第158話 レオンの夢
「はぁ、はぁ、ギリギリだった…まだまだだな。」
俺は迷宮探索を終わりなんとかクーリッヒに戻ってきた。今回は70階層まで潜ることができた。
死にかけた場面がなんどもあった。いつ死んでもおかしくなかった。それでも、いや、その度に俺はどんどん強くなっていく感覚があった。
しかし、98階層まで単独で行ったアイリスさんの凄さに実力の差を改めて感じた。
俺は久しぶりに美味しいご飯をたらふく食べようと飯屋に向かう。
飯屋にふらふらと向かっていると後ろから声をかけられた。
「レオン、奇遇だな。これから飯か?」
「ア、アイリスさん!?」
「ふふっ、どうしたそんなに驚いて。」
「お、俺、今さっき迷宮探索が終わってすごく汚いっていうか。一緒にご飯とか食べると気分を害してしまうかもしれません。」
「なんだそんなことか。私も冒険者だぞ?そんなの全く気にしない。それに…今回はすごく頑張ったようだな。ボロボロだ。」
「はい、頑張りました。」
「まぁ、とりあえず飯を食べよう。この先にたまにやってる美味しいワインの店があるんだ。」
俺とアイリスさんはそのお勧めのお店に入った。店の名前は肉とワインの酒場 コスモ亭と言うらしい。
俺は巨大な肉塊のステーキと赤ワイン、アリスさんもステーキとワインを頼んでいた。
「本当だ!ワインすごく美味しいですね!!お肉も柔らかてジューシーで美味しい!!」
「だろう?それで、今回はどこまで潜ったんだ?」
「はい!70階層までいけました!」
「70階層だと!!?もうそこまで潜っているのか!?」
「あははー、何回も死にかましたけどね。」
「本当にすごいね。レオンはどんどん強くなる。」
「まだまだですよ。アイリスさんはあの98階層までソロで行ったんですよね?今回の探索でアイリスさんとの力の差を感じました。今の俺には絶対無理です。」
「ふふっ、今のレオンにはね。でも、このままのスピードだったらあっという間かもね。もうB級冒険者なんでしょ?もう君は紛れもないプロの冒険者だ。」
「俺がプロの冒険者…そうか、気づいたらもう俺は冒険者の中でも上の方になってたのか。」
「そうだよ。君はもう誰かの憧れになっているんだ。」
「俺が誰かの憧れに!」
「私も頑張らなくてはな、あの龍と白銀の戦いをみて私も白銀との力の差を感じた。私が戦った時は一瞬で負けた。一撃だけ当てて鱗を一枚やったくらいだ。」
アイリスはそう言うとずっとつけている籠手を見る。
「それってあの龍の鱗が素材なんですか!?」
「ふふっ、ほんとに白銀は強いよ、正真正銘の英雄だ。だが、私は超える!!私と私のギルド フロントラインで白銀を!!前回の依頼で金は潤沢に手に入れた。人も育ってきているし、集まってきている。かつてのフロントラインを上回る力を得つつある。私はさらに力を蓄えてあの龍を打ち倒し迷宮の最奥へと進む!最高の冒険をして今まで心半ばに倒れていった仲間たちに報い、私のギルド フロントラインを伝説にしてやるんだ!!」
アイリスは力強く立ち上がりそう語った。
「かっこいい、本当にかっこいいです!アイリスさん!」
本当にかっこいい。あんなに打ちひしがれて絶望に伏していたアイリスさんはその絶望すらも力に変えてもう立ち上がり前を向いて歩いている。
「ほう?俺を超えるって?」
後ろから声をかけられて俺たちは声をかけた人物の方を向く。
「なっ、白銀!?」
「ジンさん!?」
「あははっ!あの龍を倒すのか?あの龍はSSランクのモンスターだ。大魔王ですらSランクだ。大魔王よりも圧倒的に強いあの龍を討伐するのか?」
「舐めるなよ!私とフロントラインがあの龍を打ち倒しお前を超える!いや、世界最難の迷宮 死の迷宮すらも攻略し、私とフロントラインの名を世界に轟かせる!」
ビシッと白銀に指を刺してアイリスはそう言った。
「あははっ!!いいねぇ、いいねぇ!絶望を乗り越え、あれほどの化け物を見てなお、そこまで言えるのは本当に最高だ。さすが世界でも指折りの冒険者アイリス。それで、お前は?レオン、お前はどうなりたいんだ?」
「お、俺ですか?」
「あぁ、お前だ。レオン、お前はどうなりたいんだ?」
「俺は…」
今まで俺の人生は碌なものではなかった。親に捨てられ、他人に裏切られ、利用され、置いて行かれた。そんな人生だった。
そんな時に勇者ルーカス様に助けられた。
最初はルーカス様みたく強くなりたいと思ったから。
それから、冒険者を始めた。でも、やっぱり俺は弱かった。スケルトンに囲まれて相打ちになり一度死んだ。そして、迷宮の主に蘇らせられた。
俺はより一層迷宮に潜るようになりどんどん強くなっていった。
冒険が楽しかった。未知の宝、強いモンスター、そのモンスターとの命のやり取り。命懸けの冒険は俺により一層、生を感じさせた。
ワクワクやドキドキが止まらない。
弱くて惨めだった自分が、強くなっていくことがたまらなく嬉しかった。
冒険者となった俺はさまざまな冒険者と出会った。その人たちの凄さも間近で感じた。
英雄 白銀のジン、フロントラインギルドマスターのS級冒険者アイリス、最強冒険者パーティーと名高い奇跡の剣 リーダー アルド。他にもいろんな冒険者に俺は感化されて成長して行った。
そう、最初はただ強くなりたかった。
そしてだんだん冒険が楽しくなって冒険がしたくなっていった。
今は…超えたい。一番になりたい。
今まで見てきた凄い人たちを超えて俺が一番になりたい。
知られたい、俺の今までの冒険を、これからの冒険を!
讃えられたい、俺のこれから成し遂げていく業績を!
助けたい、今まで守られてきた以上にみんなを助けたい。
戦いたい、今まで逃げてきた以上に戦って誇りを持ちたい。
様々な欲求と願望が俺の中で蠢く。
そして、俺は真っ直ぐにジンさんを見て言った。
「俺は最強になりたいです!」
「最強か、ではどう証明する?お前こそが最強だと!」
「誰もが成し遂げたことのない偉業を!俺はこの死の迷宮を誰よりも早く攻略し、俺が最強であると証明する!」
「いいねぇ、お前は最初自信なさげな青年だった、クレイジースパイダーと戦っていた時もお前は死を恐れて俺に縋るような目を向けていた。そんなお前の目は今!野心に満ち満ちている!自分なら本当に成し遂げられると思っている、誰も成し遂げられない偉業を!数々の死線を乗り越えて、さまざまな経験に叩かれてお前は今研ぎ澄まされてきている!最高だよ、やっぱりお前は最高の冒険者になり得る!」
ジンは息を荒げて興奮してそう言った。
「白銀は、これからどうしたいんだ?」
アイリスは逆にジンに問う。
「俺か?俺はそうだな…」
白銀はそう言って少し考える。
俺とアイリスさんはジンの回答をじっと待つ。
英雄のこらからの目標には俺もアイリスさんももちろん興味津々だ。
「俺は面白いことを探していくよ、それが俺の冒険…いや、俺の物語だ。」
俺はそのジンさんの言葉に迷宮でも感じたことのないほどの寒気が起こった。
迷宮に潜り続けて身についた俺の研ぎ澄ましされた第六感とも言える感覚が警報をならしたのだ。
なぜだかはわからない。
だが、ジンさんに一瞬、あの化け物みたいな龍よりも遥かに深い恐怖を感じたのだ。
多分主人公はレオンの冒険を見て楽しくなっちゃってレオンに会いに来てますね笑
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