第230話 ナラの蠢動
ここは小国エバーデールの大将軍ドルジェの大砦。
その大砦のドルジェの寝室に黒ローブと口に黒い布を巻いた密偵が密談をしていた。
そしてある書簡をその密偵からドルジェは受け取った。
「…大王国エリシュオンか。それで?エルフの密偵よ。なぜ森の国エルランドがこの国の書簡を持ってきたのだ?」
「…我らエルランドも世界大同盟に加入する。」
「なるほどな。では、信用しても良さそうだ。」
森の国エルランドは小国であるエバーデールを魔王シャールブの魔の手から解放しようと前から模索していた。
こうしてドルジェ将軍と連携を図り、反旗を翻す準備を進めているのだ。
「大王国エリシュオン…あの時、魔王アナスタシアを助けた国。今度は我らを救ってくれるというわけか。」
ドルジェは受け取った書簡を読み直す。
「大精霊術師様からお言葉があります。我らの目的は団結と敵の戦力を削ることだと。貴公の存在は敵であるにしても味方であるにしても大きい。いい返事を待っていますと。」
「ははっ!それは脅しか?敵に回るのならば殺すという風に聞こえるのだが?」
ドルジェは使者をそう言って睨め付ける。
「私にはなんとも言えかねます。」
「この書簡に書いてあるがまま、言うがままに反乱を起こしエバーデールの王族の首を刎ねよう。それでエバーデールが救われるのであれば。世界大同盟とかいう同盟の矛にでもなろう。軍備を整え合図を待つ。」
「しかとそのお言葉を持ち帰らせていただきます。」
エルフはそう言って音もなく窓から出て行った。
ドルジェが反乱を起こせないのにはいくつか理由がある。
一つ目は即座に反乱を成功させなければ、反乱の隙をついて魔王シャーブルが必ず攻めてきてエバーデールを地獄に変えるからだ。
だから、迂闊には反乱を起こせない。
二つ目は軍団だ。王が傀儡にされてからはドルジェ将軍の軍団は散り散りにされている。手持ちの軍では反乱を起こすには心許ない。
三つ目は反乱の後だ。王を殺し反乱が成ったとしても後ろ盾のない小国のエバーデールはこの戦乱の世を生き残れない。いや、すぐに反乱の機に乗じて魔王シャールブが攻めてきて滅ぼされるだろう。
時間、軍勢、後ろ盾。それらの条件が揃わなければ反乱を起こせない。しかし、それらを揃えることはドルジェでは不可能であった。
「大王国エリシュオンは全てを解決して反乱を犯させてくれるのか。ふふっ、手厚いではないか。」
大王国の書簡を要約すると、もしも、エバーデールが世界大同盟に加入するのならば、魔王シャールブに攻められた時に、攻められている同志を助ける為に龍軍を飛ばし、すぐにその侵攻を跳ね返すと。エバーデールの隣国であるグラン王国を抑えた世界大同盟にはそれが可能だと。
軍団に関してはエルフの国 エルランドが協力し、密偵を各地に放ち私の散り散りになった軍団を一斉蜂起させ各地から私の元に集結させると。そして、私の軍団は私に賛同するエバーデールの他の軍を取り込んで大軍となり私の元に集結する。
反乱が成功した新たなエバーデールは世界大同盟の一員として我らは歓迎する。再興の援助は世界大同盟は惜しまないという後ろ盾にもなってくれるというアフターサービス付きだ。
「もしもこれが本当ならば祖国が蘇る。魔王シャールブという膿を追い出し、あの私が生まれた時のエバーデールが!」
しかし、一体何者なのだ?この書簡を送ってきたナラとかいう参謀は。
これまでエルランドと何度も話し合っても出せなかった答えをいとも簡単に送ってきた。もちろん大王国エリシュオンの力と世界大同盟があってこその計画ではあるが。
そして、これはおそらく流れの一つでしかない。巨大な同盟、世界大同盟を結束するための大きな流れの一つ。
おそらく緻密に計画が練られているのだろう。
敵ならばなんと恐ろしい化け物だろう。しかし、味方ならばどれほど頼もしいことか。
「これから行われる大魔王会議の後、一気に世界は動く。ふふっ、あの時、魔王アナスタシアを仕留め損なって良かったよ。いや、全ては運命なのかも知らないな。あははっ!!」
ドルジェはそう言って獰猛な笑みを浮かべた。
大王国エリシュオンはすでに整えている。
更なる勢力拡大する準備を。
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