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第205話 聖王クリフト

ルーカス達は無事聖王国に着き、聖王クリフトに謁見する。


玉座の間にいるのは聖王クリフトと数人の大臣、ルーカスとアリル、猛将フェリル。そしてエルフの国エルランドの大使 ポッシルだ。


「今説明した通り、僕たちはこれから巨人の国に向かい、正義の巨人ア・サンの味方につき反乱を治めて参ります。」

ルーカスはそう言って跪き、聖王クリフトにこれまでの経緯を話し、これから巨人の国に向かうことを報告した。


「ならん。」

クリフト王はそう言って強くルーカスを見つめる。


「えっ?なぜですか?」

ルーカスは断れるとは思われず戸惑った。


「神託が降った。我ら聖王国は三大王ルーと共に悪王バーバルと戦うこととなった。これは神意である。」


「ほう?クリフト王は大魔王に屈したのですかな?」

ポッシルがやはりなと立ち上がりそう言った。


「聖王の御前である!エルランドのポッシル殿といえど不敬であるぞ!!」

大臣の1人がそう言ってポッシルを怒鳴りつける。


「聖なる王とは名ばかりな王に尽くす礼儀など持ち合わせてはいない!」

ポッシルはそう言って聖王国の大臣に言い返す。


「なんと!?貴様、その言葉取り返すことなどできぬぞ!!」

大臣は顔を真っ赤にしてそう言った。


「取り消すつもりなど毛頭ありはしません。大魔王に屈するなど保身に走ったな。」


「勇者よ、ポッシルを捕えよ!」 

クリフト王はルーカスにポッシルの捕縛を命じた。


「いいえ、間違っているのはクリフト王だ。」

ルーカスはその命令を拒絶する。


「神意に背くか!?おい、アリル!!」

クリフト王は目を見開き今度はどうにかしろと命じるようにアリルの名を呼ぶ。


「…ルーカス、今度は私が勇気を出す番だね。聖王様、私はもう聖王国の聖女ではありません!世界に平和と安寧をもたらす勇者パーティーの聖女です!!」

アリルは覚悟を決めたように少しの間、目を閉じてから強い眼光を持ってクリフト王を見つめてそう言った。


「貴様、裏切ったな!!貴様、正義の女神ジャスティスナ様に誓ったであろう!?貴様が結んだ神約書がここにある!契約違反だ、契約違反である!!聖炎に焼かれて死ぬが良い!!」

クリフト王は一枚の書類を取り出してアリルに向かってそう言った。


「うっ!?」

アリルは聖炎に焼かれると思い目をギュッと閉じてその時を待ったが、その時は訪れなかった。


女神ジャスティナの権能は裁定と契約。その権能の一部をクリフト王は行使できるのであるが…


「なぜだ!?どうして発動しない?」

女神ジャスティナは滅せられた。もはや、聖王クリフト王の持っている神約書は効力などは持たず紙切れである。


「どうして?」

アリルは聖王国に向かう馬車の時から覚悟を決めていた。

自分の命と引き換えにルーカスの正義を守ろうと。


アリルが結んでいた契約とは聖王クリフトへの絶対服従。もしも、逆らえば神約書に従い聖なる炎に身を焼かれて滅びるという契約。


女神ジャスティナの力を受ける最高の適合者である勇者ルーカスの成長と操作。それがクリフト王からの命令であり、アリルがルーカスのパーティにいた理由。


アリルは孤児であった。

聖王国のスラム街に捨てられ、汚れと穢れをその身に纏いゴミを漁って生活をしていた。

漂っていたアリルの聖女としての力を神官に見抜かれてアリルはクリフト王に今の生活から抜け出すことを条件に契約を結んだ。


たとえ命を握られようとも、言いなりになろうとも。ゴミを漁り、蠅の集った腐った食べ物を齧るよりはましだと思った。


そして、聖女としての力を身につけて勇者と共に聖王国を旅立った。


最初はルーカスを聖王国のいいなりにするように動いた。いや、今現在もそうだった。


でも、ルーカスの冒険や救いたいという思い、そして勇者としてあろうとするルーカスの葛藤を間近で見てきたアリルは心のどこかで本当にルーカスを勇者として支持するようになった。


ルーカスが傷付けば癒し、迷えば道を示した。


クリフト王に言われたからではなく、本当にルーカスを勇者として成長させたかった。


そして、ついにルーカスは魔王を倒して勇者は誰もが望む真の勇者となった。


勇者の歩みを、私の命で止められてはいけない。

だから今、アリルは覚悟を決めて契約違反をしてクリフト王に反抗したわけだが…


どう言うわけか私は死んでいない。


「ええい!!聖騎士達よ!!」

クリフト王はアリルが何らかの手段で契約を無効にしたと思い、聖騎士達を呼ぶ。


「はっ!!」

豪華な鎧を着た騎士たちが抜剣し、ポッシルたちを囲む。


「待たれよ!良いのだな?ここで私に手を出せば聖王国は我が国エルランドと完全に事を構えることとなるぞ?それでもいいのか、聖王クリフト!!大国エルランドのエルフの大軍が聖王国を滅ぼすぞ!!」 

ポッシルは一歩前に出てクリフト王にそう強く言った。


「ぐっ!?」

クリフト王は苦虫を噛み潰したような顔をする。


「ふん!勇者達はこの大精霊術師ポッシルが貰っていく!」

ポッシルはニヤリと笑って唾を返して玉座の間を退出するために歩き出した。


「いつかそなたらに天罰が下るであろう!」

クリフト王はポッシル達を怒りの形相で見つめながらそう言った。


「異教の神など知らぬ!我らが信仰するは世界樹だ。」

ポッシルはクリフト王を見ずにそう言ってルーカス達を連れて退出した。


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