↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50歳主婦、異世界で勇者パーティー候補のイケメン僧侶と入れ替わりました。  作者: 海老のロドリゲス
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/25

22.錬金術とノエル

 午後の授業が終わり、私たち3人はノエルの席に集まっていた。


「メトスさまに相談する場所なんだけど、学校で? それとも教会で?」


 メトスさまは私たちと同じく、教会で部屋を借りて過ごしている。

 学校で相談するとなれば、他の講師や生徒たちにも話を聞かれてしまう恐れがある。ただ、教会でとなれば時間もだいぶ遅くなるだろう。


「ぼくはどっちでもいいよ」

「そうですね。あまり人に聞かれない方が良さそうです。私は教会がいいかと思いますが……。ノエル、帰りが遅くなりますが構いませんか?」

「うん。別に早く帰ったところでぼく1人だし」

「じゃあ一緒に教会へ行きましょうか」


 学校を出て、3人でのんびりと教会を目指す。

 ノエルのふわふわした銀の髪が、上下に動くのが目の端に映る。

 私は髪に触れたくなるのを我慢して、ノエルに話しかけた。


「ノエル、私の浅い知識では、錬金術って等価交換なんだけどさ。ゴーレムの身体を岩のかけらから作るのはわかるとして、動かすのはどうしてるの?」


 ノエルは一瞬驚いたように飛び跳ねると、立ち止まって私を見上げた。

 きらきらしたすみれ色の瞳が好奇心に満ちているように見えた。


「どうして等価交換って知ってるの? 錬金術の勉強したことあるの? 動かすにはね、魔石を使うんだよ」

「魔石?」

「そう。魔石に魔法陣を使って命令を書き込むんだ。魔石の大きさによって書き込める情報量が変わってくるんだよ」


 私が知る錬金術師は、ノエルのほかには『鋼とその仲間たち』くらいしかいないけど、その知識があるおかげでノエルと仲良くなれそうだ。


「エミコ、よく知ってますね。錬金術は魔法よりも高度ゆえに学ぶ者が少なく、そして理解できるものも少ないのです」

「そうなの?」

「私も等価交換や魔石に命令を書き込むのは初めて知りました。……というか、魔石に書き込むなんて、そんなことできるんですね」

「あ、魔石に書き込むのはね、多分、ぼくだけしかできないよ。ぼくが考えたんだ」


 リッカが息を飲むのが聞こえた。

 ああ、この子が勇者パーティー候補に選ばれた理由が、あらためてわかった気がする。この圧倒的な才能があれば、どうにかできるとみんな思ってしまうんだろう。


「ノエルは魔法も使えるの?」

「使えるよ。適性は光だけど、でもそんなに得意じゃないかも。錬金術の方が面白くてあんまり練習してないから」

「練習したら、私よりすごい使い手になれそうです」


 リッカが真剣な表情でノエルを見ている。

 それを知ってか知らずか、柔らかい笑みを浮かべてノエルは言った。

 

「そんなことないよ。試験を見てたけど、リッカは対応が早くてすごかったし。ぼくはとっさに判断できないから、先に魔石へ命令を書き込んでゴーレムに任せちゃった」

「魔石はいくつも持ってるんですか?」

「ううん。大きいのは高価だから、ゴーレムを崩して取り出してるよ。授業で作ってるゴーレムは小さい魔石にしてるけど、その分単調な命令しか書けないんだ」


 聞けば聞くほど、この世界に疎い私にもノエルが規格外の天才なんだとわかる。目を輝かせて話す姿はほほえましいんだけどね。




 教会にたどり着くまでの間、ノエルは錬金術についてたくさん教えてくれた。とはいえ理解できたかというと……。

 リッカですら「難解で私には手に負えません」と言い出していたから推して知るべしというところだ。


「メトスさまはいつも教会で夕食を召し上がられます。その後にお話しするのがいいでしょう。ノエルも今日はここで夕食をとりませんか?」

「いいの?」


 ノエルはぱっと顔を明るくしてリッカを見た。

 もしかしたらひどくナーバスになっていたのは、パーティーに入りたくないだけじゃなく、知り合いがいなくてホームシックになっていたのもあるかもしれない。


「もちろんです。そろそろ夕食の時間ですし、食堂へ行きましょうか」

「うん」

 

 リッカの言葉に、ノエルは嬉しそうにうなずくと私の方を見た。

 首をかしげる姿がまるで小動物のようだ。


「エミル? エミコ? も一緒に行こう?」


 かわいい。

 きっと、リッカの呼び方から疑問に思ったのだろう。

 そういえば私の事情をノエルにまだ話していなかった。

 そんな簡単に話していいことではないかもしれないけれど、ノエルには事情を伝えてもいい気がする。

 ノエルが裏表のない、いい子だということが話してみてわかった。話したら、きっと力になってくれるだろう。

 そして、その錬金術の知識があれば、審理の庭へ行く方法を見つけられるかもしれない。それに、候補生の中で、パーティーへ入るのに問題があるって意味では仲間だしね。

 私は入れ替わりについて話すことに決めた。




 食事を前に、いつものお祈りをする。

 今日はノエルと話して仲良くなれた。そのことを感謝した。


「ノエル、実は……」


 食事が終わり、メトスさまのところへ行く前に、ノエルに入れ替わりのことを話した。メトスさまには、私が候補生として学んでいる理由についても、尋ねてみるつもりだった。

 話を聞いたノエルは、ひどく驚いてしばらく黙っていた。

 そして悲しそうな顔で私に謝った。


「エミコ、ごめんね。エミコの方が大変な思いをしているのに、ぼくは自分のことばかりだった。ぼくが力になれることがあったら言ってよ! 絶対に協力するから」


 やっぱり優しい。そしてかわいい。

 かわいいばかり言ってる気がするけど、かわいいんだからしょうがない。思わず抱きしめたくなって、でもこれは犯罪かしらと思ってやめました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。