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第266話 接戦

今もなお、噴き出す血を感じながらアドバースは戦慄する。


虫けらのはずなのに…


小さき者達のはずなのに…



その者どもに口を塞がれ、身体中を切り裂かれ、打たれ、齧られ、溶かされている。

そして、首に深く突き立てられた虫けらの牙はなおも深く首に突き立てられている。


アドバースはここでやっと彼らを自分の命を脅やかす天敵であると認識した。


ドンッ!!!


アドバースは前の両足を大地に叩きつけ真下の地面を割る。

アドバースの下に崖が現れてアドバースはそこに落ちていく。


各族長と戦士たちはたまらずアドバースから離れた。ネロも牙を引き抜き、飛翔して離れる。


蟻の戦士たちを纏わり付かせながらアドバースは崖の中に吸い込まれていった。


ガガガっ!!


崖は閉じてアドバースは生き埋めのような形となった。



各族長達は第六感で危険を感じとり戦士たちに退避するように呼びかけ、一目散に駆け出した。



地面がみるみる枯れていく。水分がなくなり干上がっていく。森も枯れて葉が散る。


ゴゴゴッ!

地面が再び割れて現れたのは、大地の鎧を纏い、傷を完治させたアドバースであった。


そう、アドバースは地中に逃げ込み、大地の力を吸って回復し、大地をその身に纏い、姿を現したのだった。



「全回復…?」

鬼の一族の族長は力が抜けるようにそう呟く。


そう、アドバースは全回復した。いや、それどころか威圧感がさらに増してパワーアップしている。


しかし、周りの森や地面を見ると木々は枯れ果て、地面は乾き切ってひび割れている。

アドバースは99階層の大地のエネルギーを吸い尽くして回復したのだ。


ここはダンジョンであるため元通りにいずれは戻るが、すぐには戻らない。


つまり、アドバースはもうこの戦いでは回復できない。さらに言うと大地を操ることももうできない。


「さぁ、泥試合の開始ですよ!攻撃し続けなさい!総攻撃続行です!!」

兵隊蟻を通じてクルアがそう全軍に伝える。


「ここが正念場です!かの者の武器はもはや己の肉体のみです!」

蛾の一族の戦士達が族長 プシュケーの念話を全軍に流す。


クルアとプシュケーは大地の力を吸い尽くして全回復を果たしたアドバースを逆に好材料と捉えて同時にそう指示を飛ばした。



そこからは地獄の始まりであった。


アドバースはもう大地の力は使えない。回復もできない。


だが、大地の力を吸い尽くしたアドバースの力はさらに強大となっており、アドバースの纏う大地の鎧はアドバースの龍鱗に匹敵するほどの強度を持っていた。

加えて、アドバースは彼らのことをもう虫けら、小さき者どもとは思ってはいない。

自分を殺しうる天敵として油断なく全力で戦っている。


アドバースの龍爪が振り下ろされ、その一振りで数十、数百の蟻が吹き飛び命を散らす。

数千、数万、数十万の蟻の死骸が大地に積み重なる。


鬼が牛頭が馬頭がスライムがすべての一族の戦士が勇敢に斬りかかるが、アドバースの大地の鎧に弾かれる。

そして、アドバースの攻撃に為すすべなく死んでいく。


そしてついに歴戦の族長すらも。


「族長ー!!!」

牛頭の戦士が涙を流してそう叫んだ。アドバースの噛みつきで牛頭の族長の上半身が食われて無くなる。


「くっそー!!!!」

馬頭の族長がアドバースに斬りかかるも、アドバースの振り下ろされた龍爪によってバラバラになった。


「オレタチガ、オサエル。ソノアイダニ!」

熊の一族の族長がそう言って全ての熊の戦士たちを連れてアドバースに向かっていく。様々な強化するスキルを使い、さらに巨大化のスキルを使って熊の族長と戦士たちは巨大化し、アドバースの身体を押さえつけた。


「でかしたぞ!熊の一族よ!皆のもの!溶解せよ!」

スライムの一族の族長のエンペラースライムがそう言って全ての一族の戦士のスライム達に呼びかけてアドバースの頭に覆い被さった。

スライムの戦士たちもアドバースに張り付いて大地の鎧を溶かして剥がしていく。


誰もが押さえ込んだかに思えた。


だが、アドバースはもう慌てはしない。


アドバースは冷静に口に龍の力を溜めていく。


「はっ!ま、まずっ!!?」

エンペラースライムはアドバースの口に溜まる強大なエネルギーを感じて急いで離れようとするももう遅かった。


アドバースは地面に向けて全力のドラゴンブレスを放った。


放たれたドラゴンブレスは押さえ込んでいた熊の族長含めた熊の戦士たちは肉塊と化して吹き飛ばされ、直撃をくらったエンペラースライムはもちろん消滅した。そして、アドバースの強大なドラゴンブレスはアドバース自身をも吹き飛ばした。



アドバースの強大なドラゴンブレスによって大地には巨大なクレーターができ、土煙で視界が曇る。


土煙が晴れるとその中心には大地の鎧は禿げ、龍鱗も剥がれ落ちてところどころから血を流しているアドバースの姿があった。




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