第214話 巨人の国へ
「さて、ここから巨人の国までの行き方は簡単です。荒野を突っ切りましょう。」
ポッシルはそうみんな言った。
「はぁ、荒野ってなにもないんだよなぁ。」
アリルはそう言って憂鬱そうに空を眺める。
「そうですね。しかし、幸いにもどこの領土でもありません。荒野の覇者も別に荒野に侵入することは気にしていないらしいですし。そもそもここを領土と宣言もしていませんのでやはり荒野はどこの領土でもありませんね。」
「お父様、こんなに荷物いりますか?」
マーミヤは馬車の中もパンパンに積荷を詰んだ特大の馬車を見た。
「荒野には水もありませんし食料もありません。馬の水や馬の食料。その他もろもろ必要なものは数えればキリがありません。荒野に行くならばこのくらいの荷物になります。ましてや巨人の国で補給できるかもわかりませんし。」
「そうか、ハシャの城に行った時は迎えの馬車がアンデッドだったし、他の騎兵もアンデッドだったからな。」
ドルフはそう言って納得した。
「覇者の城に?」
ポッシルはそう言って聞き返す。
「はい、お父様。なくなった龍の国の代わりに三大王になって世界の均衡を保ってもらうようにお願いしに行ったのですが、断られてしまいました。」
「なるほど。覇者の城まで行くのは大変だっただろう?」
ポッシルはそう言って娘のマーミヤにそう言った。
「歩いて行こうと思ったのですが、幸いにもジンがハシャと知り合いで、迎えを寄越してくれたのです。なので、快適でした。」
マーミヤはそう言って笑顔を浮かべた。
「あぁ、それでアンデッドの馬車の話が…まぁ、ジンさんの素性は詮索しません。冒険者のマナーらしいですからね。ん?歩いて行こうとした?」
ポッシルは引っかかったように聞き返す。
「はい、馬や馬車を買う金も道中馬にやる水や食料を買う金もなかったので歩いて行こうと。」
マーミヤはそう言って答える。
「自殺行為ですね。良かったですね、お迎えがあって。」
ポッシルはあまりの無計画さに白い目で勇者パーティーを見る。
ポッシルに白い目で見られた勇者パーティーの誰もがいたたまれない顔をしていた。
いや、俺もほんとそう思う。つーか、歩いて行ったらどれくらいの旅になるんだ?食料も尽きるだろ。食えるモンスターすら荒野には居ないぞ?なんか気持ち悪いでかい虫みたいなモンスターはいるが…
こうして俺たちはクーリッヒを出発して巨人の国を目指し始めた。
「そういえば、お父様。三国がもう一度大同盟を結ぶ条件ですが、まず一つ猛将ファリルは無事獣王国に帰国しました。」
「ええ、そうですね。よくやってくれました。」
「二つ目の巨人の国の内乱はこれからどうにかしに行きますよね?」
「えぇ、そうですね。」
「三つ目の強力な新たな友好国の出現。これはどうしますか?」
マーミヤはまだめどの立っていない三つ目のことについて父に尋ねる。
「…今、私の中で候補に上がっている国が2国。いや、3国。」
ポッシルは考え込んでからそう言った。
「さすがお父様!!」
「へぇ、どこの国だ?」
ジンは興味深そうに聞いた。
「ふふん、私が当ててやろう。そうだなぁ…もしも巨人の国と同盟を結べたのであれば、バイキングの海賊島か?バーバルの国の背後をバイキングの水軍で撃てるし、ルーの擁する艦隊と戦う時も水軍兵力は必要不可欠だ。」
ルーファは自信ありげにそう言った。
「そうですね、あと考えられるのはエバーデールとかですか?エバーデールは小国ではありますが人類最強の将軍がいます。すごい怖い将軍が…それにエバーデールは大魔王ルーと戦うのであれば要地となる場所でもあります。まぁ、もう魔王シャールブの手に落ちては居ますが。」
アリがルーファの話に続けてそう言った。
「その通りです、2人とも素晴らしいですね。流石ルーファ様。そちらの方も政の知識がお有りのようだ。」
ポッシルは正解だとルーファとアリを褒めた。
「じゃあ、あと一国は?」
アベリオがポッシルそう尋ねた。
「…魔王モグの地下王国です。」
ポッシルは言いづらそうにそう答える。
「なっ!?魔王と手を組むのか?」
ドルフが驚いたように聞き返した。
「魔王モグはバーバルの派閥でしたが、バーバルの夜の国がルーに攻められているのに動かなかった。帝国は大艦隊を率いてやって来たと言うのに。つまり、モグはバーバルを見限り、裏切りました。もちろんルーからの働きかけはあったでしょうが、おそらくあの戦いでバーバルが負けると思ったのでしょう。しかし、そうはならなかった。魔王モグの国は夜の国の隣国であり、ルーに救援を求めるにしても遠すぎます。つまり、魔王モグは孤立してしまっており、バーバルからの制裁を震えながら待っている状態と言えます。」
ポッシルは冷静に分析する。
「なるほど、つまりそこに同盟の話を持ち掛ければ、飛びついてくるというわけですね?」
マーミヤは頷いてそう言った。
「でも、魔王だぜ?ルーカスどう思う?」
ドルフはルーカスに問う。
「魔王モグは人類とは敵対はしていない。しかし、マフィアや裏組織の背後には魔王モグがいると言う噂もある。人身売買もむしろ産業のように行い、奴隷も多い国だという。扱いも酷いとか。僕は反対派だ。」
ルーカスは反対の意を示した。
「魔王モグは経済の王です。金山を牛耳り、宝石や鉄鋼なのどの鉱物資源を採掘して莫大な富を持っています。正直、この世界は魔王によって実質支配されていたといっても過言ではありません。魔王モグの国の力は我々人類の大国である我が国と同等と考えていい。経済力でいえば三大王の国に並ぶかそれ以上。味方に引き込むことができればそれだけで頼もしいです。」
ポッシルはルーカスにそう返す。
「もう今までの魔王の所業を辞めさせられますか?奴隷や裏社会への援助、他国への侵攻、そのような行いを辞めさせられますか?」
ルーカスはそう言ってポッシルに答えた。
「ルーカスさん、これは政治です。もちろんそれに越したことはありません。ですが、ある程度相手のことも認めなければ、それも相手は小国ではありません。魔王ほどの勢力ともなればなおのことです。」
「それは…魔王の、相手の顔色を伺うということですか?」
「貴方は勇者だ。違和感はあるでしょう。ですが、夢を見るのではなく現実可能な理想を追い求めるべきでは?」
「それは、違う気がする。僕は、それは妥協してそれを、認めてはいけないと思う。」
「まぁ、それは追々。まずはこの世界で生き残ることを考えねばいけません。」
クローバーのメンバーは一つの国のことをすぐに思い出していた。しかし、クローバーは大王国エリシュオンのことは誰も言わない。
ルーファは余計なことを言って大精霊の逆鱗に触れるのを恐れて。
アリはまだエルランドがエリシュオンの情報を掴んでいないことを知って。帝国が有利に進むように。
ジンは面白がって。
リーナは他のメンバーが言わないのを見て口を噤んだ。
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