第197話 ルーファの本気!
それから俺たちは馬を休ませながら急いで大森林に向かう。
大森林を抜け、旧アルモルド領までいけばあそこにはまだ亡き魔王アルモルドのアンデッド兵が大量に彷徨いている。さらに魔王アルモルドは魔王ブーモルが倒されたあとオーク兵を大量にアンデッドにもしている。
だから、今だにアンデッドの大軍を抱える魔王アルモルド領は魔王アルモルド亡き後もどこからも侵攻を受けていないのだ。
魔王アルモルド領までいけば少数で行動するこちらが圧倒的有利であり容易に逃げ切れるだろう。
「アリ、大丈夫かな?」
リーナは心配そうにアリのことを思う。
「アリなら平気だ。いくらドルジェ将軍といえども本気で行方をくらませて逃げるアリを追うことは難しいだろう。逆にアリは我々といるより1人でいたほうが安全なくらいだ。」
アナスタシアは自信を持ってそう言った。
「そうだな、それよりも今は自分の心配をするべきだ。」
ジンはそう言って後方から追いついてきたドルジェ将軍を指差した。
「くっ!もう追いついてきたのか。」
アナスタシアは苦虫を噛み締めた顔でそう言った。
「仕方ない、敵はあの人類最強の大将軍ドルジェだ、出し惜しみはしてられない。精霊魔法を使う。少しは足止めできるだろう。」
ルーファはそう言って集中して魔力を練り、精霊と交信し始める。
「へぇ、何をする気だ?」
ジンはワクワクしたようにルーファを見る。
「風の精霊達よ、我が身に宿れ。精霊化!!」
ルーファの周りに薄緑の無数の光が周りだし、風が吹き始める。無数の緑の光たちは次々にルーファの中に吸い込まれていき、ルーファは光り輝く。
ルーファの身体は薄緑に淡く光り、目の色も薄緑に変わる。風を纏い、空に飛び上がる。
「風を自在に操る風の精霊の力、その力を味わえ。コール・グレーターサイクロン!!」
凄まじい暴風が吹き荒れ、巨大なサイクロンを呼び出した。
「なんだこれは!?災害じゃないか!!これほどの魔法…敵にはなにがいるんだ!?退避!!急げ、死ぬぞ!」
ドルジェはそう言って隊を引き連れて退避する。
「すごい…」
リーナは空に浮かんでいるルーファを見上げながら素直にすごいと思う。リーナも風の魔法を使うが、自身が扱える魔法と次元が明らかにちがう。
「こんな規模の精霊魔法を使う者などエルフの国の大精霊術師のポッシルしか…いや、ポッシルでもこんな規模の精霊魔法なんて…ならば、あのエルフは、万能?エルフ史上最高の天才と言われてる万能か!?あのエルフが!?嘘だろ?」
アナスタシアはあのエルフが万能の二つ名を持つ大精霊術師であることに辿り着き、驚愕に目を見開く。酒場で飲んだくれていたエルフが秘匿にしている王女でありエルフ史上最高の天才である万能であったからだ。
エルフの王女、万能の話は正直話が盛られていると考えていたが、聞いていた話以上の実力であり、アナスタシアは驚いた。
「これはすごいな。なんだ、攻撃は得意じゃないと聞いていたが、すごい威力じゃないか、ルーファ!」
ジンは楽しそうにそう言って拍手をする。
「うぅ、気持ち悪い。悪いがもう私は使い物にならないぞ?あのサイクロンも長くは持たない。早く逃げよう。」
ルーファはゆっくりと空から降りてきて自分の馬に乗り直すとぐったりとした。
「な、なにがいるんだ。あの規模の魔法、三大王の最強魔法クラスだぞ?」
ドルジェの軍はなんとかサイクロンから逃げ切り巨大なサイクロンを見つめている。
「ど、どうしますか?追いますか?」
兵の1人が少し怯えながらそう言った。
無理もない三大王クラスの超常的な力を前にしたのだ。ただの人ならば今すぐにでも逃げ出したいくらいだろう。
「見ろ、あのサイクロンも先ほどの大きさがない。もうすぐ消滅するだろう。敵はまだ逃亡している。つまり我らを迎え撃つほどの戦力はないのだろう。だとすれば、あの魔法もそう何発も打てるものではないだろう。いや、もう打てないだろう。追うぞ、もうすぐで大森林だ。伏している兵と挟撃し、魔王アナスタシアを討ち取る!!」
ドルジェ将軍は冷静に分析して、追撃を続行する。
それにしてもあの魔法を放った者はなにものだったのだろうか。
空に浮かび上がってあの魔法を放った者は遠くてよく見えなかったがエルフのようにも見えた。
ならば、あの大精霊術師のポッシル?いや、ポッシルはエルフの国に今いるはず、それに飛んでいたのは女性だった。
…今行方をくらませているという王女、万能か?
まさかエルフの国は魔王アナスタシアを支持しているのか?
今の情報だけではなにもわからない、まぁ、どちらにせよ次の挟撃で捕らえられるだろう。
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