第194話 大王
「貴方たちはどう思う?」
ナラはそういってこの場に集まった将達に尋ねた。
ナラの声かけに最初に立ち上がったのはガータだった。
「我が王ブーモル様は暴虐の限りを尽くしましたが、それと同時にオークの黄金期を築き上げました。誰もが我らを恐れ、我らも好き勝手が許された。私もオークのために戦った。しかし、それはオークだけの繁栄の道。アリア様と出会った今はアリア様と共に一つの民となりすべての者との繁栄を望みます。俺はアリア様が世界の王として君臨し、我らを導いてくださることを信じています。我らを救ってくださった大王アリア様のため粉骨砕身仕える所存。全てのものに平和と繁栄を。」
ガーダは席を立ちアリアの前に跪いた。
次に立ち上がったのはフルモンド・アーガスト。
「魔王アルモルド様は素晴らしい王であった。死してなお、私に役割を与えてくださった。死を振り撒くという役目を。しかし、アリア様は私に救う役目を与え、私を生かしてくれた。死んだ我が身を一つの民として扱い、私に生きる道を示した。我が道はアリア様の栄光へと繋ぎたい。我が魂は大王アリア様へ捧げます。指先すら動かなくなるその時までアリア様のために救う剣となりましょう。全てを治めてください、全ての者はアリア様の民へ。全てのものが死に怯えることのない世を。」
アーガストはそう言ってアリアの前にきて跪く。
アーガストの次に立ち上がったのはアドネス。
「我が国は滅ぼされた。竜王ダイヤ様も殺された。我らは生き残るために龍の誇りも忘れて縋ってしまった。それは龍にあらず。我らを空の覇者として扱い、その王となったアリア様に我らはその誇りと我らの炎を捧げます。すべての空を支配してください。我らにどこまでも行ける空を、全ての者に尊厳を。」
アドネスはそう言ってアリアの前に跪く。
最後にアリアの元に歩んできたのはナラだ。
「ここにいる英傑はあなたをすでに貴方を王として認め覚悟を決めているみたいだよ?私はまだ貴方のことをよく知らない。でも、これほどの者達が貴方が王に相応しいと、全てを従えるに値すると認め、貴方のために命をかけている。ならば、それは私もあなたを認めるには十分な理由となる。私も貴方に仕えましょう。誰と友達になってもいい世の中を、友達とどこにでも遊びに行ける世界を。」
ナラもそう言って席を立ち、アリアの前に跪く。
「わ、私は…他の国を侵略などは致しません!従える為に戦いを起こしたりも致しませんわぁ!でも、皆さんの期待には精一杯努力してお応えします。だから、これからも皆さんの力を私にお貸しください!」
アリアにはまだこの者たちの放つ重圧に、覇気に耐えられる程の度量はない。しかし、それでも気丈に彼らの期待に応えようと小さな胸を張る。
「もちろん、それで構いません。しかし、我らに更なる軍拡のお許しをください。世界は今、非常に不安定です。侵略しなくとも侵略されることは容易にあります。その時に打ち勝てるだけの力が我が国には必要です。」
ガーダがそう言ってアリアに進言する。
「わかりましたわぁ。更なる力をつけて国の防衛に努めてください。」
「「「御意!!」」」
ガーダ、アーガスト、アドネスはにやりと笑って返事をする。
その言葉を待っていたと言わんばかりに。
「それで、この国ってなんで名前なの?」
ナラは首を傾げてそう言った。
皆が顔を見合わせる。そう、アリアの国はまだ名前が決まっていなかったのだ。
発展が目まぐるしく名前もつけるまでもない集まりから国と呼んでも遜色ないくらいまでが早かったから名前をつけていなかったのである。
「エリシュオン。大王国エリシュオン。それがこの国の名前だ。どうだアリア?いい名前だろう?」
1人だけ椅子に座っていたスケさんが立ち上がりカタカタと顎を鳴らして笑いながらそう言った。
「エリシュオン、いい名前ですわぁ!ありがとうございます、スケさん。では、私たちの国の名前は大王国エリシュオンと定めますわ!!そして、雌伏の時は終わりとしますわぁ!周辺諸国との国交を開き、他国と協働して本格的に国防を固めます!」
この場にいる全てのものがが歓声をあげて喜んだ。
もうアリアの国はどこかの勢力が攻め込んできても揺るがないほどの戦力は募った。
ただの避難キャンプではなく、世界に国として大王国エリシュオンを知らせる時がきたのだった。
「待たれよ。」
アーガストは先ほどの会合が終わったあと、何処かへ向かっていくスケさんを呼び止めた。
「ん?なんだ?」
スケさんはそう言って振り返る。
「貴様は何者なのだ?」
アーガストは剣に手を当てていつでも剣を抜けるように警戒してスケさんにそう尋ねた。
「見ての通りスケルトンだろ?」
スケさんは見てみろと言わんばかりに手を広げてアーガストに答える。
「いや、違う。貴様はスケルトンなどではない。うまく隠しているようだが、貴様の纏うその覇気、その死の気配はスケルトンのそれではない。かと言ってスケルトンを遥かに超える力を持っているわけではないチグハグさ。同じアンデッドだからわかる。貴様はただのスケルトンではない。」
「俺はアリアのテイムモンスターだ。それ以下でもそれ以上でもない。」
「そうだな…まるでスケルトンの身体に化け物が無理やり憑依している感じ。まさにその感じだ。」
アーガストは目を細めてスケさんから得られた情報で自身の導き出した答えをスケさんに伝える。
「…おっと、思ったより感がいいな。」
スケさんはカタッと骨を鳴らし驚いた。
そして、不気味にアーガストを見つめている。
「貴様はアリア様に俺たちより前から仕えている。そしてアリア様は貴様のことを一番信頼している。ゆえにわからない。敵か味方か?」
「そうだな、味方よりの傍観者だ。だからなにか邪魔をするとかはない。安心してくれ。」
「…そうか。」
スケさんの答えを聞いてすこし警戒心を解く。
「アーガスト、これは内緒だよ。もしも、バラしたら…殺す。」
スケさんはそういうと手をアーガストの方に向けて本来の死のオーラをほんの少しだけ解放し、アーガストに放つ。
「はっ!?くぅ、これは!!?神に類する者か?」
それだけでアンデッドであるはずのアーガストですら感じたことのない濃密な死のオーラに身が固まった。
「さぁね?さぁ、これから忙しくなるだろ?俺に構っている暇はないよ。あははっ!」
スケさんはそういってカタカタと笑いながらどこかへと消えていった。
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