第268話 終わりましたね。
ネロはアドバースの首を刎ね飛ばした。
アドバースの巨大な頭がドスンッと音を立てて落ち、身体も大きな音を立てて倒れた。
ネロはかつてない全能感に酔いしれる。そして、すぐに体の奥から力が溢れ出る。
身体が軋み、高熱を浴びて作り変えられていく。
蟻の体はどんどん小さくなっていくが、より黒くより堅固な外骨格へと。
人型へと変化していき、強靭な牙は両手の甲に移り、まるで双剣を構えているようだ。
背中には羽蟻の羽が生えており、その羽も鋼のような質感で美しく輝いている。
ネロは進化を果たし、SSランクのアルティメットバトルアントへと進化した。
「これが新たなる力…強大な個を打ち倒して手に入れた力。」
ネロは力を確かめるように手を握っては開いている。
「ネロ…貴方、進化したのですか?」
クルアは恐る恐るネロに念話ん送る。
「はい、女王。」
ネロはクルアに返事を返す。
「貴方は私の僕ですか?」
クルアは1番重要なことを尋ねた。
「はい、私は女王のしもべです。」
ネロはそう言って服従の念を送り、跪く。
「ふふっ、そうですか!!良かった、ならば…」
ネロの念話からは明確に服従の意志を感じる。女王としての力でネロがまだ自分の眷属であることもわかる。
クルアは安心して声を明るくした。
「しかし、私は誇り高き蟻の戦士。我らが神に顔向けできないことはいくら女王の命令といえども反することがあるやもしれません。」
「ふーん、なるほどね。私の命令に反しますか。」
めんどくさい。クルアは素直にそう思った。
明確な女王への命令に従わなかったネロを不審に思ったが、やはり進化への兆候であったか。
ネロがさらなる力を手に入れたのは喜ばしい。だが、これからネロという強力な駒が思い通りに動かなくなる。それはクルアにとってめんどくさい以外のなにものでもなかった。
そして、1番の懸念がある。ネロは進化を果たし、クルアよりも明確に格が上となった。
同胞達への命令権には影響が出ていないかだ。
ネロが従わないのはまだ許容できる。しかし、他の同胞がネロに同調し、従うのは許容することはできない。
しかし、それは杞憂であったようで同胞たちの私への従う意思は変わっていない。
これは役割の違いだろう。クルアは女王、ネロは戦士。
たとえ格がネロのほうが上だろうと女王は女王、戦士は戦士だということだ。
「か、勝った。勝ったぞ!!蟻の一族の戦士が強大な個を討ち取ったぞ!!!」
鬼の一族の族長サクラがそういって刀を掲げて雄叫びを鳴らす。
あちこちでそれに続くように勝利の歓声を上げた。
「はぁ、はぁ、本当に勝てるなんて。本当に、蟻の一族の力は…」
強大な個を討ち取ったことを一族の戦士から聞いたプシュケーはさらに蟻の一族への警戒を強めた。
そんなプシュケーの下に1匹の蟻が現れる。
「蛾の一族の長よ、あなたの奮闘に感謝します。」
その蟻のモンスターからクルアの念話が伝わってくる。
「いえ、1番多くの血を流したのはやはり蟻の一族でしょう。誇り高く戦い、冥府へと旅立った戦士たちに敬意を払います。」
プシュケーはそう言って膝をついて美しく祈りを捧げた。
「ありがとうございます。美しい貴方にそう祈って頂けるのであればきっと安らかに大地に帰ることができるでしょう。」
「強大な個は討ち取られました。我らも元の住処へと帰還します。」
プシュケーは祈りを捧げ終わると立ち上がって蟻に向かってそう言った。
「はい、そうですね。強大な個は多種族の協力の下、討ち取ることができました。皆様には感謝を送ります…。」
「皆の者、飛び上がりなさい!!」
第6感にて不穏な気配を感じたプシュケーは翼を広げて、周りの同胞にそう命じて飛び上がる。
次の瞬間、周りの茂みから蟻の大群が現れてこちらに襲いかかったのだった。
反応の遅れた蛾の一族が捕らえられ蟻に集られて悲鳴をあげて貪り喰われている。
「ふふっ、勘が鋭いですね。我が一族以外、神に仕えることは私は許しません。しかし、神に仕えぬ者は必要ありません。したがって、貴方たちはもう必要ありません。この迷宮は我が一族が、我が一族のみが神のために管理します。全軍反転!ふふっ、あははっ、さぁ、掃除を始めますよ!」
クルアは蟻の一族の全軍に他種族の掃討を命令した。
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