第261話 魔王ミンク
ここは大王国エリシュオンの王都セントラルの王城、玉座の間。
今、どこの大王の派閥にも入っていない魔王ミンクが訪れていた。
「魔王ミンクだ。よろしく、大王アリア。」
魔王ミンクは不敵な笑みを浮かべてアリアに挨拶をする。
魔王ミンクの前に現れた大王アリアはまだ少女と言える年齢の人間の子供だ。
魔王ミンクは早速失望する。
なんだ、ただの傀儡かと。そして、裏に誰がいるのかを考え始める。
「よろしくお願いしますわぁ!!私は大王アリアです。わざわざお越しいただきありがとうございます、魔王ミンク様。」
アリアは笑顔で歓迎する。
「あぁ、僕が引きこもってる間に随分と世界は様変わりしたようだ。いろいろ驚いているよ。それに、龍の姫の頼みだ。もちろん出向かせてもらうよ。」
ミンクはそう言って玉座の間にいる龍の姫であるデリラの方を見る。
目線が合ったデリラが怪しく笑う。
「それで魔王ミンク様も世界大同盟に加わってくださるのですか?」
アリアはさっそく本題に入る。
「あぁ、そうだな。そうしようと思っている。でも、すこし話をしようか。君は世界をどうしたいんだ?君の口からそれを聞きたいんだ。」
ミンクはそう言ってアリアを試すつもりだった。なにかボロが出ればそれでいい。くだらない回答だったら、それはそれで彼女が何者かの傀儡だと確定する。ただの少女が魔王達や列強諸国を従えられるはずはないのだから。
「全ての種族が平等に笑い合える、助け合える国を創りたいのですわぁ!困っている人が最後に辿り着くようなそんな国を!」
アリアは満面の笑みで堂々とそう答える。
「そんな絵空事が叶うとほんとに思ってる?」
ミンクは本当に少女の夢のような回答に呆れたようにそう返した。
「なぜできないと思いますの?」
アリアは眉を顰めてそう聞き返す。
「我々妖精族は魔法に秀でているが数も少なく、弱い。我らの血肉は薬となり、美しい羽は趣向品に。ゆえに我らは狩られ続けた。だから、僕は立ち上がり国を作った。君の力になったら僕たちになにをしてくれる?なんの得がある?邪な他の種族がいる限り我らに安息はない。平等?助け合える?我らは生まれた時から平等じゃない。助け合えない。」
僕がまだ弱い時、そんな僕らに庇護を授けてくださったのが竜王ダイヤ様だった。僕らは竜王ダイヤ様の庇護の下、力をつけて僕は魔王と呼ばれるようにまでなった。
竜王ダイヤ様は圧倒的な力を持って我らを守ってくださった。
「確かにあなた方、妖精の羽は美しいです。ですが、私はそれをもぎ取ろうとは考えません。もし私が病気になったとしてもあなた方の命を奪って血肉を奪おうとは思いません。私は人間です。しかし、人間は貴方がたを虐げた。邪なのは種族でしょうか?」
アリアは真っ直ぐに魔王ミンクを見てそう答える。
「そんなことなんとでも言える。」
ミンクはそんな回答では納得しない。
「生まれた時から平等じゃない?助け合えない?平等に生まれてこないからこそ助け合えるのではないのですか?お互いに補い合うのではないのですか?」
「詭弁だな。それができたら誰も困っていない。」
いかにも力の持たない偽善者の言いそうなセリフだ。
「だから、皆さんの力が必要なのです。さっき貴方は我々は弱いから身体が薬になるから羽が美しいから狩られるとおっしゃいました。それは違います。」
アリアはキッパリとそう言い切った。
「なんだと?」
なにが違うというのだ?
「悪いのはこの世界なのです。」
アリアの言葉に玉座の間が静まり返る。
「は?」
意味がわからずミンクは声が漏れた。
「この世界が国がそれを許してしまっている。私はそれを変えなければいけないのですわぁ!皆さんの力が私に集まっている。その力は世界を変える力ですわぁ!私は世界を一つにしてこの世界を正します!」
アリアは玉座から立ち上がってそう言った。
「世界を変える為の力…」
力で守る、滅ぼすのではなく変える。そのための力が欲しいと言っているのか?
「私は変えますわぁ!この世界を!全ての種族が笑い合える、皆んなが助け合えるそんな国を創りますわぁ!!魔王ミンク様、もう一度お願い致します!私にそんな世界を創る力を貸してくださいませ!!」
アリアは一歩前に出て拳を握りしめた。
「あぁ、これが新たな大王か…」
魔王ミンクは膝をつく。あまりの衝撃に。
自分だけではなく、自分の種族を全て覆う圧倒的な器。
竜王ダイヤのような圧倒的な暴力の力とは全く違う圧倒的な力。引き寄せられるカリスマ。
この王の力になりたい。この王の創る世界に期待したい。
魔王ミンクは素直にそう思った。
「魔王ミンクの名の下に僕ら妖精族は大王アリアの力になることを誓おう。」
魔王ミンクは胸に手を当て、そう誓った。
「世界大同盟 盟主 アリアは魔王ミンクを歓迎致しますわぁ!!さぁ!歓迎の宴を!!」
アリアは満面の笑みでそう高らかに宣言した。
「あぁ、やっぱりアリアちゃんはすごい…」
アリアの近くで控えていたルーカスはアリアの言葉にまた心を打たれる。
「ルーカス、泣いているの?」
アリルはそう言って心配そうにルーカスにそう言った。
「あぁ、本当だ。違うんだ。本当に感動してね。僕はアリアちゃんに出会えてよかった。僕たちの力を僕たち以上に正しく使ってくれる王に出会えて。」
力を正しく使うことは難しい。何が正しいかわからないこの世界で、アリアちゃんだけは確かな光であり、確かな正義だ。
ルーカスは本当にそう思った。
これで、地上の大きな勢力のほとんどが三大王のいずれかの派閥に入ったこととなったのだった。
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