第187話 依頼を受けるかどうか
「俺はこの依頼は受けようと思っている。2人はまだ反対か?」
俺はルーファとリーナにそう言った。
「私は反対だ。アリに殺しをさせていた魔王なんぞ助けてたまるか!」
ルーファはアナスタシアを睨め付けてそう言った。
「私もやっぱり反対。ドワーフの国を滅ぼしてドワーフ達を奴隷として扱っている王を助けたくはない。」
リーナも反対のようだ。
「なるほどな、でも、それだとアリが死ぬぞ?」
「アリが死ぬ?」
ルーファが首を傾げる。
「あぁ、魔王を殺せるかもしれないんだ。各国は今、血眼になって魔王アナスタシアを探しているだろう。もちろん、ルーも。アナスタシアもわかっているから強力な味方を求めてクーリッヒに来た。」
「…依頼をするにも大きなリスクを伴う。なんどもこんな綱渡りの依頼はできないし、2人で帝国に向かうにしても戦力が足りなくて追っ手にやられる。」
「ルーファ、そうだ。やっと、酔いが覚めてきたな。」
「…アリには死んでほしくない。貴方はどうしてドワーフの国を滅ぼしたの?どうしてドワーフを奴隷にしたの?」
リーナはそう言ってアナスタシアに聞いた。
「私は世界がこうなることを予想していた。いつか必ず戦乱の世が来ると。そのために私は私の帝国を強くしなければならない。犯されないように、滅ぼさないように、勝てるように、例え、相手が三大王の国だとしても。そのためには力が必要だった。私が力を得るために目をつけたのは我らのもつ魔法とドワーフのもつ技術力、それを合わせた魔導工学。これはかねてより私はドワーフに話を持ちかけていたのだ。だが、ドワーフたちは己の技術のみを追い求め、私の提案はドワーフの議会で難色を示され続けた。」
アナスタシアは淡々と話し始める。
「だからって力で従わせるの?」
リーナは鋭い目つきでそう言った。
「私は軍拡を進めなければならなかった。私はブーモルのように要所に国を構え、強大で大軍を従えているわけでもない。シャールブのように狡猾で凶悪な悪魔達を従えているわけではない。ミンクやジンジュのような不落の王国を構えているわけではない。アルモルドのように思慮深く不死の軍勢を従えているわけでもないし、モグのように圧倒的な経済力があるわけでもない。我が帝国は魔王達の中で最も危うく、脆弱であると言えた。もしも、三大王同士が戦うような世界を二つに分つ戦いが始まれば真っ先に我が国は狙われるだろう。手をこまねいている時間も余裕も私にはなかった。」
「なんで、戦いが起こるとわかっていたの?」
「バーバルがダイヤを殺す気満々だったからだ。様々な調略を龍の国に仕掛けていた。まぁ、そのほとんどが龍妃によって防がれていたがな。まともに戦ってもバーバルはダイヤに勝てない。そもそも三大王同士の戦いなどルーが許すわけない。そういう絶妙なバランスを保っていた。なにかがキッカケでいつ崩れてもおかしくなかった。しかし、そのきっかけは絶対に近いうちにくる。私はそう考えていた。そして、私は自国の私に反対する貴族達をアリに始末させ、ドワーフの国への侵攻に至った。もちろんドワーフの国の抵抗も激しかったが、もともと軍事力に乏しいドワーフの国は敵ではなかった。周辺諸国は私がバーバルの派閥だと分かっているし、バーバルにも協力してもらって睨みをきかせてもらったから周辺諸国からの援軍はなかった。ドワーフを取り込んだ我が帝国の発展は凄まじく、空を飛ぶ船を開発するにまで至った。」
「それが、貴方がドワーフの国を滅ぼし奴隷にした理由?」
「そうだ。私と私の帝国のためドワーフの国を滅ぼし私は力を得た。罵声を浴びせたいなら言えばいい。非難するならすればいい。私は帝国が滅ぼされないために強くするために他者を滅ぼすことを厭わない。私は、いや、我は魔王である。」
そう言ったアナスタシアは確かに魔王の覇気を纏わせていた。
「いいねぇ、お前の悪には芯がある。嫌いじゃない。」
俺はそう言って笑う。
「白銀…たくさんの人がこいつに殺されているんだぞ。」
どこか楽しそうな俺をルーファが注意する。
「そうだ、だからこいつは自分の行いは正当化していない。悪だとわかっている。それでも、こいつはその手段を使うんだ。私は悪の権化である魔王なのだからと。」
俺はアナスタシアを見ながらそう言った。
「まるで私が全部悪いと言いたげだよね。魔族は悪いのではなく、私が悪王なのだと。私が魔王だからなのだと。いいよ、依頼受けるよ。私はアリに死んでほしくない。」
リーナも少しアナスタシアという人物がどういう人なのかわかったのだろう。納得はしていないが渋々依頼を受けると承諾した。
「ふん!納得はしないが、死ぬよりお前は生きていた方が苦しみそうだ。力を貸そう。だが、帝国に帰ったらもうアリとは関わらないでほしい。それが条件だ!」
ルーファはアナスタシアに指差してそう言った。
「クローバーよ、依頼を受けてくれてありがとう。報酬は十分に支払うことを約束する。そして、アリとはもとより関わるつもりはなかったのだ。この依頼が終わればもちろん私はアリと関わることはないだろう。」
アナスタシアはそう言って頭を下げる。
「アナスタシア様…私は。」
「アリ…」
2人は悲しそうに顔を向き合わさする。
2人とは反対に楽しみにしている者が1人いた。
「帝国まで一直線で行くには、大森林を通らないと行けないな。じゃあ、あの子の国を通るのか。ふふっ、楽しみだなぁ。」
ジンは人知れずワクワクと胸を高鳴らせた。
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