第182話 リーナとナラ
「むぅ!そんなのわかるわけがない!」
ナラは俺の横を歩きながら不機嫌にそう言った。
「少しからかってみたかったんだ悪いな。」
「ハシャさん、あんまり試す真似はしないでほしいな。ドキドキする。」
「別に試しているわけじゃないんだが。あと、俺がハシャだということは絶対秘密だ。ここではジンと呼んでくれ。」
「わかったよ。ジンさん。」
「それで、どこに連れていけばいいんだ?」
「ジンさんにも人間のお友達っているの?」
「もちろん、いるぞ。」
「じゃあ、その人達を紹介して。」
「えっ、今日はちょっとやばいかも。」
ジンは頭に浮かべた2人の今日の予定を思い出してそう言った。
「なんで?紹介できないの?」
「いや、いいけど。まぁ、いいか。」
そう言って俺はギルドの酒場にナラを連れて行く。
そしてそこにいたのは朝から飲んだくれていびきをかいて寝ているAランク冒険者の2人。
アリとルーファだ。
「…これがジンさんのお友達?ほんとに?」
明らかにだらしない二人を見てナラはジト目でジンを見る。
でも、少し警戒はしている。さすがナラ、2人の強さのなにかを感じ取っているのだろう。
「今日は朝から飲むんだって二人が意気込んでいたからな。こうなっていると思った。あっ、リーナよかった!」
たまたま依頼から帰ってきて酔いつぶれた二人を遠目で見てため息をついているリーナを見つけて俺は声をかけた。
「ジン、その子は?」
リーナはこちらに来てナラを見る。
「私はナラ。あなたはジンさんのお友達?」
ナラはリーナに挨拶してそう問いかけた。
「お友達?まぁ、そうかな。私はジンと同じパーティークローバーのリーナです。」
リーナはそう言って頭を少し下げる。
「リーナ、こいつは俺の知り合いのナラだ。よろしくしてくれ。」
「よろしくね、ナラさんは冒険者ですか。」
リーナは笑顔でそうナラに話しかけた。
「うん、昨日なった。」
「ナラは冒険者になったばっかりだがかなり強いぞ。」
ジンはナラの背中に手を添えてそう言った。
「ふーん、私よりも?」
「当たり前、あなたはあの勇者よりも弱そうだし。」
ナラのその発言にその場が凍りついたのがわかる。
「勇者って勇者ルーカスのこと?そう、あなたは勇者ルーカスより強いっていうこと?」
リーナは少しムカつきながらそう質問する。
「この姿でもあの程度ならば遅れは取らない。」
ナラはなんでもないようにそう答えた。
「すごい自信だね。」
リーナの目はもう敵意を抱いている。
「試してあげようか?」
そんなリーナに油を注ぐかのようにナラは挑発する。
「やめとけよ、ケガするぞ。」
ジンが間に入ってそう言った。
「っ!いいよ、試合をしよう。ジン、私は強くなるためにずっと努力してきている。私と依頼に行ってくれないから知らないと思うけど、私はあの時見た貴方を目指して強くなっているよ。私はそこの飲んだくれている二人とは違う。」
ジンのその言葉を聞いてリーナはジンを睨め付けるようにしてそう言った。
「あっ、ちが、そういう意味じゃなくて、」
ジンは少し戸惑ってなにか言おうとしたが、言い切る前にナラが話し始める。
「なにを言っている?私はあなたよりもそこの二人の方が脅威に感じる。一人は私たちと同じ捕食者の気配をまとっている。もう一人はなんだかわからない。よくわからない気配がたくさん付いている。よくわからない者とは戦いたくない。」
ナラは酔い潰れている2人を見てそう言った。
「言ってくれるね。つまり、私には脅威を感じていないと?」
「そうだね。あなたは大丈夫そうだ。」
「準備をして練習場に来て。ジンも見ていてほしい。私を。」
そう言ってリーナは練習場に向かっていった。
「ふふ、ジンのお友達が遊んでくれるみたい。」
ナラは楽しそうにジンにそう言った。
「少し違うと思うが、まぁ、面白そうだからいいか。ナラ殺しちゃダメだぞ。」
「心配しないで、遊ぶだけだよ。」
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