第245話 クーリッヒに勇者到着
「おい!見ろ!!勇者ルーカス様だ!!勇者様が来てくれたぞ!!」
「すごいすごい!勇者ルーカスが来てくれた!」
「魔王アルモルドだけでなく魔王シャールブも討ち取ったらしいぞ!!」
「えっ!?魔王シャールブも!?魔王を2人も!?本物だ…本物の伝説の勇者様だ!!」
「またクーリッヒの危機に勇者様が駆けつけてくれた!」「あぁ、まさに救世主だ!!」
大王国エリシュオン軍がクーリッヒに到着した。
クーリッヒの民衆達は勇者達の救援に歓喜して讃える。
蜘蛛の軍勢はじきにクーリッヒに到着してしまう。なぜ、先に進軍をした蜘蛛の軍勢よりもエリシュオン軍が先についたのか。
それは龍軍がいるからだ。
蜘蛛の軍勢の進軍速度は追従を許さないほど早い。
しかし、空を飛行して移動する龍軍の進軍速度はそれをはるかに上回る。もちろん全てのエリシュオン軍を龍軍が乗せて移動できるわけではないので、ルーカスなどの精鋭のみの先発隊だ。
後続のエリシュオン軍は死霊騎士団とアーガストに率いられて現在もなお、進軍中である。
「ナラさんは先にクーリッヒに着いてるんだよね。」
アリルがルーカスにそう尋ねた。
「うん、ナラさんはアドネスさんに乗って凄まじい速さで飛んで行ったもんね。」
ルーカスはアドネスに乗ってビュンと飛んでいったナラを思います。
ルーカス達はまるでパレードのように民衆に歓迎されながら歩いていると目の前にナラが現れた。
「勇者ルーカス、待ってたよ。早速だけど戦いの準備を始めてもらうよ。」
ルーカス達の前に現れたナラがそう言った。
「あぁ、わかった。」
ルーカス達はナラについて行った。
「君たちは冒険者達で構成された精鋭部隊に入ってもらう。」
ナラは歩きながらそう言った。
「わかった。」
ルーカスはすぐに了承する。
「その精鋭部隊は私が指揮を取る。機を伺い、一気に斬り込み敵大将を討ち取る。」
「えっとぉ、あの蜘蛛相手に斬り込むの?」
アリルが顔を引き攣らせて不安そうにそう言った。
「うん、そうだよ。」
ナラはなんてことないようにそう答える。
「ナラ殿、龍軍に乗って敵本陣に急降下したほうがいいのではないか?」
マーミヤはナラにそう尋ねた。明らかに敵が多い地上をいくよりも敵上空からの奇襲の方が効率的だと思ったからだ。
「…おそらく龍軍は攻略される。」
ナラは少し言いにくそうにそう答えた。
「龍軍が攻略される!?」
ルーカス達は驚いた。龍軍は三大王である竜王ダイヤの必殺の軍である。その力はいまだに強力無比。その龍軍が攻略される姿などルーカス達には想像もできなかった。
「龍軍の火力は強力。だけど、我ら蜘蛛は蜘蛛の糸を網目状に放つことができることやバネ蜘蛛、羽を持つ空蜘蛛やマジックスパイダーなど対空攻撃ができるものが意外にたくさんいる。数で劣る龍軍と蜘蛛の一族では実は分が悪い。」
「では、籠城戦です…」
アリルは首を傾げてそう言おうとするとアベリオがアリルの前に出て来た。
「龍軍が蜘蛛に劣るだと!?」
アリルの言葉を遮って龍人のアベリオが目を見開いてナラにそう言った。
「劣る優るの問題ではないよ。残念だけど、今回の戦いでは龍軍は本陣まで辿り着けない。かと言って、籠城戦はかえって敵の独壇場となる。我らはクーリッヒより打って出て、平地に布陣し、待ち構える。」
ナラは2人の問いかけに対して冷静にそう答えた。
アリルは納得したように頷くが、アベリオは納得しておらず、ナラを睨め付ける。
「正面から戦うってことか!腕が鳴るぜ!」
獣人のドルフは好戦的な笑みを浮かべる。
「こちらにはまだクーリッヒ軍しかいない。じわじわと撤退しつつ時を稼ぎ、遅れてやってくる後ろからアーガストが率いるエリシュオン軍が背後を撃ち、援軍としてやってくる王国軍を吸収した我らは反転、攻勢に転じて挟撃の形を目指す。」
「なるほど。」
マーミヤも納得したように頷いた。
「そのタイミングで精鋭隊が敵本陣に斬り込み、敵大将を討ち取る。」
「ちょっと待ってくれ、その精鋭部隊の指揮はナラさんが取るんですか?」
マーミヤはそうナラに尋ねた。なぜならば今回のエリシュオン軍の総司令はナラなのだから。
「そう。我らの狙いはクーリッヒの防衛だけにあらず。この戦いにて私は同胞を取り込む。」
「蜘蛛を取り込む?どういうこと?」
アリルは首を傾げてナラに尋ねる。
「私は同胞の中では族長に次ぐ者とされていた。族長がその場にいないのであれば率いているものを倒せば私が同胞の手綱を握れるかもしれない。」
ナラは少し俯きながらそう答える。
「それ本当ですか?流石に攻めてきてるんだから無理なんじゃ。」
アリルはポリポリと頬をかきながら言いにくそうに言った。
「下位の同胞たちは母蜘蛛などの上位の蜘蛛にしたがっている。マザースパイダーなどの最上位の同胞たちを従えることができれば自ずと下位の蜘蛛は私に従う。まぁ、もちろん族長がその場にいたらその限りではないが…」
「まぁ、それってナラさんを信じればいいってことだろう?」
ルーカスはそう言って笑顔を見せる。
「そういう事。」
ナラはそう言って右手でグッドマークをつくる。
「なら、問題なしだ!」
ルーカスはみんなに笑顔を向けてグッドマークを使って見せた。
パーティーメンバーはどうやら今回も死地のようだとやれやれと覚悟を決める。
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