第247話 クーリッヒ劣勢
「ま、まさか本当にあの龍軍が負けたのか?」
アイリスは信じられないものを見たようにそう言った。
いや、アイリスだけではない、龍軍が空高く撤退していき、追撃を加えられる様を見て明らかに軍の士気が下がる。
しかし、蜘蛛は待ってはくれない。
「く、来るぞ!!弓と魔法を放てー!」
蜘蛛の軍勢は眼前まで迫り来る。弓矢や魔法をモノともしないで。
「さて、あの時の借りを返すときが来たか。みんな、Sランククラン マッスルクラブの力を見せてやるぞ!金剛筋肉!!」
マッスルクラブのクランリーダー 筋肉の塊のような大男でスキンヘッドのSランク冒険者 ギランは金剛筋肉と叫び、さらに筋肉が隆起し、体全身が黄金に輝いた。
そして、身体に力を入れてポージングを決める。
前線の誰もがその黄金に輝くポージングに目を奪われる。
マッスルクラブの皆はギランを筆頭にし、むかってくる蜘蛛の軍勢に向かって駆け出した。
「Sランククラン マッスルクラブが蜘蛛の突撃を止めたぞー!!」「俺たちもやってやる!!」「クーリッヒに攻め込んだことを後悔させてやれ!!」
なんとマッスルクラブは蜘蛛の軍勢の初撃の突撃を止めたのだった。
「さすがギランだ。おい、お前たち!最前線は我らフロントラインの役目だ!!続け!!」
アイリスはそう言ってフロントラインを引き連れて駆け出した。
アイリスは最前線で指揮を取った。
戦線は予想とは裏腹にクーリッヒ陣営に傾き、なんと戦線を押し込み始めたのだった。
「ギィ!ニンゲンに遅れをとるな!」
ダーラとは別の一体のバトルマスタースパイダーが現れてマッスルクラブの冒険者を前脚で串刺しにして現れた。
「大物が来たぞ!」「こ、こいつ、Aランクモンスターだ!!」
Aランクモンスターは魔王級のモンスターである。普通の冒険者ならば遭遇したらまず助からない。そして、勝つことなどできるはずもない。
普通の冒険者ならば。
「大物は我ら奇跡の剣が請け負う!!」
Sランク冒険者アルドはそう言って奇跡の剣のメンバーと共にバトルマスタースパイダーの前に立ち塞がった。
冒険者達は士気をさらに上げて蜘蛛たちを戻して行った。
あーあ、結局突撃する羽目になっちまった。
俺たちクローバーは肩を落としてやる気が無さそうに味方陣営から前線を眺める。
結構こっちが押してるな。
あの金ピカマッチョ強いなぁ。アルドと同じくらい強いじゃねぇーか。…でも、なんで攻撃する前にポージングしてんだ?
「あーあ、ジンさんのせいですからね?本当にあれに突っ込むんですか?僕、絶対死んじゃいますよ?」
アリがそう言って俺をジト目で睨みつける。
「そうだった!私は虫アレルギーなんだった!すまない、私はこれで失礼しよう!」
前線にバトルマスタースパイダーが出て来たのをみたルーファは急に嘘っぽくそう言って離れようとするが、リーナに首の裾を掴まれた。
「いい加減に覚悟を決めて。2人とも私よりも強いくせになんでそんな臆病なの?周りをよくみて、勇者に勇者パーティー、ここにいる人達はBランク冒険者以上の者たちで構成されている。正直ここにいるメンバーならば、魔王すらも討ち取れる。」
リーナはそう言って2人を責める。
ここにいるメンバーならば魔王も倒せるか。
俺はここにいる戦力について少し考える。
そうだな、この2人が本気で戦うなら魔王も倒せるだろう。
だけど、この2人は目立っては行けない。
1人は帝国の裏路地の殺人鬼、アリ。
そしてもう1人は史上最高の天才精霊術師であるエルフの国の姫君。万能の精霊術師 ルーファ。
2人とも主力として見ても遜色ないほどの実力者だが、バレるとまずい。
だから、まずこの2人はサポートくらいの活躍しかできない。
次に、ルーカス。
確かに強くはなった。魔王も2人倒している。
しかし、魔王アルモルドの時は圧倒的に相性が良かった。勇者の力がアンデッドである魔王アルモルドに特攻とも言える力を発揮した。
魔王シャールブのときは最強の将軍 ドルジェが助太刀してゲヘナゲートを破壊してくれた。もしも、ゲヘナゲートを壊されていなければ、魔王シャールブはルーカスに負けていたか?
おそらく、そんなに時間をかけずに勇者パーティーを血祭りにあげていたことであろう。
そして、ナラ。
本来の姿のナラであればおそらく魔王達にも遅れを取らない。
だが、ナラはナクアの毒によって本来の姿に戻ることはできない。
この姿のナラでは魔王に勝つことは難しいだろう。
俺とクローバーのメンツがいなければ、ここにいるメンバーが力を合わせて魔王を倒せるかは五分五分だろう。
リーナが考える主力のメンバーだけで考えればだが。
俺は視線を隣の青年に移す。
「えっ?リーナさんより2人の方が強いんですか?」
リーナ達の会話を聞いて目を丸めて驚いている青年。
Bランク冒険者レオン。
かつて、最底辺のモンスタースケルトンにすら勝てなくて殺されて死んでしまった青年。
そして、努力を積み重ねてついには、人知れずAランクモンスターを撃破した。
俺は笑みを浮かべる。
楽しみだ。こいつがこの戦いでどんな活躍をするのか。どんな成長を遂げるのか。
「ナラさん!こちらが有利です!!どうしますか?突撃しますか?」
ルーカスがそう言ってナラに興奮したように尋ねる。
「たしかに、クーリッヒの冒険者達は予想を遥かに上回るほど強い。だけど、まだだめ。このまま突撃したら中で押し潰されて終わる。」
「こんなに優勢なのにですか?」
ルーカスはそう言って首を傾げる。
「まだ圧倒的な戦力差が覆っていない。今突撃しても敵の層は厚い。敵背後からのエリシュオン軍の友軍が到着し、こちら側も王国軍の援軍が到着して完全に挟み撃ちにしてから俺ら精鋭隊は本陣を目指す。そうすれば俺らの突撃を守る敵の層も薄くなり、俺らの刃が敵本陣に届く。違うか?」
俺はナラに俺の考えを話す。
「さすがジンさん。その通り。そして、この冒険者達の勢いは失速する。戦力差はこれでは埋まらない。」
ナラはそう言って静かに前線を見守った。
「おいおい、いつまで戦えばいいんだ!?」
「倒しても倒しても蜘蛛が増えてる…」
「おい!しっかりしろ!くそーー!!」
冒険者達は迫り来る蜘蛛の大軍に徐々に押されて行った。
圧倒的な戦力差は冒険者達の士気をも削っていく。
「苦戦しているようだな?」
アルドと戦っているバトルマスタースパイダーの下にロイヤルナイトスパイダーを引き連れたマザースパイダーがやってくる。
「助かった、感謝する。」
バトルマスタースパイダーはそういうと、アルドの方に向き直った。
「あー、まじかよこれ。やってらんねぇな。お前ら、ここが正念場だぞ!!ここで俺らが折れたら戦線は崩壊するからな!!」
アルドは剣を構えてパーティーにそう言った。
「面白い!」「続き読みたい!」「最後まで見たい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!一言でも感想お待ちしております!!




