第108話 友達(三)
本日から一日二回、8時と18時投稿になります。
倒れたタビーを客室に運び、師匠に状況を説明するため、師匠の執務室に俺とラント、そしてスピネル、父と師匠が集まり頭を抱えた。
スピネルには最初から状況を話す羽目になった。
「ほほう、それは素晴らしい。旦那様も水臭いですね。内緒にしていたなど」
師匠の肩が跳ねた。
「私も、ルオが火の精霊と契約しているのは知っていたが、ヴァンデラー卿やラントまでも契約者となっていたとは」
父の一睨みに師匠とラントが頭を下げる。
「まあ、うちの一族は精霊に祝福されたものが出やすい家系だからルオが契約者となるのは何ら不思議ではないんだが……」
「え、そうなの? 父様」
初耳。
「ああ、ルヴェール領の開拓は初代が精霊の祝福を受け、我が一族に許された経緯があると、我が家の歴史書に書いてある」
「あれ? 読んだはずなんだけど……」
「忘れただけだろう」
師匠が突っ込んだ。酷い!
「ラントも、ヴァンデラー卿も我が家の関係者だから問題ないが……」
「彼は部外者ですからね。契約者だと知られればあちこちから狙われてどこかに攫われるか、王家に囲われるかになりますね」
師匠が神妙な顔で言う。
俺とラントは顔を見合わせてぶるりと震えた。
(大丈夫よう。精霊の契約者に危害を加えることはできないわ)
カルヴァが姿を現して師匠の肩に乗った。ラヴァも俺の肩に乗っかった。
(精霊王の怒りを買えば国が亡ぶ。さすがにそれはしないと思うけど)
ラントの肩にいるアースが神妙に言う。
(主は僕が護るよ!)
「ありがとう、ラヴァ!」
(むふー!)
ラヴァをぎゅむっと抱きしめる。
「今夜は泊まってもらうと使者を出そう」
師匠が手紙をしたためてスピネルに託すとスピネルが出て行った。
(とにかくあの人間と契約した土の精霊は僕とラントと一緒にいた上級の土の精霊で、契約者を探していたんだ。だから、好ましい魔力を持っていたあの人間に契約を持ちかけたんだと思う)
(え、あれって結構強引だったわよね?)
(うん。かなり強引)
二人の言葉にみんなで頭を抱えた。
「とにかく目が覚めたら事情を話そう」
師匠がため息を吐きながらそう言った。
「あの、それとですね。錬金術師の方も一緒に馬車に乗ってきたのですが……」
「ああ……その対応は私がしよう」
師匠が慌てて言う。
「ではいったん解散だな」
父が締めて執務室からみんなが出た。
「ルオ様、報告があります」
「じゃあ、僕の書斎に一緒に来てくれる?」
途中、メイドさんにお茶を頼んで、書斎に入った。
「村の農民の皆さんに畑は任せて帰ってきました。トマトは順調で、他の野菜や小麦も豊作の見込みです」
(下級の土精霊がたくさん増えてたから心配ないな! あと、河口の砂を拾ってきた)
「これです。ルオ様が喜ぶってアースが言うので」
十センチ四方の箱を渡された。開けて入っていた砂を鑑定した。
珪砂だった! しかもかなり質がいい。ガラス製造に最適って出た!
「こ、これ……」
(気に入ってくれた?)
「ぜひ、お納めください。ヴァンデラー伯爵様にもご報告を……」
「うん! ありがとう!」
(あ、もう一つあるんだ。湿原のことだけど……)
「そうなんです。泥炭は燃料になるとか。でも手を入れると湿原は失われるので……」
アースがうんうんと頷いている。
「それは師匠に報告して、師匠がどうするかだね」
俺は報告書を書いてまとめた。
「お疲れ様! ルヴェールに帰ったら僕の農場を頼むね!」
「はい!」
(はい!)
タビーは夕食の時間も目を覚まさなかった。
師匠の執務室で、ラントの話をまとめた報告書を師匠に渡した。
「珪砂が採れるって?」
「うん。これだよ」
もらった箱を師匠に渡す。師匠は珪砂を鑑定した。
「……ルヴェールと珪砂の取引をしようか」
「いいの?」
「ああ。領が潤う。資金があればいろいろ手を入れられる」
「泥炭は?」
「湿原の調査を依頼しよう。そういった研究をしている研究者が学院にいたはずなんだ」
「なるほど。専門家に意見を聞くんだね」
「そうだ」
「……タビー大丈夫かなあ?」
「……魔力の方は一晩寝たら回復するが、なんといったものか」
「そうだね」
は~ッと二人でため息を吐いた。
翌朝、タビーが目を覚ました。
俺と師匠がまず部屋に訪問した。
「タビー気分はどう?」
「あーまあ、すっきりしてるけど、お腹空いたな」
「朝食!」
タビーは夕飯抜きだった!
「美味しかった!」
タビーはぺろりと二人分平らげた。うん。夕食食べてないもんね。
「それで、今は朝なんだけど、一応ご家族には泊まるって報告はしてるよ」
「そうなんだ。悪い」
「いや、なんだか、巻き込んでしまってすまない」
「伯爵……えっと巻き込んだとは? こいつのこと?」
タビーが肩を指し示すとひょこっと土の精霊が姿を現した。アースに似てるけど、ちょっと目つきがきつめだ。
「名前は?」
俺はタビーに聞いた。
「ええと、アームってつけた」
「アームが何かわかってる?」
「ああ、土の精霊だろ。ビックリしたけど、まあ、いいかなって思ってさ」
アームと見つめあうタビーは気負ってもいなくて自然な笑顔だった。よかったー。
「で、俺、契約して初めて知ったんだけど、ルオも、伯爵も、精霊持ちなんだな」
「あー、うん」
(僕ラヴァ!)
(私はカルヴァよ! よろしくね)
「よろしくな。……これって結構、秘密だったりする?」
タビ―ご名答!
次の投稿は18時になります。




