第208話 不明な救援
解き放たれたア・ベルゲルはすぐに支援者を集い反乱軍を構築した。
対戦に負けた後の巨人の国はア・テスの力に不満を抱くものが多く、思ったより多くの反乱同士が集まった。
まさに俺を解放するには最高のタイミングと言えた。
都市を制圧していけば、さらに多くの反乱軍が蜂起して我らに加わってくれるであろうことがわかった。
勝ち目は十分ある。
そしてそれは敵もわかっていた。
ア・テスは早急に大軍をア・ベルゲルのところへ派兵し反乱の早期鎮圧に動いた。
「フロストバーン!!」
ア・ベルゲルは反乱軍を率いて兄であるア・テスの軍と戦う。
巨大なハンマーを振り回して、自らに元から宿る氷の力を全開にして戦う。
民のほとんどは彼を支持しているが、軍部のほとんどは雷の巨人であるイ・サンの手下である。
兵力差は圧倒的だ。
それでも強者であるア・ベルゲルの奮闘があり、戦いは拮抗する。
「勝ち目などないぞ、反乱軍よ!愚かな自分を恨みながら死ぬがいい!!ガハハ!!」
雷の巨人イ・サンがさらに大量の援軍を連れてやってきた。
ただでさえギリギリで拮抗していたのだ。戦況は一気に絶望的だ。
「お逃げください!ここは我らが殿となります。貴方は新たな巨人の王となるお方。ここで散らしていい命じゃない!!」
ウ・デンがそう言ってア・ベルゲルの前に立って覚悟を決めてそう言った。
「いいや、俺は逃げない。ここでやつを殺し、その首をア・テスに送ってやる!」
「ガハハっ!!正義の巨人をこの手で殺せる日がくるとは!興奮するぜぇ!お前の首を槍に刺して国中を回って晒してやるよ!」
雷の巨人はその身に宿る雷の力を滾らせて自身が持っている大剣にもその力を流し振りかぶった。
「やれるものならばやってみろ!!」
正義の巨人もその身に宿る氷の力を滾らせて巨大なハンマーにその力を流し振りかぶる。
そして、2人の力が宿った武器同士がぶつかり合う。
凄まじい音を立てながら2人は打ち合う。
「くっ、このままでは!」
正義の巨人は周りを見てそう言った。
雷の巨人と正義の巨人の力は互角。しかし、敵の数は圧倒的であり敵に徐々に囲まれていく。
「ガハハ!!ほーら、もう終わりか?ここで一網打尽だ!」
「させないよ。」
そう言って現れたのは巨人ではなかった。
黄金の瞳に黄金の髪の美女が2人の巨人の間に舞い現れた。
「パラライズ!」
黄金の瞳が煌めいて雷の巨人の動きが止まった。
「何者だぁ!!!」
麻痺の魔眼に囚われたイ・サンであったが、雷の巨人イ・サンは力を放ち麻痺の魔眼をレジストする。
「我らは大王国エリシュオン。巨人の国アトラースの救援に来た。」
地上に降り立ったナラはそう言った。
「大王国エリシュオン?聞いたことがないな?そいつを庇ったと言うことは敵ということか?1人でわざわざ飛び込んできて自殺か?」
雷の巨人イ・サンはそう言って大剣をナラに突きつけた。
「1人?自殺?大軍を率いてきたに決まってる。」
ナラは首を傾げてそんなわけないだろうと自らが来た方向を向く。
「謎の軍がこちらに向かってきています!!そ、その数…5万!?ひ、率いているのは死霊騎士団 フルモンド・アーガストです!!そんな…魔王アルモルドの軍勢!?魔王アルモルド軍襲来!!」
その方向に居た兵がアンデッドの大軍を視認する。紛うことなき魔王アルモルドの軍勢を確認して大声を出す。
「なっ!?死の軍勢がなぜ!?魔王アルモルドは死んだのではないのか!?」
イ・サンは魔王アルモルド軍の出現に驚く。
「龍軍です!!空から龍軍が飛来!?先頭で率いているのは…龍の国 四龍 赤龍アドネスです!!竜王軍襲来!!龍の国が攻めてきました!!」
空を見た兵士の1人が飛んでくる龍の大群を見てそう叫んだ。
「そんなわけないだろう!?竜王ダイヤは確かに死んだ!龍軍が竜王の命令なく攻めてきたと言うのか!?」
イ・サンは状況が理解できなかった。そして、歴戦の将軍の勘が警鐘を鳴らす。
理外のことがおこっている。死んだはずの魔王の軍が大挙として龍の国に攻め入ってきたのだ。
「ふふ、ふはは!風向きが変わったな!ナラ殿、話は後で聞こう。とりあえず、味方で良いな?」
ア・ベルゲルはこの状況を理解することはできないが形勢が変わったことだけは理解でき、笑みを浮かべる。
「大王国エリシュオンは正義の巨人ア・ベルゲルを新たな巨人の国の王として認める。」
ナラはア・ベルゲルの問いにただそう答えた。
「よし、皆のもの!奮起しろ!!援軍だ!」
ア・ベルゲルがそう言って自らの巨大なハンマーを掲げる。
それに答えるように反乱軍が歓声を上げた。
「ふ、ぶざけるなよ!ここで引けるか!死霊騎士団のアーガスト?赤龍アドネス?死んだ魔王の亡霊に怯えて逃げた奴は俺が殺す!!奴らを殺せ!」
イ・サンは撤退せず全軍に突撃の命令を下す。
早急に正義の巨人の首を取ろうと自らも大剣を振りかぶる。
「ふふっ、こう言う奴が一番殺りやすい。」
ナラはそう言って恐ろしく笑った。
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