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第260話 アリアの推測 歴史の痕跡

デリラの魔王ミンクとの交渉はうまくいき、本日魔王ミンクがエリシュオンの首都であるセントラルに来る。

アリア達は歓迎するための準備を進める。


ナラは蜘蛛の一族をまとめ上げるのに一度森へ帰っているため、今はいない。

今回の護衛はルーカス達、勇者パーティーが担うこととなった。



ここはアリアの自室。そこには勇者パーティーがすでに控えていた。


「ルーカス様はこの世界を一つにすることはできると思いますか?」

アリアはルーカスにそう尋ねる。


「世界を一つにか。僕は悪いやつを倒して、助けを求める人の手を取ればいいと思っていた。実際僕に、いや勇者に求められているものはそういうものだと思っている。だからあんまり、世界を一つにするって言うことを考えたことがないな。アリアちゃんと出会ってから世界を平和にする為には一つになる必要があるって気づいたよ。アリルはどう思う?」

ルーカスは腕を組んで考え込み、アリアに自分の考えを伝えた。そして、アリルの考えを聞いた。


「んー、今までの勇者の役割っていうのが、人間以外の外敵からの侵略を防ぐ、倒すっていう意味が大きかった気がする。もちろん人々を救うのが役割なんだけど、結果的にそうなる。だから、確かに私も統一することは考えたことなかったな。統一できるかどうかについては、私は正直難しいと思う。だって、だれも成し遂げたことのないことだもの。いくらアリアちゃんが素晴らしい人でも着いてこない人もいると思うしね。」 

アリルも考え込みそう答えた。


「そうだな、今までに様々な魔王や王がいたが、誰一人として統一したものはいない。あの大王ルーですら無理だった。正直、かなり難しいだろう。もちろん、私たちはそれでもアリアちゃんの力になる。」

続けてマーミヤが自分の考えを言う。


「俺はそうは思わないぜ?だって、アリアちゃんはあの魔王たちですら惚れちまう女なんだ。誰もできたことのないこのまま世界を一つに、だって出来ちまうさ。」

ドルフはニカっと笑ってそういった。


アベリオ以外の勇者パーティーがそれぞれ考えを述べ、次はお前の番だとばかりに皆の視線がアベリオに向く。


「…はぁ、だれも成し遂げたことないことだよ?僕は、圧倒的な力がいると思うよ。あの竜王ダイヤですら力で従わせられない者達がこの世界にはいるんだ。なんなら、殺されちゃったしね。他者に有無を言わせない圧倒的な力を持っていなければ、世界を一つになんて絵空事だと思うな。でも…そんな力を持っているやつなんているのかな?あははっ。」

アベリオはそう言って空笑いした。


「まぁ、皆さん、難しいんじゃないかって思ってるってことですよね?ひどいですわぁ。」

アリアはそう言って頬を膨らませる。


勇者パーティーたちはそんなアリアのことを見ておかしくなり笑った。


「でも、皆さん、無理だと思っていても私の力になってくださっているんですね。本当にありがたいことですわぁ。」

アリアそう言って笑顔を勇者パーティーみんなに向ける。


勇者パーティー達はたしかにと思いながら暖かい目でアリアを見つめる。

まぁ、勇者達は世界を一つにするためではなく、アリアのその優しい世界を作りたいという思いに賛同しているという意味合いが大きい。



「では、私の考えを教えますわぁ。私はできると思いますわぁ!!」

アリアは小さな胸を張ってそう高らかに宣言した。


「あははっ!なんでだい?」

ドルフが笑ってそう聞いた。かわいい子供の夢を聞くように。


「私はずっと考えていましたの、世界を一つにすることについて。どうすればみんなが一つになれるのかを。どうすれば、だれも悲しまない優しい世界を作れるかを。私は対話が大事だと思いましたの。」

アリアはそう言って立ち上がった。


「あぁ、そうだね。」

ルーカスは心が暖かくなる感覚を覚える。







「そして、思いましたの…なぜ私たちは対話できているのかを。」







アリアの発言に一瞬で場が凍りついた。



「…えっ?」

ルーファは今までの心温まる話から一変。

ドキンッと心臓が跳ねた。


「不思議ではありませんか?私達は国が違う、人種が違う、文化が違う。なんなら対話ができるモンスターですら、同じ言語で対話ができる。私たちは同じ言語で話しています。どうしてですか?どうして、私たちは対話ができるのですか?」


「そ、それは。」

ルーカスは戸惑う。わからない、たしかに言われてみればなぜ同じ言語を話すのだろうか。当たり前すぎて疑問にすら思わなかった。


「各地方で訛りこそあれど、我々の言語は何者かによって統一されています。」


「…っ!?つまり!!」

ルーファはアリアの言いたいことに気づき、驚愕の表情を浮かべる。


「今、みんなは誰もしたことがないからできない。難しいとおっしゃっていました。しかし…いるのではないでしょうか。歴史も残っていないような遥か太古に世界の全てを収めた王が。我々が話せていることが、その証明なのではないでしょうか?」


「世界を統一した王がいた?」

アリルは冷や汗をかいてそうつぶやいた。


「言語も文化も見かけもなにもかもが違う全てを従わせた王がいる。その時は大変だったと思います。言葉が伝わらない。そもそも対話ができない相手を従わせた。そんな王がいた。さて、私は世界を一つにすることはできると思います。なぜならば、その王が作った言語という下地がすでに世界にはある。我々は対話で分かり合える。全て推測の域をでません。ですが、これが私の今の見解です。」

アリアはそう言い切った。


その場にいるものは言葉を失った。

納得してしまった。

かわいいと思っていた、この目の前の少女が急に大きな偉大な王に見える。


「もう一度問います。皆さんは世界を一つにすることができると思いますか?」

アリアはそう言ってにっこりと笑った。




もうその場の誰も笑えはしなかった。

その少女の言葉が現実味を帯びたからだ。



「大王アリア様!魔王ミンクが、到着いたしました!」

オークの兵がそう言ってアリアの部屋のドアをノックする。


「さて、行きましょうか!」

アリアはそう言ってドアに向かって行く。

そしてポケットに手を入れる。

いつも大事な時や、勝負の時、不安なときはお守りである大召喚コインを触る癖があるのだ。

だが、ポケットの中で手が空を切る。


「あれ?」

アリアは両手をポケットに突っ込んで探す。


「あれ、どこやったのかしら?」

アリアは振り返って机の上を見に行く。そしてゴソゴソと探し回る。


「うそ…無くしましたわぁ!!!そんな、部屋に帰る前はありましたのに!!」

アリアは涙を浮かべ、頭を両手で抱えて叫ぶ。


「えっとぉ、部屋に帰る前あったならきっと部屋のどこかにあるよ。今はそれよりも魔王ミンクを待たせない方がいいよ。」

部屋を探し回るアリアを見てアリルが言いにくそうにそういった。


「うぅ、そんなぁ。あれがないと安心しませんのにぃ。でも、そうですわね。きっと部屋にありますわ。あとで探します。行きましょうか…」

アリアは落ち込みながら、護衛である勇者パーティーを引き連れてしぶしぶ玉座へと向かった。



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