第103話 家族がやってきた
領主になったら他人事じゃないよなあとちょっと震えた。
俺が領主になるまで文官をたくさん雇わなければ!
父は大丈夫なのだろうか。
それからも師匠とはすれ違い。スピネルによると大丈夫っていうんだけど、本当に大丈夫なのかな?
とにかく師匠の資料による復習もまだまだという中、家族がやってきた。
「ご家族が到着したようですよ。いったんお終いにして出迎えましょう」
思わず万歳をしてしまったのは仕方ないんじゃないかな?
「兄様!」
「イオ! 父様、母様!」
駆け寄るイオを抱きとめた。え、結構大きくなってるよ。それに筋肉質に……。
「元気だったか?」
「ふふ、ヴァンデラー卿を困らせたりしてませんか?」
「元気だよ! 母様、俺困らせてないよ?」
「本当?」
くすくすと笑う母様に思わず視線が泳いでしまう。
困らせた覚えはないんだけどなあ?
「では旦那様、私は荷物を置きましたら、厨房へ参ります」
「ああ、よろしく頼む」
エリックが来てる! よし! これで色々とできるなあ。
「皆さま、お部屋が整うまで、こちらでお休みになってください」
スピネルが花園の中の四阿にみんなを案内する。
ティーセットが用意され、お菓子も並んでいる。
「ヴァンデラー卿の領地はどうだった?」
「海を見たよ! 広くて果てが見えないの!」
「ほう。それは見てみたいな」
「お魚も美味しかった」
「お魚?」
イオが首を傾げる。
「海の肉」
「肉!」
母がくすくすと笑っている。
「私もお魚は食べたことないわ」
「きっと今日出してくれるよ!」
「それは楽しみだな」
「楽しみ!」
父もイオも楽しみだって。
スピネルを見たら頷いてくれた。きっとお魚出してくれる! マジックバッグにいっぱいに持って帰ってきたからね!
ちなみにラヴァはテーブルにいて、みんなにお菓子をもらっていた。
夕食はみんなで晩餐。
師匠もちゃんと顔を出して迎えてくれた。
お魚メインの食事で、みんなが目を瞠っていた。
とっても美味しかった!
父と師匠が二人で、話すことがあるとかで執務室へ。
ギードは早々に自室へ、カリーヌは母と楽しそうに話していた。
ギード、二人に何か言われたら怖いから逃げたんじゃないのかな?
イオはウォルトと話しに行った。懐いてるなあ。
俺も早々に自室に戻って、お勉強の続きだ。
(まだ、勉強するの?)
ラヴァが肩に乗って、手元を覗き込む。
「試験が近いからね。確認程度のものだから」
(そうなんだね。終わったら、遊んでくれる?)
「もちろんだよ!」
(じゃあ、我慢する)
それからラヴァはベッドに移動して丸くなった。
「ありがとう」
ラヴァの心遣いを無駄にしないよう、机に向かった。
翌日、朝からイオはウォルトと鍛錬していた。俺も走り込みをして、軽く参加した。
「もう、イオには敵わない気がする」
打ち合った後、俺はそう言った。受け止めた腕が軽く痺れていた。
「そんなことない。兄様は強いもの」
いや、俺、レベル上がってるだけで、素の戦闘力や技術はもう負けてるよ。
「祝福の儀でイオは戦闘系の職業をもらいそうだなあ。剣士とか?」
「それなら嬉しい。剣が好きなんだ」
「そうなんだ。僕がガラス好きなのとおんなじだね」
「……え?」
イオのそのびっくりした表情、なんでなの?
ウォルトのその苦笑い、どういうこと?
それから、大人組は献上品のことで忙しそうにしていてイオは俺が復習する傍らで、一緒に勉強をしていた。俺が使っていた教材をイオは使っている。
そうだ。俺と師匠が王都にずっといるってことはイオは誰に勉強を習うんだろう。
ローワンも忙しそうだし、ウォルトかな? 一応、貴族院に通っていたらしいし……。
ギードがルヴェールに戻ってきてくれればギードでもいいかもしれないけれど、あと一年は王都だし。
きっと父や母は考えてるだろうから、大丈夫だと思うんだけどな。
そうして、日々は過ぎ、入学試験の日になった。
「ルオ、頑張ってこい」
「頑張ってね」
「兄様、頑張って!」
「ルオ、落ち着いて頑張りなさい」
父、母、イオ、師匠の応援を受け、スピネルと一緒に馬車に乗り込んだ。
「行ってきます!」
俺は貴族学院の試験を受けに学院に向かった。
「ルオ様は落ち着いて試験に臨めば大丈夫ですよ」
「はい!」
今更ながら緊張してきた。
ラヴァにはお留守番してもらった。師匠が結界があるから一応避けた方がいいって言ってたから。
初めて王都に来たとき見た貴族学院の前にいる。
同じくらいの歳の男女が門に向かって歩いている。
「受験票は持ちましたか?」
「はい! 大丈夫です!」
「終わるころ迎えに来ますね。行ってらっしゃいませ」
スピネルに別れを告げ、門をくぐって受付に向かった。
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