第200話 アリアとアナスタシア
その後、俺たちはとりあえず鍵付きの部屋に案内された。
「とりあえず、牢屋じゃなくてよかったね。アナスタシアは一国の王だからさすががにぞんざいな扱いはされないみたい。」
リーナはそう言って部屋のソファに腰を下ろす。
「逃げ出す時はいつでもご命令ください。私が監視を殺し鍵を開きます。」
部屋の影から突如としてアリが現れた。
「えぇ!?いつの間にいたの!?」
ルーファはビクッと驚いたように跳ねた。
「ここに入った時に紛れ込んだんだ。」
アリはそう言うとニヤッと笑った。
「ガータ、アーガスト、アドネスと名だたる将たちとその軍勢がここにいる。ここで逃げても逃げ切ることは無理だろう。それに、アリアとかいうやつにも会っておかなくてはいけない。これだけの軍団を従えた化け物が今まで頭角を表さなかった。相当な知者であり実力者だ。手を組めるなら組みたいし、危険ならば知っておきたい。」
「わかりました。では、私は潜んでいますのでなにかありましたらお呼びください。ジンたちもなにかあったら言ってくださいね。」
「これは…本当にどこにいるのかわからない。」
リーナは驚く。目の前で気配を消したアリがどこに消えたのかわからないからだ。
「あぁ、だからアリは最強の暗殺者なんだ。」
コンコン。
「アリア様の準備が整いました。謁見を。」
オーク兵の1人がやってきて俺たちを案内する。
案内されたのは砦の大きな円卓のある応接間。
大きな椅子がある向かいにアナスタシアが座り俺たちはその両サイドに座った。
部屋の隅にはオーク兵が配備されており、ガータやアーガスト、人化したアドネスの姿もある。
数分待って部屋がノックされる。
「失礼致しますわぁ!!」
まだ幼さの残る声で扉が開けられて一体のスケルトンとナラを連れた少女が入ってきた。
そしてアナスタシアの向かいの一番大きな椅子にストン座った。その隣にスケルトンとナラが控える。
「私はアリアですわぁー!よろしくお願い致します、魔王アナスタシア様!」
現れた少女は元気よくそう言った。
「あなたが、大王アリア??」
アナスタシアは開いた口が塞がらない。
なぜならば人間の少女がこの名だたる化け物のような将軍達の王だというのだから。
「そうですわぁ!私がアリアです!」
カタカタとスケルトンの笑う音とジンの笑いを堪えて少し震えている鎧の音だけが響き渡る。
「まず貴方達の目的を教えてくださいまし。なぜこの砦セントラルへ?」
この砦は旧ブーモルの重要拠点であり、セントラル砦という名の砦だ。今はアリアの首都でもある。
「私の国である、帝国に帰るためだ。そのためにここを通ることを許してほしい。」
「なんでも大魔王ルーの軍に飛空挺?という空飛ぶ船を落とされて逃亡中ということでしたね?大変でしたね。もちろん、通ってもいいですわぁ。…でも、条件がありますの。」
「条件だと??」
アナスタシアはやはり交換条件があるかと険しい顔で警戒する。
「えぇ!囚われたドワーフ達の解放!それが条件ですわぁ!」
アリアはビシッとアナスタシアを指差して笑顔でそう言った。
「…なぜ貴方がドワーフ達の解放を?」
アナスタシアはまさかの条件に一瞬ぽかんとして真剣な顔で尋ねた。
「私は世界で一番優しい王になりますの。救いを求める手には手を差し伸べますし、救えるものは救いたい。」
アリアは胸な手を当て優しく目を閉じてそう言った。
「ダメだ。彼らはまだ必要だ。」
アナスタシアはアリアの提案を一蹴する。
「なぜですか?」
アリアは頬を膨らませるとアナスタシアに理由を尋ねる。
「力を得るためだ。この世界を生き抜くにはさらに力がいる。我らが力を得るためには魔族の魔法技術とドワーフの工学技術が必要だ。我らは三大王に対抗できるだけの力はない。だから力が必要なのだ。」
「力があればドワーフは解放できるのですか?」
「…私とてドワーフを力で従わせたかったわけではない。再三の忠告はした。対話も何度も重ねた。そして、ドワーフは私を拒絶した。誰にも脅かされない力があればもちろんドワーフを解放する。だが、それは…」
「わかりましたわぁ!ならば、手を組みましょう!」
アリアはそう言って自分の手をアナスタシアに向けた。
「手を組む?」
アナスタシアは首を傾げる。
「えぇ、私たちが手を組めばそう易々とは誰かが侵攻できないはずです!」
「ふははっ!!…三大王の力を舐めるな!!たかだか我ら二カ国が手を組んだくらいで三大王と対等になどならはしない!いくら貴様が名だたる将軍たちを従えようと大森林の端っこを収めているだけの貴様と組んでどうにかなる話ではない!!」
アナスタシアはそう言う簡単な問題ではないとアリアを怒鳴りつけるように言った。
「大森林中に散った魔王ブーモル様のオーク達
は今アリア様の下に集結しつつある。魔王ブーモル様の全ての軍勢は大王アリア様の下に。」
オークのガータは少し前に出て、アリアに跪きそう言った。
「魔王アルモルド様の全てのアンデッドは大王アリア様の一つの民となる。そしてその領土も。死を恐れない不死の軍勢はアリア様のために一つの民として蘇るだろう。」
アーガストもガータに続き前に出て、アリア跪きそう言った。
「アリア様は三大王ダイヤ様の竜王の称号を継いだ。龍は竜王に従う。文句があるものは私が叩きのめす。ダイヤ様が従えていた龍達がアリア様のためにこれから集うだろう。天空はアリア様に捧げる。」
アドネスも前に出て、アリアに跪きそう言った。
「アリアは魔王ブーモルと魔王アルモルド、そして三大王ダイヤの残された勢力を全て取り込み一大勢力となる。そして、アリアはその圧倒的な軍事力を持つことで世界への発言力を強め、これから諸国の盟主として大同盟を目指す。その大同盟は魔王や人間などは関係ない。なぜならば盟主の国はモンスターの国、収めるのは人間だ。種族は関係ない。世界大同盟という名の大同盟を組み世界はアリアの下に一つとなる。」
横に控えたナラはそう言った。
「その同盟では差別や支配は許されませんわぁ!奴隷の完全廃止、差別、侵略をなくします。そしてお互いを助け合いますわぁ!」
アリアは小さな胸を張り自信満々にそう言った。
「なるほど、その同盟の加入国の一例目に我らの帝国がなれということか。実際にドワーフを開放して。」
アナスタシアはようやくアリア達の思惑を理解して合点があったように頷いた。
「そういうこと。帝国の参加とそのために帝国がドワーフを手放すことは間違いなく世界にとって凄まじい意味を持つ。とてもいいタイミングで来た。まるで誰かが連れてきたみたいなタイミング。」
ナラはそういうとジンを見つめる。
「ここに自らきたのは魔王アナスタシアだ。俺は雇われたにすぎない。」
ジンはナラの方を見ずにそう言った。
「あれって?」
リーナが小声でジンに尋ねる。
「あぁ、この間のやつだ。」
ジンは言いにくそうにそう言った。
「…しかし、この同盟に加入するということは帝国は三大王バーバルにも牙を向くという背徳行為だ。」
アナスタシアは下を向きながらそう言った。
「でも、ドワーフは解放できますわぁ?」
「しかし!」
「私が助けるのはドワーフだけではありません。貴方も、そして帝国もですわぁ!」
「我らもだと?」
アナスタシアはどう言うことだ?と言わんばかりに眉を顰めた。
「あなたの捕まった時の報告を受けました。噂とは全く違い、雇った冒険者を逃がそうとしたとか。悪の帝王?いえ、私が今、貴方と話してそのような印象は待てません。私が貴方に持ったイメージは自国の為にその命を削り、そのためには手段を選ばない強い王ですわぁ。今まで自ら魔王を自称し、そして演じ、私がすべての元凶だとでも言いたげですね。帝国と魔族にその悪行のツケが行かないように。すべてを自分が悪いのだと。」
アリアはそう言ってアナスタシアの方をじっと見つめる。
「っ!?」
アナスタシアは自分の中でなにかが込み上げてくるのを感じる。
「魔王?悪の帝王?ちがう、貴方は国を民を必死に守るためにもがき苦しみ、1人でその罪を背負おうとしている1人の王ですわぁ!!そして貴方は心の奥底で真の平和を強く望む私と同じ志しを持っている!貴方はしたくないのでしょ?戦争を、支配を、隷属を。でも、しなくては行かない、なぜならば貴方は強い帝王なのだから。」
「っ、お前に何が…!!」
アナスタシアは拳を固くし、力を入れすぎて爪が手に食い込み血を流す。
「手を組みましょう、魔王アナスタシア!私は全ての者を導く王となり、全ての種族が平等に笑い合える、助け合える世界を創りますわぁ!私には貴方を優しい王様にできる力がある!!強い帝王ではない、真に民を守る優しい王様に!!」
アリアはアナスタシアがなにか言おうとするのを遮って手を伸ばしてそう言った。
なんなのだ、この少女は。
私のなにを知っているというのだ!!
手も汚したこともないだろう綺麗な手で、汚い世界も見たことがないだろう綺麗な瞳で!
どうしてこんなにも私の心を動かすことができるのだ!!
もし、私がこの同盟に加入したら三大王バーバルは私と帝国を許しはしないだろう。
しかし、あぁ、ダメだ。もう私の心は動いてしまった。
「そうだな、お前の話がすべて実現し、本当だったなら、私はドワーフを解放しよう。」
アナスタシアは手の力を緩め、観念したようにそう言った。
「お約束できますね?魔王アナスタシア様。」
アリアは笑顔でアナスタシアに尋ねる。
「あぁ、この命に誓って。」
アナスタシアは鋭い眼光を持って答えた。
「では、同盟には加盟してくださるということで!!」
アリアは満面の笑みで手を広げた。
「今ここに、アリア様を盟主とする世界同盟の第一国が加入した!!」
ナラはそう言ってここに世界同盟の第一国が加入したことを宣言した。
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