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婚活とか言われても

「有紗ちゃん、改めて紹介するね」


あの結婚式の日から数か月後、やっと晴人お兄ちゃんとまりあさんと三人で会う機会を得た。


「まりあです。よろしくね」


まりあさんが紅茶を出してくれた。


ウェッジウッドの、今は廃盤になってしまったコレクションだ。

思わず目を見張る。


「やっぱり可愛いですね。私も買ってもらえば良かったなぁ」


ティーカップを持ち上げる。


「有紗ちゃんも好きなの?」とまりあさんが言うと、晴人お兄ちゃんが「僕よりも全然詳しいよ、僕が紅茶にハマったの有紗ちゃんの影響だし」と持ち上げてくれる。


「詳しいなんてとんでもないです。ただ好きなだけで」


謙遜ではない。本当にただ小さい頃から家にあるからというだけで紅茶をよく飲んでいて、母が食器も好きなので自然と自分も好きになっただけだった。


「うらやましいな、私が高校生の時と全然違う」


高校生の時と全然違う、か。


意味するところは違うが、あの日の参列者らしい女性たちの会話を思い出した。


本当にまりあさんは高校生の頃からそんなに変わったのだろうか。


「まりあさんって、どんな高校生だったんですか」


自然な会話の流れだったと思う。


「すっごく地味で、かといって勉強がすごくできるわけでもなく……自分で言ってて悲しいけど、冴えない高校生だったよ」


「そんなことないよ。まりあは絵がすごく上手でね。まりあが描いた文化祭のポスター、今でも覚えてるよ」


「オタクだったのよ。今でもだけど」


前は不釣り合いに感じた二人だが、こうして並んで幸せそうに笑っているところを見ると、ちょっと顔も似て見えてくる。


「高校時代のクラスメイトには整形したと思われてるくらい、かなり変わったと思うわ」


ドキッとした。私があの日、あの会話を聞いていたことを知っているわけもないのに、見透かされたように感じた。


「確かに見た目はすごく変わった。同窓会でわからなかったもん」


「高校時代が一番酷かった自覚はあるの。あれが思春期ってやつなのかと今は思うけど、ニキビは爆発的に増えるし、常にむくんでて。それに――」


少し言いよどんで「お金もなかったから」とぽつりと言った。


「ただでさえ見た目が良くないのに、お手入れも行き届かなかったの」


「整形もなしにそんなに綺麗になるなら、まりあさんは元から美人だったんですよ。うらやましい。私なんて彼氏ができたことないどころか、まともに男子と会話もしたことないですよ」


えっ、とまりあさんが本当に意外そうに驚いて見せた。


大人に気を遣わせている……演技力を使った高度なお世辞……反応に困るような自虐なんて言うんじゃなかった。


「僕の女性版みたいな感じなんだ、有紗ちゃんは」


「だとしたら原石ってことじゃない? あ、ごめんなさい有紗ちゃん! 失礼なこと言っちゃった」


「と、とんでもないです。晴人お兄ちゃんのこと磨いて輝かせてやってください、ははは……」


何を言っているんだろう、口調がオタクすぎる。


「すみません、テンパると変なこと口走っちゃうんです。お二人は高校時代に出会ったんですよね、凄すぎます。私はこんな暗黒期を知る男子とそういう風になるとか想像もできない……いや、暗黒期っていうかこれがありのままなんですけど。でもお二人と違ってありのままの私を好いてくれる人とかいないと思うし、大人になって落ち着いて、なんていうかもう少し人として洗練されたら恋愛できるかなぁ、なんて」


二人が顔を見合わせる。


「ね、僕の女性版でしょ」


「そうかも。でも、失礼ながらもしかしたら私にも似てるかもって思っちゃった」


ねえ有紗ちゃん、とまりあさんが私の手を包み込んだ。


「私も高校生の頃はいつかそのうち恋愛するんだろうって思ってた、けど大学時代も何も起こらなかった」


ぐ、と手に力が込められた気がした。


「そして就職してからも、何もなかった」


ぐぐっ


「そして、マッチングアプリ」


ぐぐぐっ


「結婚相談所……辛かった」


「まりあさん、手がちょっと痛いのですが」


「有紗ちゃん、婚活はもう、高校から始まっていると言っても過言ではないの!」


晴人お兄ちゃんに目線で助けを請うが、「まりあが婚活論を語ると長いぞ~」と笑うだけであった。

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