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第267話 強大な個との決着

黒軍の進軍は止まらない。

肉塊となった戦士たちの肉を踏みしめて。


クレーターの中心にいるアドバースは恐怖した。


どれだけ殺しても潰しても湧き出てくるこの有象無象の自分からしたら小さな蟻達に。

蟻たちが身体を這い上がりまとわりついてくる。視界が蟻に覆われる。

そして蟻たちは噛み付く。さっきまでは痛くも痒くもなかったその蟻たちの小さな牙は今は確かに痛みを感じる。

自身のドラゴンブレスで大地の鎧も剥がれ、自慢の龍鱗も所々捲れ上がっているからだ。


アドバースは龍の力を全身から放ちまとわりつく蟻どもを消し飛ばした。


そして、急いでアドバースは超再生のスキルで身体を再生させていく。

龍鱗が生え変わり、傷が癒えていく。自爆に思えるブレスを放ったのはこの超再生を待っているからだ。

あのブレスで大地の鎧は無くなり、傷ついたこの傷を癒すにはかなりの力を使うが、あのブレスで相当な敵の手練れを屠ることができた。


アドバースは思う。まだまだ戦えると。






しかし、生命力までは回復しない。





「死に近づきましたね?死に近づいた今の貴方なら私の力も通用するかもしれませんね?」


蟻どもを消しとばして晴れた視界に映ったのは白く美しいモンスターだった。広げて飛んでいる美しい羽は白い羽毛のような毛に覆われており、描かれているのは巨大な二つの瞳。

その二つの瞳が怪しく光る。


「死の光線。」

その怪しく光った二つの瞳から巨大な黒く怪しい光線が放たれアドバースは直撃を喰らう。


万全の状態のアドバースであればプシュケー程の強力な死の光線もレジストできたであろう。

しかし、アドバースは回復を繰り返し、死の攻撃のレジストに必要な生のエネルギーを使ってしまっていた。死に近づいていたアドバースにはプシュケーの全力の死の光線をレジストすることは叶わなかった。


「グゥフゥゥッ!!?」

力が、魔力が、龍の力が、己の力が抜けていくのがわかる。

そして、命が削られたのが明確にわかった。


蟻の一族だけならばアドバースは回復を繰り返しブレスで薙ぎ払い、龍爪を振い、圧倒的な暴力で問題なく対抗できたであろう。


今回の戦いで大きく違うのは相手は蟻だけではないということ。力と数だけではなく、特殊な攻撃を放つ敵がいるということ。



それはアドバースにとって致命的な敗因となった。


「はぁ、はぁ、我々は死の象徴。私の姿に見惚れて生きて帰れた者は居ません。貴方も死になさい強大な個よ。」

そう言って力を出し尽くしたのかプシュケーはヒラヒラと落ちていき、蛾の一族の戦士たちがプシュケーを保護するために急いで追いかけた。





力が、入らない、目が霞む。アドバースは自らの命の危機を感じていた。回復したいが大地の力は枯れてている。


アドバースの目の前に巨大な黒い大蟻が舞い降りた。アドバースの巨体からすれば1/10もないほどではあるが。


「我が名は蟻の戦士 ネロ。女王様の名においてお前を狩る。」

この黒い蟻は何度も見たことがある。蟻どもを指揮して我を何度も阻んだ憎き虫けら。


「我が名は大地龍アドバース。蟻の戦士ネロ…それが貴様の名か。」

アドバースは初めて蟻に念話を飛ばして会話をする。


「話せたのか。」

ネロは驚いたような感情を乗せた念話を飛ばす。


「虫けらなど話すに値しない…そう思っていたのだがな。どうやら我はその虫けら共に殺されるようだ。」


「そうか。」


「最後の悪あがきと行こうか。戦士ネロよ!我を一騎で撃ち倒して見せよ!滅ぶのならば誇りを持って死ぬ!虫に群がられ生き絶えるなど御免だ!!誇り高き戦士としてネロよ、我を討ち破って見せよ!!」

アドバースはそう言って最後の力を振り絞って龍の力を全身に纏った。


「ふふっ、ふざけないで貰えますか?なぜわざわざ一騎打ちに応じなければ行けないのです?さぁ、ネロ!兵士達に号令をかけて一気にその者の命を狩り取るのです!それが我らの戦い方なのだから!」

蟻の女王クルアはそう言ってアドバースを一蹴し、ネロにそう命令した。


「…お許しください、女王様。その一騎打ち受けよう!貴様を最後に打ち倒す名誉は私が頂く!!」

ネロは女王にそう謝ってアドバースにそう答えた。


「なっ!!?ネロ!?命令に逆らうと言うのですか?蟻である貴方が、兵士である貴方が、女王である私の命令を!?」

クルアは大きく動揺した。同胞が自分の命令に反することなどあってはいけないのだから。


「見事である。もう我はお前を虫けらだとは思わない。我と対等な誇り高き戦士として認めよう。行くぞ!!」

アドバースはそう言ってニヤリと笑って牙を剥いてネロに向かって行った。


「誇り高き…戦士。」

ネロはその言葉がなぜか凄まじく嬉しく感じた。

強大な相手から向けられた特大の賞賛。自分だけが特別に認められて賞賛される喜び。


なぜか力が漲る。


自分でもわからない。なぜ女王の命令に反してしまったのか。なぜ、一騎打ちに応じたのか?


だが、後悔はない。なぜかこの一騎打ちは応じなければいけない。女王の命令に反したとしても。そう思ってしまった。


そして、なぜか力が漲るのだ。


ここに強大な個、いや大地龍アドバースを打ち倒そうと1人降り立ち対峙してから。


アドバースの龍爪が眼前に迫る。それをギリギリでかわしながらアドバースの攻撃してきた前足を顎で挟み、切り飛ばした。


そのままネロは飛び上がり顎を大きく開く。ネロの大顎に黒いオーラのようなものが纏われ、死の力が宿る。


右の顎をアドバースの首に添えて一気に首を振った 絶死の一撃 にてアドバースの首を刎ね飛ばした。



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