第104話 学力試験
「受験者だね。受験票を」
「はい」
「会場は番号ごとに振り分けられてます。貴方はこちらに向かってください」
「はい」
俺は二号棟の第二教室だった。案内の紙を見て向かう。
いよいよ試験だ! 頑張ろう!
教室は前世での学校のつくりとほぼ同じで机と椅子が並べられていた。
俺の試験を受ける教室の人数は二十人ほど。一つ置きに受験票の番号が置かれていて、そこに座る。
高校受験か大学受験の雰囲気そのままだ。
世界が変わってもこういう仕組みは同じになるのかな?
周りは俺と同じくらいの男女。親しい者同士もいるのか話をしている者もいる。
しばらくすると、試験官と思しき人物が三人入ってきた。
「解答用紙を配ります。試験問題はあとから配りますので、まず一番上の右端に名前を書いてください」
注意事項、制限時間等の説明をしてから、試験官はそう言った。時間は砂時計の砂が四つ落ちきった時。教壇の上に砂時計が四つ並べられている。
インクをつけた羽ペンで書く。ガラスペンを作りたいな。万年筆もいい。
「問題は伏せたまま、始めという言葉を聞いてから表にしてください」
全員に問題が配られる。
「始め!」
紙をひっくり返す音が響き、続いてカリカリという音が響く。
この紙は和紙だ。
もう、こんなところにも使われている。
なんだか嬉しいなあ。
ペンが軽くなった気がして、俺は上機嫌で問題を解いていった。
「ペンを置いて! 集め終わるまでは手を膝に置いて待っていなさい」
他の二人が集めて回る。問題は回収しなかった。
「では、昼食の後、実技試験を行いますので教室を移動してください。皆さんは第二実技棟に次の鐘が鳴るまでに集まってください。昼食は食堂でも、この教室でも取れます」
食堂かあ。一応おにぎりを作ってもらったから、それを食べるか。
水筒も持って来たし。
「クリーン」
手をクリーンで綺麗にしてカバンから取り出す。
籐で編んだお弁当箱におにぎりが入っている。師匠の領の海で採れたサケに似た魚の身が入ってまさにサケおにぎり!
「いただきま……」
ぐぅ~
後ろから聞こえた腹の音。
振り返ると短めのこげ茶色の髪、焦げ茶色の目の勝気そうな男の子と目が合った。
男の子の顔が赤くなる。
「食べる?」
俺はおにぎりを差し出した。
「初めて食べるけど美味いな!」
そうだろうそうだろう。
「いや~お昼のことすっかり忘れてたよ! お金貰ってなかったから食堂使えなかったし」
「そうなんだ。うっかりだね」
「うっかりって……いや、うち貧乏だからじゃないか? 貧乏男爵家だし」
「一緒一緒。うちだって似たようなものだもん」
「俺もあんまり社交してないから詳しくないんだけど、この教室にいたのって大体男爵クラスからせいぜい子爵クラスの子女ばっかりだぜ。今はもうちらほらとしか残ってないけど」
「そうだね。みんな食堂行ったのかな?」
「多分なあ……あ、俺はテイバート・トレメイン。みんなはタビーって呼ぶぜ。しがない宮廷勤めの文官の息子だよ」
「僕はフルオライト・ルヴェール。昔男爵、今子爵家の息子だよ。みんなはルオって呼ぶ。よろしく」
「へ? 子爵に格上げになったのか?」
「うん。領地が増えたからだと思う」
「え、戦争とかないのに?」
「スタンピードで隣が凄いことになっちゃって、それでらしいよ」
「ええ? そりゃヤバかったな! 大丈夫だったか?」
「デュシス侯爵の軍が救援に来たから大丈夫だった」
「ああ、西の……ルヴェールって西の貴族?」
「たぶん? 寄り親だし」
「ああ、霊峰のふもとの貴族?」
「そうそう! 森がすぐ近いよ!」
「へえ~うちは領地がないからなあ」
「ないの?」
「その代わり、給金貰ってるんだよ」
ごくり、と水筒から水を飲む。おにぎりは二人で分け合った。タビーは水袋を持ってきていた。
「あ、そろそろ実技棟に行かないとまずいかも!」
「そういや、あの辺にいた奴らもいなくなってる。行こうぜ」
ちょうど実技棟に着いたときに鐘が鳴った。
よかった。
実技試験は魔法と剣技をそれぞれ受ける。
魔法は順番に使える魔法を使って見せるだけ。一応的も用意されている。
剣技は打ち合いをして試験官が見極めるって話だった。
「火魔法が多いねー」
初級魔法のファイアボールを的に向けて撃つ人続出だ。
「うちの国は火魔法の使い手が多いんだよ」
「え、そうなの」
「そうだよ。俺は土なんだよ。火属性が良かったなあ」
「土属性、いいじゃん! 最高だよ」
「へ? 初めて言われたぞ、そんなこと」
「次! 33番」
あ、俺だ!
「行ってくる!」
「おう!」
土魔法は最高の魔法だと見せなければ!
「サンドブラスト!」
杖を的に向けてサンドブラストを放ったらゴオオオオと音がして渦巻き状の風に砂が舞った。その砂が直撃すると的が壊れた。あ、出力調整間違えた。
ちなみに俺の立っているところから的まで砂だらけになった。
みんなぽかんとした顔で見ていた。
試験官もぽかんとしていた。
「あれ、弁償ですか?」
「は? いや、大丈夫だ。学院の備品で、試験によるものだから……え? 複合魔法?」
「土魔法です」
「いや、風の属性が」
「土魔法です。ちなみに生活魔法です」
「え?」
「盛土を発展させました」
「いやいや」
「これで魔法実技は終わりですよね」
「あ、そう、だが……」
俺はくるりと身を翻してタビーの元へと戻った。
「土魔法、結構使えるよね?」
「ルオ、お前……」
「あ、あれ生活魔法。生活魔法の盛土だった」
「俺はあれできないけどなあ……盛土はできるけど」
「38番!」
「あ、俺だ。行ってくる」
タビーはロックウォールを実演した。
詠唱から出現まで早く、硬くしっかりした壁だった。
凄いのに、火属性の方がいいなんて、わかんないなあ。
次の投稿は明日になります。




