第264話 さぁ、生存競争です。
「さぁ、始めましょうか。生存競争を。」
蟻の一族の女王 クルアはそう言って蟻の兵士たちを巨大な個 大地龍 アドバースに向けて進軍させた。
「ダンジョンの同胞とともに巨龍を打ち破らん!鬼の一族の戦士達よ、奮い立て!!」
鬼の一族の族長 サクラが刀を掲げてそう言った。
鬼の一族の族長 サクラはAランクモンスターの妖鬼だ。妖術を使う美しい女鬼だ。
「我輩達もいくぞ!」
巨大なスライムはそう言って号令を発して一族を率いて動き始める。
スライムの一族の族長 Aランクモンスターのエンペラースライムだ。名はない。
モンスターにおいては、むしろ名がある方が珍しいのだ。
「舞い上がりなさい。破滅を滅します。」
そう命じたのは蛾の一族の長。Sランクモンスター プシュケー。
白く美しい毛皮に包まれ、白く美しい羽を広げて他を魅了する。羽には巨大な瞳のような模様がある。顔は人間のような容姿をしえいてとても整っており美しい。
プシュケーの命令にて蛾の一族の戦士たちの巨大な蛾のモンスター達が舞い上がっていった。
プシュケーはその聡明さから蟻の女王 クルアと共に全体の指揮を取る。
「牛頭も出るぞ!」「牛頭に遅れをとるな!この戦いで馬頭こそが優れていると知らしめろ!」
競い合うように牛頭と馬頭の一族が進軍を開始する。
「チッ、チッ、我らも繁栄のために戦う。」
ネズミの一族も駆け出す。
「龍をクラウ。」
たどたどしい口調でそう言ってのっそのっそと巨大な熊のモンスター歩み出す。
熊の一族は数こそは少ないが、その戦士一人一人の強さはBランクモンスターである。
クルアはダンジョンの中の一族達をかき集め凄まじい軍勢を集めた。
さらに、クルアもこの戦いで全てを決するために大軍を投じる。
ついに、ダンジョン連合軍は大地龍アドバースに向けて進軍を開始したのだった。
「グルラァーー!!!」
アドバースもこの異様な大軍勢に気付き、階層が震えるほどの咆哮を上げる。
ついに、第99階層での決戦が始まる。
「くぅ、凄まじいですね。これが強大な個…」
蛾の一族の長であるプシュケーはアドバースの咆哮を聞いて怯む。
「ふふっ、我らも抑えるのがやっとでした。皆さんが協力してくれて良かったです。」
隣にいる蟻のモンスターを介してクルアの念話が聞こえてくる。
「そうですね。これは確かに協力して対応すべき脅威です。しかし、勘違いしないで頂きたいのは、私達は貴方達、蟻の一族の傘下に入ったわけではありません。使い捨てのような扱いを受けたらすぐに他種族は牙を剥くことをお忘れなく。」
プシュケーは横目で念話を中継する蟻を見てそう言った。
「ふふっ、もちろんです。だから貴方にも指揮をとってもらうんじゃないですか?それに、最も多くの血を流すのは我ら蟻の一族です。先陣も我ら、もっとも兵を出しているのも我ら、もしもこの戦いで敗れれば一番早く滅ぶのも98階層をナワバリとしている我らです。我らが一番後がないのです。それでも信用できませんか?」
「失礼しました。気が立っていたようです。」
そう、この戦いで一番危険なのは蟻の一族だ。我らはここで敗れたとしてもナワバリにいる同胞達が逃げることはできる。しかし、蟻は階層が近すぎるため敗れれば滅ぶだろう。
だけど、私が危惧しているのは勝った後だ。
これほど強大な個を蟻の一族は後退しながらも戦い続けていたのだ。
それほどの強力な一族が強大な個という憂いを払ってしまったら次に目を向けるのはどこか?
もしも我らに牙を向くのならば瞬く間に我らは滅ぼされてしまうのではないか?
このクルアという女王も凄まじい。我らダンジョンの一族を集めまとめ上げる統率力と伝わってくる聡明さ。
強力な軍勢と優秀な女王。
味方であれば心強いが、敵であるならばゾッとする。
「さぁ、アドバースと接触しますよ。始まりますよ、決戦が。」
クルアはやや緊張したような念話を送ってくる。
「えぇ、我らの命にかけて打ち倒しましょう。」
この女王はわかっているのだろう。
私が蟻の一族に大きな疑念を抱いていることに。
だから、私をこうして他の一族と離して手元に置いている。
しかし、いくら蟻の一族に疑問を持ってもここであの強大な個を止めてくれていたのも事実。蟻の一族無くしてあの強大な個を打ち倒すことは不可能。
ここで奴を倒さなければ死ぬのも事実。
まずは奴を倒してから。蟻の一族の脅威はそれからだ。
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