第183話 ナラ対リーナ
「どちらかが敗北を認めるか、戦闘不能になったら敗北でいい?」
リーナはそう言ってナラに確認する。
「うん、いいよ。」
ナラはもちろん承諾する。
「…武器は?」
リーナはいつまで経っても棒立ちして構えようとしないナラにそう言って質問する。
「ん?いらないよ。」
ナラが首を傾げて不思議そうに答えた。
「そう、後悔しないでね。」
リーナはナラを睨みつける。
「じゃあ、大けがとかするなよ。はじめっ!」
俺はそう言って試合始めのの合図をする。
「見ててジン。私の成長を。風魔!」
リーナは風の斬撃を体に纏う。
「パラライズ!んー、通らないか。意外に厄介かも。」
ナラは麻痺の魔眼を飛ばすが風魔に跳ね返された。
へぇ、もともと風の魔法を纏わせて戦っていたけど、風の斬撃も加えて近づくものを切り裂く攻撃力と魔法防御力を上げているのか。ナラの魔眼の力も通さないとはなかなかだな。
「魔眼!?」
リーナはナラの怪しく光った眼を見て驚く。
「その結界は長くは持たなそうだね。」
そう、風の斬撃をも纏う風魔は強力だが魔力消費が見るからに激しい。長くは持たないだろう。
「すぐに決めるから問題ない。」
リーナはそう言って駆け出す。
「じゃあ、これはどうかな?」
ナラは指先から蜘蛛の糸を出してリーナの前に糸を張る。
「え!?なにこれ、切れない?」
ナラの蜘蛛の糸は強靭だ、風魔やリーナの剣では切ることは叶わないようだ。
「さぁ、リーナの結界はどれだけ持つかな。」
俺は楽しそうにそう言って試合を見守る。
「一気に決める!!疾風!」
リーナは走り出すときに小さな竜巻を作りすさまじいスピードでナラに迫る。
「速いね。でも、糸は間に合った。」
ナラは目の前に蜘蛛の巣を放つ。
「ふん!」
リーナは身に纏っている風の魔法にさらに魔力を流し蜘蛛の巣を吹き飛ばすが、動きが止まってしまった。
「この距離なら!突風!!」
リーナは動きは止まってしまったが、手のひらに風の力を集め圧縮し凄まじい力をナラに放とうとする。
「その隙は見逃さないよ。パラライズ!!」
手のひらに風の力を集めてしまったため全身を覆っていた風の力が弱まった。その隙をナラは見逃さず魔眼を放った。
「ガハッ!!」
ナラはかなり強めに魔眼を放ったようでリーナの心肺が停止し、リーナが倒れ込んだ。
「やりすぎだ。」
俺はナラにそう言って注意する。
「あっ、ごめんね。」
ナラはすぐに魔眼の力を解くがリーナは起き上がらない。
ナラはリーナに急いで駆け寄ってがぶりとリーナの肩にかみつくと強心作用のある毒をリーナに流す。
ドクンッ!ドクンッ!
「はぁ!はぁ!」
リーナは意識を取り戻し起き上がる。
「よかった、思ったより強かったから加減できなっかた。ごめんね。」
「いや、私の負け。ありがとう。」
リーナは項垂れるようにそう言った。
「リーナ、ケガをするぞって言ったのはナラに言ったんだ。リーナがすごい努力をしているのは知っている。本当に強くなったな。俺が教えたことをすべて吸収している。」
リーナは俺たちが飲んだくれている間もずっと迷宮に潜ったり依頼をこなし研鑽を続けていた。
まさに理想のAランク冒険者と言えるだろう。
「ジン…ありがとう。ずっと見てほしかったんだ。私の成長を、ジンに。」
リーナはうるうると目に涙をいっぱい貯めてそういった。
「ナラどうだ?強かっただろう、俺のチームの前衛は。」
「うん、ジンさんほどでなないけどかなり強かった。」
ナラはそう言って笑顔で答えて、リーナと握手を交わした。
リーナとの試合を終えた頃にはもう日が暮れていた。リーナとはその場で別れて、俺とナラは街でどでかいリュックを買って、沢山の食べ物を買った後、門に向かった。
「ジンさん今日はありがとう。楽しかったよ。じゃあ、私はこれからジンさんに教えてもらったところに行ってみるよ。」
ナラはそう言って沢山の食べ物をどでかいリュックに背負って街の門で俺にそう言った。
「これから行くのか?もう日が暮れる明日行けばいいだろう?」
「ううん、別に疲れてないからこのままいく。」
「明日になれば馬車とかも出るぞ?」
「歩いて行けるから大丈夫。それにあんまり急いでないし色々寄り道しながら向かっていく。」
「そうか。外の世界は楽しいぞ。たくさん楽しんでくるといい。」
「うん!またね、ハシャさん。今日も楽しかったよ!」
ナラは美しい笑顔でそう言うと街を出て歩き始めた。
その美しい笑顔を見てだれもあの蜘蛛の化け物を連想する者は1人もいないだろう。
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