーの授業の時間が多かったりするな」
「そういうクラス分けなの?」
「ああ、なるべく生徒の学力がクラスで平準化するように組まれている。Aクラスは別格だが、もともと高位の貴族だから、家庭教師の質もいい。成績も上位の者ばかりだったな」
「僕の先生は師匠だから成績が良かったって事なんだね。よかった~」
頭をぐりぐりされた。
「ああ、結果を見て嬉しかったよ」
えへへ。よかった~
「武芸の成績にはウォルトががっかりしていたけれどな」
「短剣でやったらもう少しよかったと思うんだけど、片手剣でやったから……」
思わず視線を泳がせてしまった。
「それでいい。貴族は騎士道というか、剣を重視しているからな。背も大きくなるし、上達はこれからだろう」
よし、よく動いてよく寝る! 夜更かしは敵!
「そろそろ着くな。先に出なさい。俺は少ししてから出る」
「はい! じゃあ、頑張ってきます!」
「ああ、頑張れよ」
さっと馬車を降りて門をくぐる。結界を通ったのがわかった。
クラスのある校舎に向かう。
靴を履き替える必要はないので、下駄箱はない。
「おはようございます!」
クラスのドアを開けて一声かけてから中に入る。
中を見回してタビーを見つけた。昨日と同じ席だ。
俺も昨日と同じ隣の席に着く。
「おはよう。タビー」
「おはよう。いや~ヴァンデラー伯爵が魔法の先生とはなあ」
「うん。僕も驚いた。驚かそうと思って黙ってたんだって」
「あー、そういうところあんのか」
「気さくな人だよ。厳しいところもあるけどね」
「そうか。楽しみだな。魔法の授業。なんたって賢者だものなあ」
「師匠、有名なんだね。凄いのは知ってるけど」
「なんでそんなに普通な感じなんだろう。マジックバッグを発明した偉大な賢者なのに」
「それは知ってるよ。魔法も凄いし、何でもできるし」
「そうか。そうだよな」
「アームは連れてきてないの?」
「結界に反応したらまずいからお留守番だ」
「あー、寂しがってないといいけどね」
「ほんとだよなあ」
ざわざわとした教室の音が消えた。先生が入ってきたからだった。
次の投稿は明日になります。




