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面倒くさい女

「有紗、それいつまで続けるの?」


昼休み、例のノートを指して美咲が言う。


難しい質問だった。


いつまでだろう。


結婚相手が見つかるまで?


まだ高校だから十年は続くのか?嫌すぎる。


じゃあ彼氏ができるまで?


それも違うような……


私はしばらく考えて答えた。


「納得するまで!」


「何に?」


「わかんない!」


美咲は深いため息をついた。


「有紗ってさ」


「うん」


「意外と面倒くさい女だよね」


「失礼」


否定できないけど。




その週の書道教室、私は少し気合いを入れていた。


今日は榊原先輩ともう少し話そうと思っていた。


評価材料が足りないから。


そう。


評価材料が。



ところが、教室に入った瞬間、私は足を止めた。


「あ」


先輩がいた。


そして、隣に知らない女子がいた。


いや、知らないわけではない。見覚えはある。


確か高校三年生の……名前は思い出せないが。


二人は楽しそうに話していた。


笑っていた。


距離も近い。


別に普通だ。


普通の会話だ。


何も問題はない。


なのに。


なぜだろう。


面白くなかった。


「有紗ちゃん?」


先生の声で我に返る。


「はい」


慌てて席に着く。


墨をする。


集中、集中。集中しろ。


半紙に向かう。


しかし、なぜか気になる。


――笑っていたな。


仲良さそうだったな。


付き合ってるのかな。



別にいいじゃないか。


付き合っていたとしても。


私は婚活をしているのである。


恋愛ではない。


だから。


関係ない。



教室が終わる頃、あの女子生徒が先輩に言った。


「じゃあまた来週ね」


「うん」


一緒に帰ったりしないんだ。私はなぜかホッとした。




帰り際、また先輩が話しかけてきた。


「今日元気ない?」


やはりよく気が付く人だ。


「そんなことないです」


「そう?」


先輩は少し考えてから言った。


「ならいいけど」


それだけだった。追及しない。いつもどおり。


駅までの道を、一緒に帰ろうと言ったわけでも言われたわけでもないが何となく一緒に歩いた。


「文化祭近いね」


先輩が言う。


「あ、はい」


「準備とか大変?」


「まぁ、それなりに」


さっきの女子とも、こんな風に文化祭の話なんかしていたのだろうか。


もし榊原先輩に彼女ができたら、評価対象から外した方がいいのだろうか。


「有紗ちゃん?」


「え?」


「信号」


赤だった。危ない。


「すみません」


「考え事?」


「ちょっと」


「受験とか?」


「違います」


即答してしまった。


先輩が笑う。


「じゃあ何?」


言えるわけがない。


あなたに彼女ができたら嫌かもしれない、なんて。

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