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50歳主婦、異世界で勇者パーティー候補のイケメン僧侶と入れ替わりました。  作者: 海老のロドリゲス
2章

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17/25

17.異世界の常識①

「本日はこれで終了とする。明日からは講義に入る。心して臨むように。以上」


 ガルド先生の言葉に安堵のため息が漏れた。

 候補生たちは誰に指示されるでもなく、自然と隊列を作って講師たちに挨拶をする。もしかしたらこの試験は、講師の実力を見せるデモンストレーションの意味合いもあったのかもしれない。

 攻撃と防御、2つの試験しか受けていないのに、ひどく疲れてしまった。他の候補生たちも同じようで、疲れ切った顔をしている。

 けれど、もし勇者パーティーに入って魔王討伐の旅となったら、きっとこれ以上の緊張感ある戦いを強いられるのだろう。

 エミルはともかく、つい最近までパート勤めの主婦だった私には荷が重い。いったいこれからどうなってしまうのだろう。

 とにかく学校生活をしていく上でも、この世界のことをもっと知っておかなければ。




 私たちは学校を後にした。

 帰り道、リッカとジョシュアに相談する。

 

「ねえ、私、候補生として学校へ通うには、この世界のこと知らなさすぎると思うの。少しでいいから教えてくれない?」

「そっか。エミコはこの世界の人間じゃなかったな。いいぜ! 力になるよ。でも俺にできることってあるのかな?」

「もちろんです。ジョシュアだって勇者ならではの何かがあるかもしれませんよ?」

 

 リッカもジョシュアも2つ返事で引き受けてくれた。


「じゃあ決まりだな! もしよかったら俺の泊まってる宿に来ないか? 料理が絶品でさ。昼飯まだだし、食ってからにしようぜ」

「あはは。ジョシュア、試験前からお腹すかせてたもんね。街での暮らしもよくわからないし、いい機会かも」

「ではそうしましょうか。ジョシュア、案内をお願いします」


 私たちはジョシュアについて宿に向かった。

 大通りを進み、広場の噴水と先代の勇者パーティーの像が見えてきた。少し裏路地へ入ったところに2階建ての大きな宿屋があった。


「ここだぜ! くぅぅ……腹減った! 早く入れよ」


 ジョシュアは選考期間の1年、こんな立派なところに滞在し続けるんだろうか?

 私たちは促されるままに、大きな木製の扉をくぐった。

 入ってすぐ右手に宿のカウンターがあり、左側は食堂になっているようだ。テーブルと椅子がいくつも並べられていた。奥の方には食堂のカウンターがあり、調理している様子も見えていた。

 すごくいい香りがする。

 

 ぐうぅぅ……

 お腹がもう我慢できないと悲鳴をあげた。

 

 「エミコの腹も早く飯よこせ! って言ってるな。リッカも腹ペコだろ?」

 

 空いているテーブルについてメニューを開く。

 やっぱり文字が読める。文字から勉強する必要がないだけマシだと思った。


「俺のおすすめはウサギ肉のシチューだぜ。肉が柔らかくて旨いんだ」

「じゃあ、それにしようかな。リッカは?」

「そうですね。私もシチューにします」

 

 食事が来るのを待っている間、私は不思議に思っていたことをジョシュアに聞いた。


「この宿って、結構豪華だよね? 選考が終わるまでずっとここに滞在するの?」


 武器屋で会った時は、ジョシュアは王様からの支度金とお母さんのへそくりで、かなりの大金を持っていた。けれど武器を買った今は、それほど手持ちはないだろう。


「ん? ここの支払いはみんな王様持ちだぜ」

「え? そうなの?」

「エミコ、食堂をよく見てください。周りに見知った顔がいるでしょう。遠方の候補生は、みな王家が費用を負担してここに滞在しています」


 私は言われるがままに辺りを見回した。学校で会った候補生たちが数人、すでに食事をとっていた。じゃあ私たちの分も負担してくれるんだろうか?

 

「え? 私たちは?」

「私たち僧侶は教会に滞在しますから宿泊の必要はありません。でもここでの食事代は、ありえないほど高額でなければ国が負担してくれますよ」

「もしかしてエミルの財布に結構金貨が入ってるのもそのおかげだったりする?」

「はい。勇者ほどではありませんが、候補生にも支度金が支給されます」

 

 実はエミルが17歳という年齢の割には、お金を結構持っているのが気になっていた。王様からの支度金というなら納得だった。


「あ、お金の話ついでに通貨について詳しく教えてくれる?」 

「そうですね。買い物のときはざっと教えただけでしたね。まず通貨は小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、金貨、紙幣の6種類あります。一般市民が普段使うのは、せいぜい金貨まで。紙幣は家を買うとか、馬を何頭も買うとかそういう時にしか使いません」

「あとは巨匠が鍛えた最高級の武器とかな」


 確かに強い武器は高額なイメージがある。

 

「まあそうですね。武器防具は高額なものも多いですから。そして小銅貨10枚=銅貨1枚、銅貨10枚=小銀貨1枚、小銀貨10枚=銀貨1枚、銀貨10枚=金貨1枚です。金貨2~3枚が平均的なひと月の収入ですね」

「銅貨1枚でパン1個くらいかな。今頼んだシチューがパン1個とセットでちょうど小銀貨1枚。銀貨1枚あったら3人で結構豪華な食事ができるぜ」


 うーん。日本円で換算すると銅貨が100円、小銀貨が1000円、銀貨が10,000円といったところだろうか?

 

「俺の住んでたミソニコミの街じゃあ、物々交換も多かったぜ。野菜と魚とか、毛皮と貝殻とか」

「物々交換は地域によって物の価値が変わってくるので、この町では高額でもあの町では価値が低い、なんてこともままあります」


 なんか交易みたい。安く仕入れて高く売れるとこにおろせばよい儲けになりそうだ。

 そんなことを考えていると、ウサギ肉のシチューがカゴに山盛りのパンとともに運ばれてきた。おいしそうな香りと湯気に食欲がそそられる。


「続きは腹ごしらえしてからにしましょうか。私もお腹がすきました」

「そうね! まずは食べましょう! お腹が減ってちゃ頭に入ってこないわ」

「このシチューをパンにつけて食うと旨いんだよ!」


 私は食事を楽しみながらも、次に何を聞いたらいいのか考えていた。

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