第175話 蜘蛛を狩る蜘蛛
—そう、だからこの程度の戦力じゃむりだよ。あっ、やばい。あれロイヤルナイトスパイダーだ—
森の中を進んでいると隊列を組んだナイトスパイダー達と紫色の鎧を着込んでいるような姿のロイヤルナイトスパイダーが姿を現した。
「くっ、すごい数ね。でも、これくらいなら私達がいる!押し通りましょう!」
ロイヤルナイトスパイダーはBランクモンスターだし彼方の方が数が多いがこちらには勇者パーティーという戦力がいる。それに猛将だっている。
この戦力ならあのくらい勝てるとマーミヤは思った。
—違う、もちろん相手の数もやばいけど、もっとやばいのはロイヤルナイトスパイダーがいる。アイツは族長かマザースパイダーの言うことしか聞かない。つまり、ナグラ様かマリラ様のどちらかかその両方がダーラの味方をしているってことになる—
「えぇ!?どうするの?」
ベネットはそう言って不安げに言った。
—少し話してみる。おい、お前。私たちはナラ様のしもべだ。そこをどけ!—
アークスパイダーはすごく高圧的にロイヤルナイトスパイダーに言った。
—退かぬ。ここを通さない—
—ナラ様に逆らうということか!?貴様、誰のしもべだ?—
—我らの母はナグラ様。ナグラ様より侵入者を生かして返すなと言われている。だから通さない。そいつらを置いてけ。お前たちもナラ様のしもべならば…—
—我らはナラ様の命に従うのみ!!ナグラ様の手の者だった。交渉決裂—
「もうちょっと穏やかに交渉できるといいね。なら仕方ない倒して通るよ!」
アリルはそう言って杖を構える。
「ロイヤルナイトスパイダーは俺がやろう!少しは役に立たないとな!」
猛将 フェリルはそう言うとアークスパイダーの背から飛び降りる。
凄まじい速さでロイヤルナイトスパイダーに向かっていき、拳を頭に叩き込んだ。
ギィ!?
ロイヤルナイトスパイダーの頭は地面にめり込んだ。
「私も剣はないけれど、雑魚くらいなら相手できます!」
ベネットもそう言ってアークスパイダーの背から降りて周りの敵の蜘蛛と戦い始める。
「強い!さすが猛将だぜ!!うぉー!!俺も負けてられないな!」
ドルフもそう言って吠えた後、周りの敵の蜘蛛に向かって行った。
「僕たちも続くべきだね。ドラゴンブレス!!」
アベリオはそう言うとアークスパイダーの頭に移動してそこから敵の蜘蛛の集団にドラゴンブレスを浴びせる。
「そうだな。ストーンショット!!」
マーミヤも自分の周りに石を浮かべて敵の蜘蛛に撃ちまくる。
「みんなの力を底上げします!テンションアップエリア!ストレングスエリア!」
アリルが味方の蜘蛛も含めて範囲魔法のバフをかける。
「さぁ!僕も剣を抜こう!ブレイブパワー!ブレイブソード!!」
ルーカスは新たに授かった勇者の力を発動する。
ブレイブパワーは文字通り勇者の力だ。ルーカスの思いの強さを力に変え、逆境を打ち破る力を与える。
ブレイブソードはその勇者の力を剣にも宿し敵を撃ち倒す。
勇者達の力は凄まじくBランクモンスターと数だけ揃えた蜘蛛たちには止められなかった。
—止まりなさいニンゲンども—
ナラよりも一回りもニ回りも大きい凄まじい大きさの蜘蛛、マザースパイダーが現れて道を塞ぐ。
—あなたは、マリラ様!?そんな、ナグラ様だけではなくマリラ様もナラ様と敵対するのか!?—
「これは…かなり手こずりそうだな。だけど、この戦力がいれば絶望的ではない!!」
フェリルがそう言って構える。
—ふふっ、違うよ。私はお前たちニンゲンどもに礼を言いに来たんだ。ありがとう。逃げ道にいたナグラの手の者は私と私のしもべが片付けて逃げ道を確保してある。さぁ、森の外へと行くがいい—
「助かった!味方ってこと?」
アリルが安心したようにそう言った。
「あぁ、本当にありがとう!!」
ベネットも笑顔で巨大な蜘蛛に礼を言う。
—いいえ、礼をいうのは私の方。ナグラがこちらに向かって来ている。さぁ、私がここで足止めしておいてあげるから早く行きなさい—
「礼だと?今はそれどころじゃないか、わかった!みんなここはマリラ殿に任せて森を脱出しよう!」
ルーカスはマリラの言い方になにか引っかかったが、後ろから凄まじい音を立ててくる者に急かされて森の脱出を優先した。
「ナラ、そういうことだったのか。この恩は忘れないぞ。」
フェリルは礼の意味がわかったのか、誰にも聞こえない声でそう呟く。
今にも飛び出して攻撃してしまうくらいマリラこことを睨みつけて歯を食いしばった。
—マリラ!!貴様!ニンゲンどもを逃したな!?このままではナラ様が罰せられてしまうではないか!—
ナグラは怒号を上げてマリラを責め立てる。
ナグラは侵入者を逃がさないために森全域に自らのしもべを放った。
そのため、普通マザースパイダーは強力なロイヤルスパイダーを多数侍らせて行動する。しかし、今のナグラには数体のロイヤルスパイダーしか連れずにこの場に来ていた。
—あぁ、ここまでニンゲンどもに巣をめちゃくちゃにされ同胞を殺しまくったニンゲンを殺さずに逃したんだ。そして、そのニンゲンたちを招き入れたのもナラ様。ふふっ、罰せられて当然ですよねぇ—
—それが狙いで!?まさか、ダーラを唆したのもお前か!?—
—あぁ、ダーラにあの数の同胞を動かせる力はない。私の子たちを貸してやったんだよ。同胞の仇が来た、私が協力してやろうかと—
—どうしてそんなことを?—
—まさかあの冷徹なナラ様がニンゲンどもを体を張って逃すとは思わなかった。その結果、同胞を多く死なせた、もしかしたら、もうダーラも殺してるんじゃないかしら?ふふっ、その罪は重いと思わない?あの強くて賢いナラ様が私の罠にかかって終わるのだ。なんという愉悦、うふふっ、ふはは!—
—…このことは族長に報告する。っ!?まさか、私も!?—
そう言ってナグラは振り返り、戻ろうとするがそれはもう叶わない。
ナグラは森全域にしもべ達を送り出してしまったため、数匹のロイヤルスパイダーしか侍らせていないのに対して、マリラは元々ここで侵入者を追ってきたナグラを仕留めるために十分な戦士たちを配置していた。
その戦士たちがワラワラと出て来てナグラたちを取り囲む。
—当たり前だろう?お前はニンゲンを逃がさないために立ち向かい殺された。そういうことなんだから—
ふふっ、やっとナラ様が私の罠にかかった。
私の罠にすぐ気づいていたのに、わざわざニンゲンのために私の罠にかかりにくるなんて本当に愚かだ。
そして、ナラ様は私を殺せない。ナグラが死にダーラも殺されているか戦闘不能だろう。ここで私までも殺してしまったらこの森を守る戦力がいなくなってしまう。
ただ指を咥えて族長を待つしかないないのだ。
うふふ、あははっ!!
さぁ、族長の帰りが待ち遠しい。
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