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尻軽女が暴力系ヒロインに転生したので、暴力を封印してみた  作者: 春無夏無


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尻軽女と新入部員

成明寺(せいめいじ)天音(あまね)です。そこのソラとは双子の兄妹です。あの、私昔からぬいぐるみや可愛いものが大好きで、でもこんな見た目でそういうものは似合わないから友達とかにはずっと内緒にしてたんです。でもデモンストレーションで芦川先輩が堂々と舞台に上がって、手芸の魅力を語っているのが凄くかっこよくて、私も堂々と好きなものを好きって言えたらかっこよくなれるかなって」


 言い争っていた女の子はそのように見学の動機を教えてくれた。

 私ほどではないけれど背は高いし、武道を嗜んでいそうな古風な美少女なので、似合わないと思い込んでしまうのは仕方ないかもしれない。

 私だって手芸好きは見た目らしくないと言われるし。


「家の手伝いで繕い物はよくするので裁縫は得意です。あと、今日は見学ではなく入部するつもりで来ました!」


「それで、どうして言い争いを?」


「う……」


 あまりお兄さんと仲が良くないのだろうか?

 同じ部活に入ろうとしたから言い争いに?


「先輩、俺もアマネと同じで昔からぬいぐるみとか可愛いものが密かに好きだったんです。兄妹だから好みが似てるのか、同じものに目をつけてよく喧嘩になるのですが、さっきは扉前で騒いですみませんでした」


天成(そらみち)君と天音さんは、入部してもそれを改めるつもりはないのかな? 言い争いが多いと部長としては空気を乱すものとして追い出さねばならないし、それなら最初から入部は断ったほうが良いと判断するけれど」


「いえ、入部したら、できるだけ抑えます」


「私も我慢します! 門前払いはしないでください!」


 とりあえずこの兄妹については、あとで部員と相談だな。

 あとはもうひとり。


「そっちの子も巻き込んでごめんね。見学の子で合ってる?」


「いえ、僕も入部するつもりで来ました。新入生の南波(なんば)(にお)です。去年の文化祭で芦川先輩の作品を見て、繊細な仕事に惚れ込んで、手芸部に入部しようと決めてきました」


 そういって文化祭で販売されていた筈のボタンを見せてくれた。展示していた作品とは違い、販売物には製作者の名前なんて入ってないのに、見事に私が作ったものだけ買っている。


「買ってくれたのね、ありがとう。手芸は好きなの?」


「裁縫や小物を作るのは好きです。でもオリジナリティというかセンスがあまりなくて、芦川先輩からそういう部分を学んでいきたいです」


 ふわふわした栗毛と子供みたいなあどけない表情に可愛い後輩ってこんな感じだろうなって思う。

 あとちょっと入学したての頃の明人君に雰囲気が似てる気がする。

 この子もいずれにょきにょき育ってしまうのだろうか。


「南波君は入部したらどんなものを作りたい?」


「文化祭で見た喫茶店のリボンフックです。あれも芦川先輩の作品だって着けてる人に教えてもらいました」


「ああ葡萄のね」


 懐かしいな……絵麻さんとのやり取りを思い出しそうになって、慌てて抑え込む。今はだめ。


「あんなものを作れるようになったらって思うのですが、今年中には辿り着けないので、卒業まで頑張ります」


 なんだか良い子っぽいな南波君。

 この子は入部しても問題なさそうだ。



 とりあえず私だけで判断する話ではないので、成り行きを見守っていた部員全員と相談することにする。


「南波君はすぐ入ってもらって大丈夫じゃない? 芦川さんのファンみたいだし」


「そうだね。鹿波ちゃんのファンなら大丈夫だと思う


 その理屈はおかしい。


「見学開始初日に入部しにくるくらい熱心なら是非入部してもらおう。それで成明寺君たちは、お寺さんの子だし騒いではいけないところで騒がないって躾はされてると思うから、部活中は言い争いしないってことなら入部させても問題ないと思う」


「アッキーがそう言うならいいけど、手芸部の平均身長が高くなりすぎると思う」


 確かにやたら体格のいい部員が揃うことになるな。

 例えば作業台の高さなどを多数派に合わせたりすると、小柄な麦野さんや唯花ちゃんは困るだろう。

 今までは少人数だし私が低いほうに合わせていたけれど、人が増えたらそうもいかないから考えないとね。


「私は……妹さんのほうだけならすぐ入部してもらっていいと思う。お兄さんのほうはちょっと……」


「唯花ちゃんは知らない男の子が増えるのは怖い?」


 私が聞くと唯花ちゃんは小さく頷いたが、去年明人君を手芸部に誘わないか聞いたときに見せた反応が本当のところじゃないかと思っている。

 男子が細やかな趣味を持つことに忌避感があるというか、価値観が凝り固まっているというか。

 去年は盲目的に唯花ちゃんのことが好きだったけれど、最近はそうでもないのでこの子の欠点が目につきやすくなった気がする。

 それで嫌いなるなんてことはないけれど。


「南波君も男の子よ?」


 ダブルスタンダードは良くないからねえ。

 私に指摘されて唯花ちゃんも自分の矛盾に気付いたのか難しい顔をしている。


「とりあえず、南波君はこのまま正式に入部、天音さんと天成君は見学期間が終わるまで仮入部で様子見というのはどう? 仮入部期間中に諍いを起こさなければ正式に入部してもらうということで」


「異議なし」


「いいよー」


「まあそれなら」


 できれば全員残ってほしいわね。部員が多いにこしたことはないし。


「じゃあまとまったところで今日の活動をはじめましょうか。新入生はまず運針を見せて欲しいな」


 この後、南波君が自分も名前で呼んで欲しいとか言い出して、それなら私だけ苗字呼びなのもおかしくないかと麦野さんが反応したため、流れで部員全員を下の名前呼びすることになった。

 その結果、付き合い始めるまでずっと苗字呼びだった明人君が面白くなさそうな顔をしていたので今夜は長丁場を覚悟をしておこう。


 あと、天音さんと天成君が唯花ちゃんと鈴さんに名前を呼ばれるたびに凄く嬉しそうにしているけれど、可愛いもの好きの対象に人間も入っているのだろうか。

 もしそうだとしたらデモンストレーションで断念したふたりを可愛らしく着飾らせたいという野望の強い味方になってくれるかもしれない。




「あの……あ、アキ君?」


「どうしたの」


「やっぱりちょっと恥ずかしいのだけど」


「恥ずかしがるカナも可愛いよ?」


 昨夜、もっと親密な感じで呼ばないとベッドから出してくれないと言われたので、私たちもお互いの呼び方を改めることになった。

 本当に付き合ってるわけじゃないのに、付き合ってますって主張するような距離感を世間に見せつけている感じでこれはかなり恥ずかしい。


「元の呼び方じゃだめ?」


「このまま学校行くのをやめて、カナを引きずって家に戻ってもいいけど? いくらでも相手するし」


 あの目はわりと本気で言っている。

 ……諦めよう。

 きっとそのうち呼び方にも人の目にも慣れる筈だ。

今日は他に短編をひとつあげました。

元々短編畑の人間なので短い話を書くと落ち着きます。

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完結済み前作です。
ゲームで育てた不人気作物パースニップでみんなを元気にしてあげる
VRMMOで成人女性が農業したり育てたマンドラゴラに振り回される話です。
― 新着の感想 ―
[一言] 明人くんなんかすごいな
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