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尻軽女が暴力系ヒロインに転生したので、暴力を封印してみた  作者: 春無夏無


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尻軽女は新入生と接触する

 始業式が終わり、そのまま新年度初の部活動を始める。

 と言っても今日は話し合いが中心だ。


「新入生を勧誘するために、部活紹介デモンストレーションでなにをするか決めましょう」


 限られた短い時間だけど新入生全員にアピールできる機会なので有効活用していきたい。


「部員全員で壇上に上がっても4人だけだし、迫力ある大きめの作品を持って見せるのがいいと思う」


 麦野さんの言う通り、新入生との距離を考えると大きな作品を持っていくのがいいだろう。


「それなら文化祭で展示した、今までの刺繍を繋げたタペストリーをもう少し大きくして、鹿波ちゃんとアキト君に壇上で持ってもらったらいいかも」


「まあ私たちみたいなちびっこが掲げるよりは目立つわね」


 入学した当初、私より小柄だった明人君は既に私の背を抜いた。最も小柄な麦野さんもだけど、唯花ちゃんともかなり体格差が出てきたので、やはりタペストリーを持つ相方は身長の関係で私しかいないだろう。


「唯花と麦野は休み前に作り始めたぬいぐるみを仕上げて持って行くのがいいと思う。あれも結構大きめだし」


「えっ、唯花ちゃんと麦野さんがぬいぐるみ持って壇上に上がるなら少女漫画みたいに着飾りたい」


 私がそういうと唯花ちゃんはちょっと嫌そうな顔をして、麦野さんは満更ではない表情を見せた。

 麦野さんはアンティークとかクラシック系のロリータっぽい服に興味あるしね。


「ちょっと鹿波さん、それはなにか違うのでは」


「大丈夫、ドールの服なら頼まれて作ったことあるし、人間サイズもいけると思う! 徹夜でやれば!」


「はい却下」


 明人君にばっさりと切られてしまう。


「鹿波さんは体調を崩しやすいから無理はだめ。でも小物で制服を飾るくらいなら手芸部っぽさは充分アピールできるのでは?」


「リボンとか? それくらいなら私もやっていいよ」


「髪飾りとか付け襟でも雰囲気変えられそう。唯花と私でお揃いの付け襟にして、他の飾りで個性を出していく?」


「いいかも!」


 私が萎れている間にどんどん話は進んでいく。

 みんなが手芸部員としてしっかりしてきている。私の不在期間があったせいだろうか。

 なにか部長らしいところを見せなければ。

 予算を去年より多くもらってくるくらいしか浮かばないけれど。



 そういえば最近気付いたことなのだけど、明人君の主人公補正なのかなんなのか、校内で多少えっちなことを行っても先生や生徒に見つかることがないようなのだ。

 学校で急に症状が出たときに帰宅するまで我慢する必要がなくなったのだけど、ストーリーを大きく外れた現在でもキャラクター補正のようなものが働いているのは少し怖い。

 今は空き教室くらいでしかやってないけど、暖かくなってきたら屋上とかですることになるのだろうか。

 そもそも都合良くそばに空き教室があること自体ちょっとおかしいよね。もう少年漫画じゃなくて成人向け漫画の世界なのでは?

 今のようにやむを得ない事情で空き教室に飛び込んだときはそんなこと考えられる状態ではないのだけど。


 相変わらず私は精神状態の均衡を欠いている。

 すぐに絵麻さんを思い出して体調を崩すし、抑制薬では激しい頭痛を鎮めることしかできない。

 もっと効果的な薬がないか検査をしながら探していくので、気長に待とうと思う。

 男性恐怖症は急に触られたりしなければ大丈夫なくらいには落ち着いてきた。

 明人君だけは慣れがあるのか急に触られても平気なのだけど。

 別れた相手にいつまでも頼って申し訳ないけれど、今しばらくは甘えさせてもらおう。


 先に戻っていく明人君を見送って、私はゆっくり身支度を整える。

 終わってすぐはとても顔が赤くなっているらしいので少し冷ましていかないと。

 冷たい体に入り込んだ火がじんじんと燻るように残る感覚は好きだけれど、ここは健全な学び舎だしね。

 どうせ帰ったらまたするのだから、余韻はさっさと散らしてしまおう。


 ふたりでいる理由としてちょうどいいので、私たちは付き合っていることになっている。

 実際に付き合っているときは人に言ってなかったのに、別れてから付き合ってることにするのはなかなか奇妙だ。

 つい最近、部活のない日に明人君がうちの近くの手芸店でバイトを始め、バイトが終わると私の家に帰ってくるようになった。つまり同棲だ。

 始めたばかりだからまだだけど、給料が出たら生活費を入れてくれるとのことなのでこちらに異存はない。

 一緒にご飯を食べてくれる人がいると料理に張り合いも出てくるし。

 ただあまりにも自由なので心配になってそれとなくご両親について聞いてみたけれど、放任だから、で済まされてしまった。

 これもラブコメ主人公の家庭だからなのだろうか?


 なお今のところ、わたしたちの元彼女である唯花ちゃんから物言いはない。同棲のことは教えてあるけど。

 明人君と唯花ちゃんが別れるときにふたりでどういう話し合いをしたのか知らないが、なんとなく不干渉っぽいということだけがわかっている。


 流石に麦野さんにも付き合ってるみたいなことは言ったよ。そこまで仲間外れにするのはどうかと思うし。

 明人君を好きだった筈だからショックが大きいかと思ったけれど案外普通の反応だった。

 唯花ちゃんと疎遠になった頃にもう明人君のことは諦めていたのかもしれない。

 去年はそれほど付き合いがなく、少し避けている時期もあったけれど、今となっては程よい距離感で付き合えて料理の話ができる子なので、今年は話す機会を増やしていこう。



 体の火照りもおおかた冷めたところで空き教室を出る。

 かなり好き勝手やっている私にもまだヒロイン補正があるのか、こういうタイミングで他の生徒に会うことはないのだけど、今日は珍しく廊下の途中で立ち往生している男子生徒を見かけた。

 坊主頭でかなりの長身。多分明人君より高いわね。

 でも真新しい制服と狼狽っぷりを見ると迷子の新入生なのかしら?


「どうしたの? 迷った?」


 新入生と決めつけて背後から話しかけると、びっくりしたように振り向いて、地獄で仏を見たような表情を見せた。

 なんか昔の銀幕スターって雰囲気の二枚目なのにギャップがすごい。でも入学したばかりだし校舎は広いし迷ったら不安になるか。


「はい、職員室に行きたくて」


「じゃあ逆側に来ちゃったのね。案内するわ」


 広さもあるし、吹き抜けになった中庭があるせいか校舎が変な形で方向感覚が狂いやすい。

 同級生たちも去年慣れるまで散々惑わされていた。


「俺は新入生の成明寺(せいめいじ)天成(そらみち)です」


「2年生の芦川よ。よろしくね」


 はて、成明寺。どこかで聞いたような?

 それがどこなのか思い出せなくてもやもやする。

 きっとこの新入生には関係ないことなのだろうけど。

 マンガにも出てきてないと思う。

 そういえば準ヒロイン枠で後輩キャラの子はいたけど、今年その子と関わることはあるのだろうか?


 もしかしたら準ヒロイン絡みで知り合う子だったりするのかもしれないわね。

 準ヒロイン自体がそんなに出番が多いわけではなかったからあんまり記憶にないけれど。




 数日後、新入生の前でのデモンストレーションも無事に終わり、新入生が見学に来てくれるといいねーなんて言いながら活動場所である技術室に皆で向かうと、目的地周辺がなにやら騒がしい。

 男子と女子が言い争って、もうひとりの男子がおろおろしてる?

 なんにせよあそこで騒がれるのはよろしくない。

 駆け寄って、言い争うふたりの間に割って入る。ていうか男子のほうはこの前迷子になってた新入生だな。


「成明寺君」


「あ、芦川先輩っ」


「ここで言い争いはいただけないから痴話喧嘩なら余所でやってほしいのだけど」


「違います。俺は手芸部の見学に」


「はぁ!? ソラなんてどう見ても手芸部に似合わないでしょ」


「それはアマネも同じだろ」


 痴話げんかではないらしい。

 というか女の子のほうも見覚えがある……成明寺……


「あ、冬休みに成明寺へ伺ったときに談話室まで案内してくれた人」


 そうか苗字の既視感はそれか。

 ていうかあの女性も下級生だったのね。

 長身だし、涼やかな雰囲気だったから大学生くらいかと思ってた。


 私の一言に虚を突かれたように女の子は固まっている。うん、多分合ってる。

 経緯はわからないけれど、私の後ろの小動物系女子たちも困ってるし、部活見学に来たなら言い訳くらいは聞いておくか。


「そこの巻き込まれたっぽい子も手芸部の見学? とりあえず事情も言い訳も中で聞くから入ってちょうだい」


 気まずそうにする長身男女と、まだ戸惑っている男子をとりあえず技術室に引っ張り込んでおきましょう。

最近忙しくてUVレジンに触れてないです。

趣味のお絵描きタスクも溜まりまくりです。

年末年始にできるかな。おやすみ少ないけれど。

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完結済み前作です。
ゲームで育てた不人気作物パースニップでみんなを元気にしてあげる
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