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第244話 ドタバタ

「あー、まじか。逃げきれなかったな。」

俺は宿屋でそう言ってうずくまる。

いやー長期の護衛依頼とか探してたんだけど、タイミング悪く、無くてなんとか蜘蛛との戦い前に逃げる算段をつけていたんだけど、なんか色々見て回って楽しんでたら出遅れてしまった。


「俺、蜘蛛本陣切り込み隊に選ばれちゃったし。そりゃそうだよなぁ、俺クーリッヒの英雄だからなぁ。」

アイリスから蜘蛛の本陣に切り込む冒険者の精鋭隊に入って欲しいと懇願されたのだ。

そんなのお願いされて断れるわけがない。


なんとか、なんとか切り抜けられる秘策はないか?


ドンドンドンっと俺の止まっている部屋のドアが鳴る。


「おい!白銀出てこい!!私達に相談もなく蜘蛛の本陣に切り込む自殺隊に入ったらしいな!?」


「許しませんよ!!死んじゃうに決まってるじゃないですか!?あんな化け物達に突っ込むなんて頭おかしいですよ!!」


どうやらルーファとアリが俺たちがその斬り込み隊に入ると言う噂を聞きつけてカチコミに来たようだった。


うん、今回は俺が悪い。


ドンドンドンドンッ!

居留守を使おうとも思ったがあまりにもうるさいから近所迷惑を考えると出るしかないか。

クーリッヒの英雄が宿屋から追い出されたなんてカッコ悪すぎる。


はいはい、うるさいなぁ!


「白銀!!」「ジンさん!!」

2人が鬼の形相を浮かべて俺に詰め寄った。


「わ、わかってる。ごめんって。でもしょうがないだろ?断れる雰囲気じゃなかったんだ!」


「それで死んでしまったら元も子もないだろう!?お前は死なないかもしれないが、こっちは死ぬかもしれないんだぞ!!」


「俺は不死身か!」

まぁ、不死身だが…


「そうですよ!僕たちはか弱い女性なんですよ!?」

そう言ってアリは全く膨らみのない胸に手を当てた。


アリは幼少期のその過酷な環境で十分な栄養を摂取することができず、顔は整っているがとても貧相なまな板を持っている。

だから、これまで女性だとは皆気づかなかった。


「お前…今まで女らしいそぶりを一度も見せなかったくせに、都合のいい時だけ女とか言いやがって!」

俺はアリの胸を指さしてそう言った。


「いやだー!死にたくない!」

ルーファは髪をかきあげてそう言った。


「それにお前たちが本気を出せば別に死なないだろ!」


「「死ぬ時は死ぬ!」にます!」

2人は俺に詰め寄って声を揃えてそう言った。


「俺たちはクーリッヒの英雄なんだぞ?断れないだろ?お前達も相当その名誉で甘い蜜を吸ってるだろ?」

酒に酔ったルーファとアリの最近の酒場でのだる絡みはひどい。

後輩冒険者への意味のない説教、アドバイスと称する自慢話、アルハラ。

もうすでに酒場にいる2人は冒険者たちに避けられ始めているが、自分達の話に酔いしれている2人は気づいていない。

そして誰も止めるものはいない。

なんて言ったって本当にクーリッヒの英雄 パーティークローバーのメンバーなのだから、どれだけうざかろうとだれも文句が言えない。


「うぐっ!そ、それはそうだけど…」

ルーファは指先をちょんちょんしながら言い淀む。


「ルーファは自慢話が凄いですからねぇ。」

やれやれと言った様子でアリがそう言うがアリも大概である。


「はぁ!?貴様の方が甘い蜜を吸っているではないか!この間も酒場でクーリッヒの英雄 ジンがここに通ってるって言っていいからといって酒を値引いていたじゃないか!ジン聞いてくれ!こいつ、一つの酒場じゃなくて、行く店行く店でやってるんだぞ!!」


「あっー!それ言っちゃいます!?ルーファだって割り引かれて喜んでいたじゃないですか!!」


「お前、まさか俺の名前使ってたのか!?どうりで最近至る所の酒場の看板にクーリッヒの英雄ジンが通う酒場!みたいな謳い文句が多かったのか!おかしいと思ってたんだ、行ったことない酒場でも書いてあったから。お前の仕業か!!」


「だって、ジン誘ってもこない時あるじゃんか!誘ってもこないなら、少しくらい罪滅ぼしで名前を使わせてもらっても…」

今度はアリが指先をちょんちょんしながらそう言って上目遣いで見てくる。


「来ないも何もお前ら毎晩誘ってくるじゃねぇーか!」


まぁ、だけどこいつらなんだかんだ言っても金のない駆け出し冒険者やお祝い事のあるパーティーに酒や飯を惜しみなく奢っている。酔った勢いでなにもなくても奢っている時もあるが。

こいつらのこう言う金の使い方はすっごく無駄だが、悪い気はしない。


「話を戻すが、本当に、本当に私たちは敵に斬り込むのか?」

ルーファはウルウルと目も輝かせ、どうか違うと言ってくれと言わんばかりの不安そうな顔を作って俺にそう尋ねる。


アリもどうか違ってくれと手を合わせて祈るように俺を見る。


「うん!そうだよ!」

俺は笑顔で頷いた。


あー、どうしようかなぁ。


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