第157話 逃げた冒険者
「逃げてしまった。また俺は逃げてしまった。ジンさんを置いて自分が生き残るために…」
レオンはダンジョンの中層でモンスターを狩りながら考える。
レオンもキュアが立てた大規模探索隊に参加しダンジョン探索に挑んだ。
強力な龍がいて冒険者たちはなにもできずに逃げたのだ。いや、逃がして貰ったのだ。
迷宮都市クーリッヒの英雄 白銀に。
「なんで、ジンさんはあんなに強いんだ!なんで俺はまだ弱いんだ!!なんで俺はあの時ジンさんと一緒に戦わずに逃げてしまったんだ!!」
あの時、その場にいた全ての冒険者は逃げ出した。それは冒険者として正しい選択だろう。
生き残る為に逃げる。逃げることは悪いことではない。むしろ冒険者は戦いを避けてなんぼだろう。
「わかってる、怖かったんだ。死ぬのが、あまりにも実力の違う戦いが、みんなが逃げ出したから俺も逃げてしまったんだ。ジンさんを置いて自分が生き残るために、もしかしたらジンさんが死んでしまうかもしれないと思っていても逃げてしまった!!」
俺たちを逃すために1人残り戦う冒険者ジン。もしかしたら、あのジンさんでも死んでしまうかもしれないそう思うほどの怪物を前にジンさんを置いて逃げた。それはジンさんの命と引き換えに自分が生き残ろうとしたことと同意義だ。
「独り言がうるせーなぁ。」
足音を鳴らして1人の音がダンジョンの奥から歩いてきた。
「貴方は、奇跡の剣メンバーのA級冒険者アッシュさん?」
「奥まで聞こえてきてたぜ。てめぇの泣き言が。」
「なんでこんなところに1人でいるんですか?」
奇跡の剣冒険者アッシュ。たしか、かなり噂が悪い。格下の冒険者をボコボコにしただの、金を取られた奴がいるだの。正直なんでアルドさんのチームにいるのかが謎なくらいだ。しかし、腕は確かだ。冒険者アッシュはA級冒険者の名に恥じぬくらい強い。あのキュアの依頼の迷宮探索にも参加していてその強さは俺も目の前で見た。
「あぁ?アルドに言われたんだよ。鍛えろって。だからこうやって鍛えに来てるんだよ。」
「そうだったんですか。すみません、うるさくしてしまって。」
素直に謝っておこう。もしかしたら難癖をつけられるかもしれない。
「まぁ、いいんだけどよ。で?なににそんな落ち込んでるんだ?」
「あの時、俺は逃げてしまいました。ジンさんをおいて自分がただ生き残るために。」
「なにがダメなんだよ?生き残るために逃げるのは悪いことじゃないだろう?」
「そうですね…でも、俺は逃げては行けなかったと思います。自分が生き残るために誰かが死んでしまうあの状況で逃げてしまうのは…俺が目指しているかっこいい冒険者ではないです。」
「かっこいい冒険者ねぇ。俺はさぁ、すごい調子に乗ってた時があるんだ。この歳でA級冒険者だ、調子にも乗るだろう。だがな、白銀に絡んだ時に白銀の野郎にボッコボコにされてな。その後アルドにもっとボッコボコにされたよ。それでやっと気づいた。自分って思ったより弱いんだなってな。」
「そ、そうなんですか?」
そう言えば一時期全身鎧の低級冒険者にA級冒険者のアッシュがボコボコにされたという噂が立っていたな。あれは白銀さんのことだったんだ。
「そして、こうも思った。ぜってぇに強くなって白銀とアルドの奴をボッコボコにしてやる!!ってな。そのためにはまだ死ねねぇ。お前はなにになりたいんだ?」
「俺は…最高の冒険者になりたい!」
「じゃあ、強くならないとな。強くなって逃げた分、弱い奴の盾になってやれ。アルドに教わったんだ。「ボコボコにしたやつが強くなってボコボコに仕返しにくる。そうやって冒険者は回っていくんだと。まぁ俺は返り討ちにしてやるがな!」ってな。そう言うことだろう?お前が言ってることと同じだ。ボコボコにする側とされる側。守る側と守られる側。まだお前は守られる側だったってことだけの話じゃねぇーか。」
「なんか思っていたよりしっかりした人だったんですね。正直アッシュさん悪い噂ばっかで、俺勘違いしていました!ありがとうございます!なんだから胸のモヤが落ちました。」
「お前…まぁ、そうだな。もうやんちゃはしねぇよ…かっこ悪いからな。あと、次もしもやんちゃしたらアルドに殺される!」
「あはは、なんか大変そうですね。」
「そうでもねぇよ。じゃあな、また一緒に冒険しようぜ!」
そう言ってアッシュは足音を立てて去っていった。
俺はジンさんが現れて龍に立ち向かったあの姿をもう一度思い出す。
「ジンさんはカッコよかったなぁ。世の中にはとんでもなく強い奴らがたくさんいる。みんなを守るため、なにかを成し遂げるために立ち向かう。たった1人でも持てる力を振り絞って!命懸けで!!それこそが英雄!!」
俺はあの時の巨大な龍に立ち向かうジンさんの姿を思い出し胸が熱くなる。
「そうか、まだ僕は守られている側なのか。ジンさんは今までどんな冒険をしてきたんだろう。どのくらい鍛えればあのくらい強くなるんだろう。超えたい!ジンさんを!なりたい!!英雄と呼ばれるような冒険に!!行きたい、僕を蘇らせたこの迷宮の主人が待つ迷宮の最奥に!!!」
レオンは駆け出した。さらなる強さを求めて迷宮の奥へと。
その姿を見ている迷宮の最奥の主人はニヤリと笑う。
まるでデザートを待つ少年のように。
主人公が楽しみにしていますね。
「面白い!」「続き読みたい!」「最後まで見たい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!一言でも感想お待ちしております!!




