第257話 邪教の侵食
「ナラ!!無事だったのね!って、なんか雰囲気変わってますわぁ!?」
ナラが城に戻って来たと知らせが入り、アリアはすぐにナラに会いにいった。
「進化した。」
ナラは誇らしげにそう言った。
「すごい!まるで大天使様みたいですわぁ!」
アリアはそういって目を輝かせる。
それもそのはず。
カマエルとなったナラの人化は正に大天使のような姿だった。
天使のような光の輪が頭に輝き、髪は白く艶やかで美しい。もとの黄金の色は瞳に凝縮したかのように黄金に輝く瞳。
その容姿に似合うようにナラ自身が自身の糸で編み上げた天使のような装い。
誰もがナラに見惚れる天上の美女である。
「私は族長となった。同胞は私に従う。これで盾は手に入れてあとは力を蓄えるのみとなった。」
「よかったぁ!!それじゃナクアとは仲直りできたの?」
「…うん。できたと思う。」
ナラは悲しそうに、でも、嬉しそうにそう言った。
「そう!よかったですわぁ!それで魔王ナクアはどこにいるのですかぁ?」
そう言ってアリアはキョロキョロと見渡す。
しかし、ナラ以外の姿はない。
「前の族長は死に、私に継承された。」
「…えっ?」
「大丈夫。ちゃんと話はできた。とても悲しいけれど、私は、族長に信頼され託された。それは本当に誇らしいこと。名誉なこと。」
ナラは穏やかにそうアリアに伝える。
「…そっか。お疲れ様、ナラ。」
「これから我が同胞達も大王国エリシュオンに全面的に協力する。さぁ、これで必要な力は集まった。力をさらに固めて蟻の一族と大王バーバルとの備えよう。」
ここは龍軍の練兵場。
アドネスは手傷を負ったため、訓練には参加せず、隊の練兵をいつも通りに行っていた。
「アドネス様!」
アドネスの下に龍軍の1人の兵士が駆け寄った。
「どうした、そんなに慌てて。」
アドネスは慌てたように来た兵士にそう言った。
「至急お伝えしたいことが。」
駆け寄って来た兵はそう言って跪く。
「なんだ?」
「ここでは…できればアドネス様にだけお伝えしたく。」
「む?わかった。では、宿舎の会議室に行こう。」
アドネスは不審に思いながらも、そう言ってその兵士を連れて、練兵場に隣接されている兵の宿舎の会議室に向かう。
「それで?話とは?」
会議室に座ったアドネスは、目の前の兵にそう尋ねる。
「はっ!それはあるお方に会っていただきたく!」
兵はそういうと会議室の扉を開ける。
「アドネス。お久しぶりですね。」
すると、今アドネスが通って来た会議室の扉から黒いフード付きのローブを身に纏ったデリラが入ってくる。
「はっ…貴方は、どうして、こちらに?」
アドネスは驚き立ち上がった。
「新しい竜王様に集うために決まっているでしょう?」
デリラはそう言って怪しく笑う。
「し、しかし、貴方は…。」
「バーバル、ルーと明確に敵対した新たな三大王であり、新たな竜王 アリア。その方に私を合わせてくださらない?」
「そ、それは…」
アドネスは言い淀む。
「もちろん手ぶらで来たわけではありません。」
「ど、どう言うことでしょうか?」
「私が魔王ミンクをあの世界大同盟に引き入れましょう。」
デリラはそう言い切った。
「どうやってでしょうか?魔王ミンクは国を深い霧でで閉ざして対話すらままなりません。」
そう、魔王ミンクの国はバーバルの侵攻を受け、魔王ミンクの力によって深い魔法の霧に覆われて国を閉ざしたのだ。
国交の開く術がなくなってしまっているのだ。
「うふふっ、大丈夫です。私ならば魔王ミンクの国にたどり着き、そして魔王ミンクを説得して仲間に引き入れることができます。」
もしも、これが本当ならば大王国エリシュオンにとってとてつもない利益をもたらす。
魔王が1人加わるということはそれだけで戦況は大きく変わる。
「…わかりました。アリア様の下へご案内致します。」
アドネスはどうしてもデリラ様をアリア様と合わせてはいけない気がした。
魔王を引き入れられるかもしれない利益とかつての主の御息女であるデリア様の頼みを断るのはアドネスの中では不自然に思えた。
本来ならばデリラ様の願いならば二つ返事で受けるべきである。
あの時デリラ様が私たち龍軍を切り捨てたときは困惑したが、それが龍の国の王族であるデリラ様が生き残るために必要だったならば、それは正解だと今ならば思う。
しかし、母のデリア様がお亡くなりになってからのデリラ様の邪悪な気配は一層増した。
正義を掲げるアリア様と邪悪な気配を感じるデリラ様。
本当に引き合わせていいのだろうか?
アドネスはしばしば葛藤したが、本当に魔王ミンクを引き入れることができるのならば断る理由はなかった。
「よかった!さすがアドネスは頼りになります。」
デリラはそう言って笑う。




