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第173話 お友達

「ベネットちゃん、入るよー。」


「ナラ!もうさっき血を吸ったでしょ!!ハシャさんとの約束は守って貰うからな!って、兄さん!?と誰ですか?」

そう言ってナラに怒っていたベネットは担がれているファリルとルーカスたちを見てそう言った。


部屋にいたのは整った顔立ちにフェリルと同じの白銀の毛並みに透き通る肌。目の色も綺麗な白銀色で神秘的にも感じるほど綺麗な女性だった。


「ベネット!ぐぇっ。」

フェリルはそう言って繭の中で暴れる。

暴れ出したのが嫌だったのかナラは担いでいたフェリルを床に放り投げた。


「兄さん!ナラ、兄さんを乱暴に扱わないで!」

放り投げられたフェリルの下にベネットは駆け寄った。


「だって、暴れてたんだもん。」


「それでなんの用?その人達は?」


「ん、ベネットちゃんのお兄さんを助けに来た人達。お兄さん持って帰ってもらってもいいでしょ?」


「えっ、助けに!?」

ベネットは驚いて目を見開き声を上げる。


「僕は勇者ルーカスです。獣王国 猛将 フェリル殿を助けに来ました。ナラ、フェリル殿の妹さんは解放してくれないのか?」

ルーカスはベネットにそう言ったお辞儀をした後ナラに聞いた。


「当たり前、この子は私の物。」

ナラはそう言ってベネットを優しく抱きしめる。


「ふざけるな!どうしてベネットがお前の物になるんだ!」

フェリルはジタバタとしながらそう言った。


「ハシャさんが夜の国で私と族長に買ってくれたからだよ。2550万Gで買ってくれたの。とても素敵なプレゼントだよ。」


「そんなの知ったことか!!妹を返せ!」

フェリルは青筋を浮かべて怒鳴った。


「待ってくれ、ハシャってあの荒野の覇者のハシャか?」

ルーカスはフェリルとナラの会話を遮ってナラに聞いた。


「うん、そうだよ。もう一つのこの美しい人の姿もハシャさんから貰った。知り合いなの?」

ナラはそう言って自分の身体を見ながら言い、ルーカスにハシャとの関係を聞いた。


「その人としての姿も?知り合い、と言えば知り合いかな?」

ルーカスは首を傾げながら答える。


「あれ、そうだったの?ハシャさんすごいよね。すごく強いし。」


「あぁ、知ってるよ。僕たちはハシャと戦ったからね。」


「えぇ!?どうして生きてるの?ハシャさんの強さは半端じゃない。族長ですら勝てない。どういうこと?」

ナラは驚く。圧倒的な強さを持つ族長のナクアですら絶対に勝てないと言ったあのハシャと戦い生き残ったというのだから。


「んー、戦ったというよりは試されたという感じかな。」

ルーカスは腕を組んで考えながらそう言った。


「ふーん、まぁ、ハシャさんなに考えてるかわからないからね。生きてるってことは君たちは合格だったってことだね。おめでとう。」 

ナラはそう言ってパチパチと拍手をする。


「あぁ、ハシャから勇者の力を再び貰ったよ。合格というよりは及第点ってところなのかもしれない。」


「まぁ、その話はいいとして。ベネットちゃんは渡さないよ。帰るならこの森からも出してあげるからさっさと帰ってくれる?」

ナラはそういうとベネットを渡すものかと強く抱き締める。ナラの豊満な胸でベネットの顔が埋まり、ベネットは苦しそうにジタバタしている。


「ハシャは僕たちに試練を課した。」

ルーカスは真っ直ぐにナラの目を見て言った。


「またその話?もうわかったってば。」

もう興味なさげにナラはあしらう。


「もしかしたら、ナラにも試練を課しているんじゃないかな?」

ルーカスはナラにそう言った。


「…どういうこと?」

やや間をおいてナラが目を細めて答える。


「なんでハシャはナラに人の姿を与えたんだい?」


「その見た目だと外に出てから他種族と交渉できないだろうって言ってた。」

ナラはハシャに人間の姿をもらった時のことを思い出しながら答える。


「なるほどね、つまりハシャは君たちが他の人と話して欲しかったんだ。そして、ハシャはその子を君に与えた。なんでだと思う?」


「…何でなの?」


「ハシャはナラを試しているんじゃないか?ただの凶暴なモンスターなのか、それとも人とも共存する理知的な者たちなのか。」


「えっ、そんな、まさか。ベネットちゃんはもともと観光ついでに食用で買って貰っただけだし。でも…確かにそう捉えることもできる?だとしたら、本当に?」


「あのハシャがただの凶暴なモンスターに興味があると思うか?」


「そんな、族長と私はハシャさんに試されていたの?」


「それは僕にもわからないけど、僕にはそうとしか思えない。」


「だとしたら、私はどうしたらいいの?」


「ナラ、今のナラにとってベネットさんはナラのなに?」


「…お友達だよ。」


「じゃあ、友達が帰りたいって言ってたら返してあげないと。それが友達ってものなんじゃないか?」


「あと、友達は血を吸いません。ナラ、友達って言ってくれて嬉しいよ。でも、私は帰りたい。また会いに来るから帰してくれない?」


「むぅ、仕方ないね。…さみしいけどなんだか嬉しい気分だ。今までごめんね。」

ナラは頬を膨らませた後、少し俯いて頭を上げて覚悟を決めた顔でベネットにそう言った。


「ううん、ありがとうナラ。」

ベネットは優しい笑顔でナラに答えた。







ほっこりとしたこの場面を見ながらルーカスは考える。


ハシャは僕たちにナクアを外に出すことを許したと言っていた。


ナクアを外に出すことを許すことができる存在?

そして、ナクアやナラとも仲が良さそうだ。


荒野の覇者、彼は何者なんだ?

女神ジャスティナ様から授かった僕の勇者の力を奪い、そして新たに僕に勇者の力を与えた。

恐ろしいのは女神ジャスティナ様に与えられた力よりもハシャに与えられた力の方が僕に馴染み、強力だということだ。


神の力を奪い、神よりも大きな力を与える。

そして恐ろしき魔物を世界に放つ存在。


彼の目的はなんだ?世界を壊したいのであれば、なぜ僕に勇者の力を与えた?


運命はまた僕とハシャを引き合わせる。

その時にはわかる気がする。


ハシャが僕の敵なのか味方なのか。


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