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第213話 間話 S級冒険者とレオン

「おい、聞いたか?モンスターの大移動。」


「あぁ、なんでもいろんな階層からモンスターの集団が下層に向かっていくんだろう?それもすげー強いモンスターたちが混ざってるらしいじゃねぇーか。」


「そんなのにバッタリ会っちまったらたまったもんじゃねぇーな。」


「つーか、何しに下層に行くんだ?」


「さぁ?モンスターの考えることはわからねぇな。まぁ、地上に向かってるわけじゃなくてむしろ下に向かってるんだからいいんじゃねーか?」


「あははっ!たしかに!」


レオンは冒険者ギルドで冒険者達の会話に耳を傾ける。

冒険者ギルドで冒険者の間で噂になっている話題だ。


奇跡の剣やフロントライン、マッスルクラブなど様々なパーティーやギルドが調査しているらしいがなぜ下層に向かっているかわからないらしい。


わかっていることは、下層にモンスターの集団が向かっていると言うこと。そして、そのモンスターを率いているのはネームドなどの凄まじい強さを持つモンスターであること。

調査している冒険者もそのモンスター達にやられてしまって調査も思ったより進まないことだ。


そしてそのモンスターの集団が80階層よりも下に降っていく姿も目撃されている。

つまり、かなり深い階層が目的地である可能性がある。


俺は今日も迷宮に潜るために迷宮に向かう。


すると、目の前にアイリスさんが現れて俺を行手を阻んだ。


「レオン、今は1人で潜るのは本当にやめた方がいい。」

アイリスさんは心配そうな顔をしてそう言った。


「アイリスさん、それってあのモンスターの集団のことですか?」

俺はそう言って返す。


「あぁ、ただのモンスターの集まりではない。ネームドもいたりとかなり強いモンスターも混ざっている。A級冒険者もやられているんだ。」

アイリスさんは辛そうな顔をしてそういった。


「でも、俺は潜りたいんです。少しでも、1日でも早くもっと強くなりたい。」

俺はまだまだ強くなれる。そして、それは迷宮の中でこそ本当に強くなれる気がした。


「今のお前では迷宮の養分になるだけだと言っている。」

キッとアイリスさんは俺を睨んで少し強めにそう言った。


「俺はここで歩みを止めたくないんです。」

俺も引き下がれない。


「地上で依頼をこなせばいいだろう?」


「俺はラストダンジョンに挑みたいんです。」


「強情だな。だが、B級冒険者のお前では今の迷宮は危険すぎる。たった1人ではわざわざ死に行くようなもんだ。」


「それでも俺は行きますよ。」

俺はそう言ってアイリスさんを通り過ぎて迷宮に向かおうと歩き始めようとした。


「そうか。」

アイリスはそう言って剣を抜いた。


「なっ!?アイリスさん?」


「私はもう友を失いたくはない。誰になんと言われようとも、レオンがそれでも迷宮にいくと言うのならしばらく動けなくなってもらう。」

アイリスさんはじっと俺を見つめながらにそう言った。


「本気ですか?」

そう聞いたが、アイリスさんの目は本気だ。


「本気だよ。モンスターの集団の中にはAランクモンスターもいた。うちのメンバーも何人かやられた。この異変はただ事ではないと私は感じている。」


「そうですか。」

俺はそう言ってナイフを抜いて構える。


「止まらないか、レオン。」


「えぇ、でも、今は貴方と戦ってみたい。今の俺が貴方に、S級冒険者にどこまで通じるのか!」

俺は不敵に笑う。


俺はAランクモンスターのドラゴンゾンビも討伐できたんだ。

誰にも見られてはいなかったけれど、Aランクモンスターの討伐はS級冒険者でも難しいはず。

今の俺がどれだけS級冒険者に通じるのか、戦いたくなってしまった。


「ふっ、挑まれればいつでも戦ってやるというのに。」

アイリスさんは少し笑って、剣を構える。


「よろしくお願いします。」

俺はそう言って頭を下げた。


「こい、レオン!」

アイリスさんはそう言って、顔を引き締めた。


「身体強化!」

俺は身体強化をかけてアイリスさんに向かって駆け出す。


「速い!?」

アイリスはレオンのスピードに驚いた。それは明らかにB級冒険者の踏み込みではないからだ。




だが、さすがアイリスさん。俺の攻撃を全ていなし、かわし、受け止めた。


「こんなに強くなっているのか!?」

アイリスさんは驚愕の顔をしてそう言った。


「褒めてもらって嬉しいです!」

俺は単純に嬉しくて笑う。


「だが、レオンの戦い方はモンスターに対しての戦い方だな。」

アイリスさんはそういうと俺と少し距離をとったと思ったらすぐに距離を詰めて猛攻を仕掛けてきた。


アイリスさんの剣は一つ一つが重く、そして緩急があった。

そして、フェイントも織り交ぜられた攻撃は見切ることは難しかった。


「うっ!」

フェイントに引っかかった俺にアイリスさんは蹴りを俺の腹に食い込こませた。


その後もアイリスさんの蹴りや拳が俺に面白いように当たる。

俺の武器はナイフだ、アイリスさんに当てるには踏み込む必要がある。だが、アイリスさんの間合いの取り方がそれを許さない、そしてアイリスさんの踏み込みは面白いくらいに俺の懐に入り込み拳が叩き込まれる。


「ガッ!?んっ!?くっ…。」

俺はアイリスさんに一撃も当てることができずについに膝から崩れた。

そしてアイリスさんの剣が俺の首に当てられた。


完敗だ。


「モンスターと戦う時と人と戦う時では当然戦い方が違う。視線、仕草、気迫、雰囲気、フェイント、足運び、リズム。それらを複合的に組み合わせることで相手を翻弄する。私の拳や蹴りを避けられなかっただろ?それはお前がモンスターとしか戦っていないからだ。それはとても私は好ましく感じる。しかし、人との戦い方はモンスターと戦うときに取り入れることもできる。」

アイリスさんは淡々と俺の反省点を言った。


「これが、S級冒険者。」

本当に強い。もしかしたら勝てるかもしれないと考えていた自分が恥ずかしい。


「レオンの成長は本当に凄まじいと思う。羨ましいよ。戦ってみた感じステータスで言えばもう私と変わらないかもしれない。でも、これは経験の差。レオンは急激な成長を遂げている。だけど、私は地道に積み上げてきた。ずっと迷宮に潜り続けて得てきた力だ。レオンが迷宮に潜り始めるもっともっと前からね。地力が違う。」


「まだ、こんなにも遠いのか。」

アイリスさんはいつでも俺を殺せた。

もっと強く殴られていたら?拳ではなく短剣を持っていたら?

いや、そもそも普通に剣で俺を切ることだってできるはずだ。

圧倒的な技量の差、経験の差。

痛感する、S級冒険者の強さを。


「ううん、私はもうここまできているのかって思ったよ。レオンの力はもうB級冒険者ではない。A級冒険者でも強い方かもしれない。」


「次は…勝ちます。」


「ふふっ、まだ負けない。私はS級冒険者なのだからな。」

アイリスさんはそう言って去っていった。



俺は負けてしまったからには今迷宮に行くわけにはいかない。

その代わり、今見たアイリスさんの動きを、立ち回りを振り返ろう。


きっとそれも俺を強くしてくれるはずだから。


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