第180話 浮気
「アイリス様!!こっちです!見てください、レオンの野郎が美人の新人冒険者を連れ回しているでしょ!!」
そう言って1人の女冒険者が入ってきて、その後に眉間に皺を寄せたアイリスが酒場に入ってきた。
「えぇ!?」
レオンは驚きの声を上げる。
「ほう?レオン、これはどういうことだ?」
アイリスは怒りを抑えたような声でレオンにそう尋ねた。
「ア、アイリスさん!?違うんです!!受付の人に頼まれて教えていただけなんです!」
レオンはなぜだか焦ってアイリスにそう答えた。
「まぁ、お前もB級冒険者だ。後輩の育成も役割の一つだしな。」
アイリスはそうって目をつぶってそう言った。
「よかった!変な誤解されてるのかと思いました。」
レオンはほっとしたように笑顔でそう言った。
「で、今日はどこに連れて行って貰ったんだい?」
アイリスは目を開いてナラの方を向いて作ったような笑顔で優しくナラに聞いた。
「ん、鍛冶屋と道具屋、ポーション屋とか街の色々なところに連れて行ってもらった!」
本当に楽しそうに笑顔でナラは答えた。
「ほう?」
アイリスは青筋を浮かべてレオンを見る。
「待って!ナラさんダンジョンは!?」
レオンはナラに焦ってそう聞いた。
「ん?ダンジョン?ちょろっと行ったけど、街の方が楽しかった。また連れて行って欲しい。」
ナラはまるでダンジョンなんてついでだよとばかりにそう答える。
「ほうほう、つまり街でのデートがメインだったわけだ。」
アイリスはもう怒りを隠そうともせずレオンに尋ねる。
「デート?まぁ、街でのほうが楽しかった!レオンもとても親切だった。」
ナラは追い打ちをかけるようにそう言った。
「いやいやいやいや!ダンジョンがメインだったでしょ!?ナラさん思い出して!!」
レオンは汗をダラダラかきながら焦ってそういう。
「レオン、B級冒険者は新人教育を指導していく世代だが…私が思っていた指導とはなにか違うみたいだ。どういうことかな?私の部下からレオンがB級冒険者と言う身分を利用してかわいい新人冒険者をたぶらかしているという報告が届いて、まさかと思って来てみれば…レオン、残念だよ。」
アイリスは失望したような暗い目でレオンを見つめる。
「違うんです!待ってください、アイリスさん!」
レオンは今にも泣きそうな顔でアイリスに弁明する。
「そう、レオンはこの街に来たばかりの右も左もわからない私に街を色々案内してくれた。とても親切。」
ナラはまた悪いタイミングで追い打ちをかけていく。
「タチの悪い冒険者の常套手段ですね。田舎から出てきた若い冒険者の娘をこうやって誑かすんです。レオンさん見損ないましたよ。」
アイリスにチクった女冒険者が蔑んだ目でレオンを見る。
「違う違う!!受付の人に頼まれたんです!」
「ほーう?冒険者の受付は食事まで斡旋するようになったのか?」
アイリスも蔑んだ目でレオンを見る。
「なんか見たことあるような?この人なかなか強そう。」
ナラはマイペースにアイリスを見ながら考え始めた。
「ナラさん当たり前だよ、この人はS級冒険者でS級クランのフロントライン クランリーダーのアイリスさんだよ。ほんとにすごい人なんだ!」
レオンはナラにそう伝える。
「ふーん。」
ナラはあんまり興味はなさそうにそう答えた。
「ふん、今更私のご機嫌を取ったところでもう遅いぞ。」
「い、いや、そういう訳では…」
「あっ、そうだ。泊まるところがない。レオン、今日泊め…」
ナラがまたとんでもないことを言おうとする。
「宿屋もご紹介します!!!」
レオンがもう勘弁してくれとばかりにナラに頭を下げて声を張ってそう言った。
「うん、それでもいい。ありがとう。」
ナラはそう言ってレオンにそう言った。
紹介された宿屋に泊まってナラは今日周ったお店や街を思い返す。
色々な匂い、声、明かり、熱気、味。
どれをとってもとても刺激的で楽しかった。人間もとても私に親切にしてくれたし、楽しませてくれた。
私たちの巣にはないものがたくさんあった。
そして、ナラは思う。
前にダンジョンから出た時、たくさんの建物を壊して人を殺した。
壊した建物はどんな建物だったんだろう?
殺した人はどんな人だったんだろう?
後悔や後ろめたさは全くない。我らの巣に踏み入ったのは人間が最初なのだから。
犯すならば犯される覚悟を持たなければいけない。
でも、ナラは少しだけもったいなかったかなと思って眠りについた。
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