第165話 動き出す蜘蛛
「ジュルジュル、美味しい。ねぇ、そんなに怒らないで。」
ナラはベネットに覆い被さり、首筋に牙を突き立てて血を啜りながらそう言った。
ナラはもうストローで血を吸っていない。ベネットが痛くないように局所麻酔のような毒を体内で作り血を吸う。
「んっ、怒ってないです。」
血を吸われているベネットはナラが作り出した毒のおかげであまり痛くないのだが、毒の副作用で少し酔ったような感じがしていた。
「だって、お兄さんと一緒にいたらすぐに脱走しようとするんだもん。危ないよ?ここの同胞、族長の言うことは絶対に従うけど私に従ってくれない子だってたくさんいるんだからね。大体そう言う子は君よりも強い子だからすぐ食べられちゃうよ?」
現在何回も脱走を試みられたためベネットとベネットの兄であるフェリルは別室に移されていた。
「う、うるさい!現在進行形で食べられてる!!」
「ジュル、一口でいかれちゃうよ?パクってね。私が守ってあげるからずっとここにいなよ。」
ナラはベネットの首元から牙を抜き、口元についたベネットの血を舌で艶かしく舐めてベネットを抱きしめてそう言った。
「いやいや、守るもなにももうすぐに干からびて死んじゃう!」
「加減してるもん。血を吸うのもはしゃさんに言われた通り一日3回にしてるし。」
「うぅ、兄さん…」
ベネットはそう言いながら涙を溜める。
「あっ、族長に呼ばれた。待っててね。また後であそぼ。」
ナラはそう言うとベネットを監禁している部屋を出てナクアの下へ向かう。
「どうしたの?族長。」
ナクアの下に来たナラは少しギョッとした。
なぜならば、森の中の蜘蛛の戦士たちが集められていたからだ。
「蟻の一族が出てきた。」
ナクアは眉一つ動かさずにそう言った。
「なっ!?いずれは出てくるとは思っていたけど、早かったね。どうするの?」
「守りは万全だ。しかし、守るだけでは変わらない。幸いなことにルーと敵対したらしい。」
ナクアは小さな蜘蛛のモンスターを各地に飛ばしさまざまな情報を得ている。
そして今回のバーバルとルーの戦いにも無数の蜘蛛達を飛ばして観察していた。
「じゃあ、どうするの?」
ナラは首を傾げる。
「私は一族を率いて大魔王ルーと共闘する。蟻の一族がこの外の世界に定着する前に叩いておきたい。」
「わかった。では、私も。」
「いや、ナラはここに残りこの森を守って欲しい。ここは我らの本拠地。いくら罠が張り巡らされていると言っても蟻の一族が出てきた以上この巣を空けるわけにはいかない。」
「むぅ、私は留守番か。わかった。」
ナラは頬を膨らませて不満を露わにするが仕方ないと納得する。
「奴らに我らの繁栄の邪魔は絶対させない。我らの住処を脅かした奴らの繁栄を我らは許さない。行くぞ、一族の戦士たちよ!蜘蛛と蟻の戦いは終わってはいない!」
キシャアーー!!!
ナクアの号令に数十万の蜘蛛たちが呼応する。
蜘蛛たちは同胞を殺され、棲家を追われた。
蟻を憎んでおり、相当血の気立って士気は高かった、
「…私も行きたい。でも、族長の命令だから仕方ない。残った子たちは私とこの森を守るよ、いいね。」
ナラは残った同胞にそう言ってナラの進軍を見守った。
「そうか、大同盟結立はまだむずかしいのか。」
ルーカスは少し残念そうに言った。
「ごめんなさい。でも、いくつかの条件を満たせば可能なの。かなり厳しい条件だったけど…。」
マーミヤは自分の父親であり、エルランドの守り人の側近であるポッシルとの対話の内容をパーティーメンバーに話した。
「えっ、それは…難しすぎない?アトラースの内戦の解消、ヴァルハラの生死不明の猛将の探索か新たな猛将の誕生、先の大連合の中枢国三国に匹敵する新たな強力な友好国の誕生。もう一度言うけど、無理じゃない?」
アリルは顔を引き攣らせてそう言った。
「そうだな…まずアトラースはかなり遠いしかなり内乱が激化している。他の二つの問題の目処がたってから対応しよう。まず、ドルフ、猛将ってどんな存在なんだ?」
マーミヤはそう言うと獣人であるドルフに問いかけた。
「あぁ、猛将っていうのはな、簡単に言うと獣王国で最強の将軍に与えられる称号だ。国民のアイドル的な存在かな?時に猛将の発言力は獣王をも上回る。そんな存在だ。猛将がいる軍の士気は凄まじい。逆に討ち取られれば獣王国全体の士気は地に落ちるだろう。」
「そうなんだ。ドルフも強いじゃん、猛将になれないの?」
アベリオが首を傾げてそう言った。
「…猛将は人望もかなり厚い。」
「…そもそもそれだけ強い獣人です。まだ生きてるかも知らない。人を探す能力を持っている人はいるかな?」
誰もがドルフから目を背けて、アリルがそう言った。
ドルフも目を伏せる。
「じゃあ、まずは猛将探しからしよう。もしも僕たちがどこかで生きている猛将を救い出すことができれば、獣王国から僕たちの活動に最大限援助がもらえるかもしれないしね。」
「まずは猛将を探すことのできる人を探さないと。人探しといえば、冒険者だよね。様々な最高の冒険者が集まるところ、はぁ、またクーリッヒに戻ろうか。」
アリルはそういうともう一度戻らなくては今きた道のりを行けないことに憂鬱になる。
蟻の一族の動きに呼応して蜘蛛の一族も動き始めました。
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