13.候補生
ガルド先生の指示のもと、私たち候補生は講堂を出て校舎の裏手にあるグラウンドへやって来た。グラウンドには大きな岩が3つ、等間隔に並んでいた。
あ、もしかして、岩砕く系の試験だったりする!?
もしそうなら、かなり有利じゃない!
私はテンションが少しだけ上がったが、気を引き締めるように辺りを見た。
まあ、そうと決まったわけじゃないしね。
候補生たちはみな緊張した面持ちで講師の様子をうかがっていた。自然と岩を正面に、横一列に並んでいた。
「なんか俺、腹減ってきちゃった」
隣のジョシュアが小声で言った。
一部、なんの緊張感も抱かないアホがいた。
あえて、さすが勇者の胆力だとでも言ったほうがいいのだろうか?
……そんなことないよね。
「しーっ! ジョシュア、いくら勇者でも緊張感がなさすぎです」
「……ごめん」
ジョシュアがリッカに注意されてしょんぼりとうなだれたところで、ガルド先生が言った。
「これから攻撃の試験に入るが、その前にひとつ伝えておく。ここにいる諸君はライバルでもあり、ともに戦う仲間でもある。これから連携して挑む課題も多々設けている。それを念頭に入れて行動を心掛けよ。候補生全員、今から自己アピールをせよ。これは何も私たち講師に向けてのものだけではない。仲間に向けたものでもある。左から前へ出よ!」
「はい!」
大きな声で返事をして、青い髪の男子が前に出た。緊張しているのが遠目にもわかる。
「フィン・アシュフォード、18歳。シュガ王国出身。片手剣使いです。魔法も使えます。得意属性は火です」
ぎこちない自己紹介だったけれど、一番最初は誰でも緊張する。仕方のないことだろう。
フィンを筆頭に、自己紹介が進んでゆく。
そんな中、私は少し焦っていた。
エミルのことよく知らないのに、なんて自己紹介したらいいの?
そもそも本物のエミルなら魔法使えるけど、私使えないし……。
そうこうしているうちに順番が回ってきてしまった。
私は覚悟を決めて前に出た。
「エミル・シュトー、17歳。ミッソゥ国出身です。僧侶ですが、事故にあい、魔法が使えません。攻撃手段は投石です」
みんながざわつくのを感じた。
まあ、そうでしょうとも。石を投げることしかできないやつが勇者パーティー候補とかとんでもないよね。
でも見栄を張って元祖エミルの得意魔法を言ったところで、どうせすぐにばれちゃうじゃん。
そう。私は開き直った。
開き直ったら、なんだか候補生を観察する余裕も出てきた。
緊張の具合も人それぞれだ。こういう時の度胸や態度なんかもひょっとしたら講師たちは見ているのかもしれない。
私は自然と背筋が伸びるのを感じた。
ほどなくして、全員の自己紹介が終わった。
候補生は以下の通り。
フィン・アシュフォード 18歳 男 シュガ王国出身
アレン・ヴァレリー 21歳 男 シュガ王国出身
カシウス・ラインハルト 22歳 シュガ王国出身
ソニック・ハーヴェイ 17歳 ジオ公国出身
クラリス・ヴァレンティナ 20歳 ジオ公国出身
ネネノノ・コノ 16歳 ジオ公国出身
ヴィヴィア・レイ 19歳 ビネガ共和国出身
マリエル・ロゼッタ 21歳 ビネガ共和国出身
ノエル・メイヤー 15歳 ビネガ共和国出身
イザベラ・フォン・ベルンシュタイン 17歳 ソイソス王国出身
ニコラス・フォン・ベルンシュタイン 19歳 ソイソス王国出身
リゼット・ミュラー 17歳 ソイソス王国出身
エドガー・クロフォード 21歳 ミッソゥ国出身
リッカ・ヴィーン 19歳 ミッソゥ国出身
エミル・シュトー 17歳 ミッソゥ国出身
この15人が勇者パーティー候補だ。
今更気づいたけど、国の名前がみんな調味料だわ。
それはともかく、印象に残った候補生が何人かいた。
まずは鳥人族のソニック・ハーヴェイ。
翼がある時点で目につくけど、物怖じせず、みんなの前で勇者のジョシュアを尊敬していると言って握手をもとめていた。
外見的な面では、獣人族のネネノノ・コノも個性的だった。
茶色の猫耳としっぽがあり、髪色が黒と白のツートンカラーのショートヘアだ。
しっぽがふわふわゆれて、自己紹介中も笑顔が多かった。
かわいらしくて目を奪われた。
その次のヴィヴィア・レイもすらりと背の高い女の子で、鮮やかな緑の髪が印象的だった。
メトスさまと同じく、3属性の魔法が使えるらしい。
そして、私の一推しはノエル・メイヤー。
銀髪で緩やかなくせ毛がかわいい男の子だ。錬金術が得意らしい。
単純にビジュがどストライクだった。
あと、おどおどした話し方も母性本能をくすぐった。
ってか、候補生全員ビジュが良い。
みんな顔で選んでるのかと思うくらいの美男美女ぞろいだった。
このメンバーでこれから一緒に鍛錬していくと思うと楽しみだ。
あ、あとジョシュアもね。
ガルド先生が候補生全員を見回しながら言った。
「全員終わったな。それではこれから試験を始める。課題は目の前の岩を攻撃し、砕くこと。武器や防具はこちらで用意しているが、もちろん持参のものを使用しても構わない。非戦闘職にも受けてもらう。手段は問わない。以上」
思った通り、課題は得意な岩砕きだった。
とりあえずこの試験は何とかなりそうだ。
ただ、リッカのような回復職や補助職はどうするのだろう? 戦闘職にしたって、弓なんかじゃ岩を割るのは至難の業だろう。
もしかしたら、評価基準は砕くだけではないのかもしれない。
私は気を引き締めて、試験に臨むことにした。




