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第252話 蜘蛛の懺悔

レオンは吐かれた毒に飛び込んで、突き抜けてマリラの輝く弱点にナイフを深く突き刺した。


「カッ、カッ、キシャー!!」

突き刺されたマリラは苦痛の声を上げる。


ジタバタとするが、やがて力が抜けていく。

脚の力が入らず、腹を地面にズドンとつけた。


「勝った…で、も、俺も、もう…。」

レオンも毒に侵されて意識を失い、倒れた。


「すごい、本当に1人でマリラを倒すなんて。君、何者?」

戦いの行く末を見ていたナラは、かろうじて立ち上がり、レオンの近くに来てレオンを見つめてそう言った。

見つめた先のレオンは呼吸が弱く、今にも止まりそうだ。


「すごいね、クーリッヒの冒険者。」

ナラはレオンを賞賛すると、レオンの首に噛みつく。

そして、毒の解毒を行い、強心作用のある毒や回復を促すような便利な毒を数十種類流し込んでレオンの命を繋いだ。


そして、ナラは地面に伏しているマリラの元へ向かった。


「ナラ、貴方さえいなければ。私は族長からの信頼を得られた。」

マリラはもう動くことはできない。だけど顔をナラの方に向けてナラに話しかけた。


「マリラ、優秀な同胞よ。貴方の言っていることは蜘蛛としてなにも間違っていない。異端なのは私だ。」

ナラはマリラを真っ直ぐに見つめながらそう言った。


「結局、私は、貴方を越えられなかった。貴方を超えたかった。超えて、族長に認められたかった。私の方が貴方よりも優れていると証明したかった。」

マリラは最後の力を振り絞って淡々にそう話し始めた。


「うん。」

ナラは頷く。


「私は、貴方に憧れた。族長の隣でもっとも族長の信頼を得て、族長と共に同胞を導く貴方に。」


蜘蛛は涙を流さない。しかし、その言葉には涙を流さなくともマリラが泣いているのがはっきりとわかるだけの感情が込められていた。


「うん。」


「貴方のようになりたかった。貴方のように強く美しい者に。」

マリラの言葉にさらに感情が込められていく。


「うん。」


「ごめんなさい、ナラ様。私は貴方を陥れました。」


「マリラ、謝らなくていい。貴方は蜘蛛の一族として正しい。他者を蹴落とすのも強いものが生き残るのも我らの定め。」


「私はあなたを陥れ、同胞を殺した。」


「私も殺した。」

ナラは淡々とそう答える。


「私は貴方にも同胞を殺させた。」


「その選択をしたのは私だ。」


「ニンゲンの刃ではなく、どうか最後は憧れた貴方の牙で…」

マリラの息はもうすぐ止まる。


「マリラ、ごめんね。情けないな…。」

ナラはそう呟いてゆっくりとマリラに近づいてマリラの前脚に牙を立てる。

ゆっくりと牙を進め、眠るように殺す毒を流し込む。


マリラはゆっくりと息を引き取った。


最後にナラが呟いた情けないという言葉はなに対してだろうか?


殺してしまったことだろうか?


敵対してしまったことだろうか?


蜘蛛の一族を裏切ったことにだろうか?


それはきっと隙を見せてマリラの暴挙を許してしまった自分に対してだろう。

族長に留守を任されたのにも関わらず他の蜘蛛たちを統率できなかった自身に対してだろう。


そのたった一言の言葉には、マリラの懺悔の言葉よりも悲しみと後悔の感情が込められていた。


きっとマリラにもその感情は伝わっていただろう。




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