第206話 大国エルランドのもう一つの目的
「お、お父様、申し訳ありません!大丈夫なのでしょうか?」
マーミヤは父であるポッシルがルーカスとアリルを守ってクリフト王と言い争いをしたと聞いて心配している。
そして、エルランドと聖王国の関係が悪化してしまったのではないかと。
「あぁ、心配することはない。私はこれも目的できたのだからね。」
ポッシルはそう言ってニコッと笑った。
「ど、どう言うことですか?」
アリルは不安そうな顔でそう言った。
「聖王クリフトが大魔王ルーに屈したことは我らエルランドは掴んでいました。我らエルランドは聖王国と敵対することを決めたのです。私は守り人に勇者達を守るように命じられています。」
「こうなることを予想して!?」
ルーカスは驚く。
「とんだくわせものだぜ。」
ドルフは感心したようにそう言った。
「本当に凄い人だったんだ。」
アベリオも尊敬するようにポッシルを見つめる。
「聖王国と我が国エルランドでは比べるまでもない軍事力の差があります。ここに私がいる以上、勇者達に手を出しては来ないでしょう。さぁ、長居は無用です。早くこの国を出ますよ?」
「はい!!」
ルーカスはそう言って元気に返事をする。
「まずは王国に出ましょう。クーリッヒを中継して荒野を抜けて巨人の国に行きます。」
「クーリッヒってどこいく時にも通るよね。」
アベリオは素朴な疑問を口にする。
「クーリッヒは王国の最重要拠点だから。貿易にの要であり、世界最強レベルの冒険者達がという潜在的戦力。さらに、迷宮からは最高レベルのモンスターの素材や鉱物、宝物がある。無限の富が湧き出るラントダンジョンがある。小競り合いがあるも王国がどこにも本気の侵略を受けないのはクーリッヒがあるからだよ。」
マーミヤはクーリッヒの重要性をアベリオに説明する。
「魔王モグの地下王国の次に裕福な国と言われています。」
ポッシルが補足するように言った。
「クーリッヒか、ジンなにしてるんだろ?」
アリルは空を見上げてそう言った。
「アリルはほんとその人好きだよねぇ。」
アベリオは揶揄うようにアリルに言う。
「えっ!?いや、そう言うのじゃなくて!えっと、その、命の恩人だから!」
アリルは慌てたように顔を真っ赤にして言った。
「そうなんだー、そりゃ私たちの恩人だし、うんうん、そうだよねぇ。」
分かってるって〜という感じでアベリオはアリルに返した。
「だが、あのジンという人物、本当に何者なんだろう?敵なのか味方なのか。アリル、彼は本当に僕たちの敵ではないのか?」
ルーカスはハシャでの城のことを思い出した。
「敵ではないよ。でも、味方でもない。そう言う存在よ。」
アリルは多くは言えないように言う。
「まぁ、いい奴らではあるよな。」
ドルフはそう言ってニカっと笑った。
「ふん、あの同族はいけ好かないがな。」
マーミヤはあのパーティーのエルフのことを思い出す。
「えっ、まさか冒険者パーティークローバーの話しをしているのかい?…知り合い?」
ポッシルは驚いたようにルーカスたちに聞いた。
「おぉ、お父様も彼らのこと知っているのですか?では、あの薄情な同族も?」
「…薄情な同族、か。うん!聞かなかったことにする!」
ポッシルは疲れたような顔をして空を見上げた。
アリルの契約を結んだ神ジャスティナの神約書はそこに書いている内容を疑問を持たずに行うような洗脳の効果もある。
ジャスティナは紛うことなき神である。神の使う契約は文字通り強力な契約である。
しかし、神ジャスティナはアステリアによって討たれた。
地上に及ぼしていたジャスティナの力は徐々に力を失い、今日、神約書の発動も難しくなったのである。そして、その洗脳の効果も。
アリルが反抗できるようになったのもそれが原因である。
そして、今回ポッシルという大国エルランドのNo.2がわざわざ来たのには理由がある。
もちろん、同盟の結成も大きな目的ではあるがもう一つ目的がある。
そして、そのエンランドの狙いの一つは成った。
勇者の獲得。
勇者ルーカスは様々な大きな偉業を成している。
ラストダンジョン初の100階層到達。
魔王アルモルドの討伐。
獣王国の猛将フェリルの救出。
もう勇者ルーカスはどの国も無視できない影響力を持つ英傑である。
聖王国と敵対する上で1番の懸念点であるのは勇者の存在。
勇者ルーカスは人気すぎるのだ。
敵に勇者ルーカスがいるだけで容易にこちらが悪だという印象を受ける。
逆に勇者がいるだけで人類の国からは協力を得やすいし、各国からの同盟も結びやすくなる。
勇者ルーカスの存在は人類の大同盟を組む上で凄まじい重要ピースとなる。
大国エルランドは聖王国が魔王側に寝返るのであればと、勇者の獲得にポッシルを向かわせ強引に聖王国から奪い取ったのである。
そして、それは成った。
あとは、巨人の国が同盟に参加すれば人類の大同盟が完成する。
ポッシルはすでにエルランドを出発する前にエルランドのギルドでクローバーを雇う指名依頼を出しており、クーリッヒでクローバーという戦力を補充して巨人の国に向かう算段をつけている。
ルーファ様はあれでも大国エルランドで最高の精霊術師だ。
あれでも。
ルーファ様がもしも争い事でそのお力を使えば、誇張なしでエルランドは人類最強の国となり大魔王の国とも力を並べるほどの力を得られるだろう。
性格はあんなでもルーファ様は聡い。自らの力の有用性を人一番理解されている。
だから、力を隠し、国を離れているのだろう。
利用されないように。
そして、それは正しい。
不幸にも国を離れてもこうして私達から力を求められるのだから。
ポッシルも様々な知略を巡らせ各国に手を回している。
しかし、聖王国のようにルーに先に手を回されて潰されることも多い。これほど用意周到に手を回しても、人類の国であろうとルーの手に落ちてしまっている国があるのだ。
どれほど大魔王ルーが恐ろしい存在なのかがわかる、そしてすでに水面下では戦争は始まってるのだ。
しかし、ポッシルは知らない。
計算に入れていない。
新たな大王の存在を。
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