第219話 小さな大王
「ここがエリシュオン?大森林の中に国があるの?」
アリルはそう言って目の前の大森林を見る。
「そうだ。大森林の端のかつて魔王ブーモルの重要拠点 セントラルが今のエリシュオンの首都となっている。」
ナラはそう言って答えた。
俺たちはそのまま大森林の中を進んでいく。
「相当大森林が整備されていますね。」
ポッシルは森の中の街道を進みながら周りを見渡してそう言った。
「アンデッドは不眠不休で働ける。モンスターは人間を凌駕する力がある。そう言うことだ。」
アーガストはそう言って答える。
俺たちはそのまま大王国エリシュオンに入国した。
「ここがエリシュオン。本当にモンスターと人類が共存している。」
ルーカスはエリシュオンで生活している人々をよく見る。
そこはとても異質だった。
笑顔で話すモンスターと人間。
巨人やエルフ、獣人や普通の人間、オークや龍、アンデッドが普通に暮らしている。
「ここでは種族は関係ない。全てが大王アリア様の一つの民だ。」
アーガストはそう言った。
「一つの民…」
ルーカスはその言葉を反芻した。
「大森林にはよく難民が流れてくる。微かに流れているここには難民を受け入れる国があると言う噂を信じて。そして、本当にあるんだ。手を差し伸べればその手を取って救い上げてくれる国が、そしているんだ、民の誇りすらも守ってくれる偉大な王が。全てを導き、救おうとする大王が。」
アドネスはうっとりとした目をしてそう言った。
「全てを導き、救おうとする王。人もモンスターも人種も関係なく、救いの手を差し伸べる王…。」
ルーカスはかつてのハードル伯爵領でのオーク達の処刑を思い出す。
そして、あの少女に涙を溜めながら言われたことを。
「そんなだからって、彼らも困っていたのですし、飢えていたのでしょ?誰も…助けてはくれなかったのでしょう?」と言うその言葉を。
ルーカスは今でも悩んでいた。
誰も助けてくれない人達を助けることが勇者なのではないだろうか。
あの時の自分では助けられなかった。あれ最善の選択だった。それはわかっている。
でも、それでも足掻いて、伯爵に額を擦り付けてでもオーク達を救うべきだったのではないのか。
しかし、そのオークたちが領民を傷つけたら僕はどう責任を取ればいいのだろうか。
そんなことをずっと考えていた。
助けを求めていたあのオーク達の手を勇者である俺は取らなかった。いや、取れなかった。
そして、その答えはいまだに出ていなかった。
しかし、目の前のこの国の民達をもう一度見る。
死霊騎士団、そしてその団長の恐怖の将軍 フルモンド・アーガスト。
竜の国最強の軍 龍軍と龍の国の四龍が1人 赤龍アドネス。
様々な種族の国民、モンスター。
僕はこれだけの人たちを導き、救うことができるだろうか?
アーガストやアドネスといった強者達をも俺は導き、救うことができたのだろうか?
逃げてきた亜人やモンスター達の救いを求めるその手を取るだろうか?
逃げてきた人間や亜人。モンスターを全て受け入れる王がどこにいるのだろうか?
僕がどんなに悩んで、どんなに苦しんでも答えを出せず、できなかったことをやった人がいる。
会いたい。
一体どんな人なのだろうか?
どんな考えを持っているのだろう?
なにを成したいのだろう?
会って話がしたい。そんな思いがどんどん重くなる。
城というよりは砦。そんな無骨な建物だ。
その大きな一室に俺たちは通されて巨大な玉座の前に通された。
僕たちは玉座の間に通される。
そこで僕たちはこうべを垂れて大王アリアが入場するのを待った。
扉が開かれて小さな足音を響かせて大王アリアが入場した。そして追従するように何人かの足跡も聞こえてくる。
そしてそのまま玉座のに座った音がして口が開かれた。
「面をあげてくださいまし!ルーカス様、ポッシル様!そして皆様!ようこそ大王国エリシュオンへ!私が大王国エリシュオンの王 大王アリアです!」
ルーカスは目を見開いて驚いた。
あの時の少女、ハードル伯爵の子女。
アリアちゃんがそこにいた。
座っている大きな玉座は少女にはやはり大きく、さらにアリアちゃんが小さく感じる。
だが、あの時の小さな少女ではない。
その小さな体から放たれる王としての覇気をたしかに感じる。
「ほ、本当に大王アリアって、あのアリアちゃん、なのか…。」
だが、信じられない。
なぜならば、あのアーガストやアドネスといった魔王、大魔王の主力の将軍達がこんな小さな少女を王として崇め、したがっているのだから。
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