第265話 アドバース劣勢!?
小さき者達が我に歯向かうなど愚かにも程がある。
小さき者達の動き出した振動を感知したアドバースは身体を上げる。
そして、違和感に気づく。いつもの虫どもの足の振動ではないのが虫どもに混ざっている。
そして、虫どもの数が今までの比ではない。
アドバースも察する。これが最後の虫どもとの戦いになると。
「グオォーーー!!!」
我は大地から力を吸い取っていく。身体に力が漲っていく。龍としての力も増していく。
虫ではないものたちも混ざっているようだが、関係はない。邪魔する全てを破壊してダンジョンを駆け上がり、我はあの甘美なる美食を貪りにいく。
アドバースはもはや忘れられない。
ニンゲンの味を。
地上にとってはどちらの勝利も災厄である。
巨龍が這い出るか、黒き軍勢が湧き出るか。
その戦いが始まった。
最初に攻撃を仕掛けたのはアドバースであった。
「グオォーー!!!」
大地龍としての力で大地を操作し、大地を大きく隆起させて、山を作った。その山の山頂に立ち、見下ろす。見下ろすと黒い波のように虫けらどもがこちらに押し寄せていた。見渡す限り黒い海と化している。
アドバース雄叫びをあげてドラゴンブレスを放つために口に龍の力を溜め込んでいく。そしてその力が最高潮に達したときに特大のドラゴンブレスを放った。
目の前にあった黒い海が割れて消滅していく。
続いて大地を割り、地面から次々と棘を出す。
黒い海の蟻たちは出現した崖に落ちていき、大地の棘に刺されていく。
しかし、蟻の進軍は止まらない。
死んだ同胞の死体を踏みつけ、アドバースに迫っていく。
アドバースも火球や大地を操る力を使って迫り来る蟻たちを殺していく。
だが、蟻たちは止まらない。
どんな強大な力を見せられても女王の命令に従い、止まらずに足を進め進軍をしていく。足が曲がり、半身が無くなろうとも決して足を止めなかった。
やがて、アドバースの脚に1匹の蟻が噛み付いた。もちろんアドバースの龍鱗に傷をつけることすらできない。だが、また一匹、また1匹と張り付いてアドバースを埋め尽くしていく。
蟻の一族の進軍は今までの比ではなく、圧倒的な兵力をもってアドバースを覆った。
しかし、アドバースに焦りはなかった。
龍の力を全身から雄叫びと共に放ち、覆っていた蟻たちを吹き飛ばした。
出て来たアドバースの龍鱗には傷はついていなかった。蟻たち牙では数が多くてもアドバースの龍鱗を傷つけることすらできないのだ。
だが、今回は蟻の一族だけではない。蟻たちがアドバースに犠牲を払いながら近づき、アドバースを覆った隙を見計らってダンジョンの一族の戦士たちはアドバースに攻め入った。
「鬼火 纏い 必殺 大物斬り!」
青い炎を纏った鬼の一族の族長 サクラが必殺の攻撃を繰り出す。鬼の一族もそれに続く。
「「スラッシュ!!!」」
牛頭と馬頭の族長の攻撃もアドバースの前足に喰らわせる。
それぞれの一族も族長に続きアドバースに攻撃を加える。
「我輩に消化できぬものなどない!」
巨大なスライム エンペラースライムが飛び上がってアドバースの顔を覆った。
他のスライムたちもアドバースの巨体に飛び上がり溶解を開始した。
他の一族達もそれぞれ攻撃を加えはじめる。
アドバースは初めて焦りを感じる。
全身に痛みを感じたからだ。何かが顔にまとわりつき呼吸ができない。身体中から伝わる痛みは龍鱗を切り裂いて肉に達していることを知らせる。
「…ァッ!!?」
蟻ではない未知の攻撃、走る激痛。アドバースはたまらず声を上げるがエンペラースライムが顔を覆っている為、声が出ない。
「畳みかけろ!!」
巨大な黒い蟻が、凄まじいスピードで羽を広げて飛んできた。そして念話を叩きつけるように周りに飛ばす。
そして、その鋭く巨大な顎で勢いよくアドバースの首に突き刺して顎を閉じる。
最強の蟻、ネロは顎先の感触に酔いしれた。
やっと牙を突き立てられたと。
アドバースの首から夥しい量の血が噴き出した。
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