第162話 バーバルの策とダンジョンから放たれた黒き軍勢
ルーはすでに夜の国の王都にまで軍を進めていた。
そして、ルーの軍勢を迎え撃つかのように夜の国の大軍が布陣している。
両軍の中央にて今、この世界の最大権力者である二王の対話が行われていた。
「ふぉふぉ、バーバルよ、竜王ダイヤを討ち取ったのは見事であった。」
「あはは!よく言うよ、私にダイヤを討ち取らせたくせにさ。全部ルーの手のひらの上だったってことだね。」
「ふぉふぉ、まぁ、経験の差じゃな。お主は頭も切れる。じゃが、頭が切れるほうが思考や行動は読みやすい。お前は儂には勝てぬよ、吸血鬼の女王バーバル。」
ルーはそう言ってニヤリと笑うとバーバルに杖を向ける。
「まったく、本当に怖いカエルだよ。こちらの策はすべて見破られて潰されちゃうし、援軍に来るはずの魔王モグは調略されちゃうし、アナスタシアはルーの策を掻い潜ってきてくれたけど、ルーを止めることはできなかった。そして今、ルーの刃が私の喉元にきたってわけね。」
バーバルはそう言って自分の首を手で撫でる。
「すまぬがバーバルよ、降伏は許さぬよ。お主は邪魔じゃ、死んでもらう。」
「…ふっ、ふふ、あははは!!!!もうすでに勝った気でいるんじゃねぇーよ!そう簡単にやられてたまるか!ねぇ、この構図見たことあると思わない?」
バーバルは狂ったようやな笑うと戦場を見たわせと言わんばかりに手を翻した。
「…なんじゃと?」
ルーはすぐに人間の大連合が龍の国に攻めてきた時のことを思い出した。
あの時、人間の軍は龍の国の深くまで進軍し、我ら最強の軍をもってしてほぼ壊滅させた。
しかし、あの策略が成立するのには条件がある。
相手を圧倒的に凌駕する強さの軍か圧倒的な数の軍が必要だ。なぜならば、敵の軍勢を自分の首元まで進軍させるのだ。下手したら刈り取られて終わってしまう。
バーバルに今その戦力があるのだろうか?我らを圧倒的に上回るほどの質か数の軍勢が。
「そう、私の策では貴方に致命傷を与えることは難しい…でも、あなたの策なら?ルーの考えた必殺の策はルーをも殺しうるのでは?あははは!!!!!!自分の策で死ねよ、カエル野郎!」
バーバルがそう言って手を上げて合図すると、地面の至る所から蟻のモンスターが這い出てくる。
「なんじゃ、こいつらは!?」
夥しい量の蟻のモンスターたちが地面から這い出てきてルーは困惑する。
「さぁ、ここからが本当の戦いだ!大魔王ルー・チャルロイド!!」
バーバルはそう言って飛び去っていった。
地面から出てきた無数の蟻のモンスターは黒き波となりルーの軍勢に襲い掛かる。
ルーの軍勢も魔法を放ち蟻たちを薙ぎ払うが薙ぎ払った以上の蟻が地面から絶えず湧き出てくる。
そして、ルーの軍勢はついに接敵し、黒き軍勢の波に飲まれていく。
ルーはすぐに全軍撤退の命令を下し、即座に撤退した。
夜の国王都を目前にして撤退すると言うルーの判断は英断であった。
もしもここで抗戦していたのならば黒き軍勢の波に囲まれて飲み込まれていたことであろう。
「あははっ!!!徹底的に追撃しなさい!彼らは我が領内深くまで進軍してきてしまった、さぁ、どれだけ生き残れるかしら?あはっ!あははっ!!!」
バーバルはずっと構想していたのだ。この展開を。ルーに最大限にダメージを与えることのできるこの策のために蟻の存在を隠してきていた。
他の策はどうでもよかった。この策さえ決まりさえすれば。そして、策は見事に決まる。バーバルは気持ちが昂り高笑いが止まらない。
これがこの戦いでバーバルの仕掛けた最大の罠であった。
夜の国領内深くまで進軍してきてしまったルーの軍勢の撤退は困難を極めるだろう。
—我が一族の者どもよ、追え、喰らい尽くせ。我らの威を知らしめろ—
クルアの命令が全蟻たちに伝達される。
蟻たちはまったく疲れを知らないほどスピードを落とさずルーの軍勢を徹底的に追撃していった。
仲間の死体を乗り越え、殺した敵を喰らい尽くし、脚が曲げようと追い続けた。
女王の命令は絶対。放たれた兵隊蟻たちはその命の限りルーの軍勢を追い続けた。
「あれは反則じゃろうて。できる限り生き残るのじゃ、儂も殿になり戦おう。さて、これはわからなくなってきたのぉ…悪神にでも魂を売ったかバーバルめ。」
ルーは部下たちと共に魔法で次々と蟻を屠っていく。その数は数千にも数万にも及ぶが蟻たちは止まらない。
執拗で激しい追撃を受けたルーの軍勢の撤退は困難を極め、窮地に立たされた。しかし、強力な協力者が現れ、なんとか命からがらルー達は逃げ仰たのであった。
バーバルにダイヤを討ち取られせ、バーバルが龍の国の力を取り込む前に叩き、夜の国を滅ぼす。これでルーに逆らえる大勢力はいなくなり、世界征服完了となる。これがルーの思い描いていた構図であり計画でした。そして、それはその通りに進み、バーバルの喉元まで軍を進められましたが、バーバルはこの展開をすでに予見していました。蟻の一族の登場、満を侍して進軍した大王ルーの敗北。世界はさらに混沌としていきます。
ついに蟻の一族の登場です。
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