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50歳主婦、異世界で勇者パーティー候補のイケメン僧侶と入れ替わりました。  作者: 海老のロドリゲス
2章

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12/24

12.選考初日

 今日から勇者パーティの選考が始まる。

 私とリッカは候補生用の制服に着替え、学校に向かっていた。

 制服は、平民が着る日常着と比べて、だいぶ質が良かった。現代の衣服とそれほど差を感じないほどだ。

 各地から候補生を集め、1年の月日をかけて行う選考会は、ミソシールの街でも話題の出来事のようだ。制服を身にまとう私たちに、自然と視線が集まっていた。

 学校というからには、もちろん一般の生徒も通っている。ただし候補生は全く別のカリキュラムで授業を受けるそうだ。


「候補生との初顔合わせね。緊張するなあ」


 私は緊張していた。肉体は17歳だけど、中身は50歳のおばさんだ。学校自体、30年前に短大を卒業して以来だ。

 能力的なものはもちろん、他の候補生になじめるかも心配だった。


「そうですね。でも候補生は勇者のジョシュアを除いて各国3人、合計15人もいます。きっと馬の合う者もいますよ」


 リッカは私の緊張をほぐすように言った。


「そうね。今から悩んでも仕方ないか」


 私はリッカの気遣いが嬉しかった。

 学校は、教会からだと王城を挟んだ向こう側にある。歩いて15分くらいの距離だ。

 城壁沿いを歩いてしばらくすると、赤い屋根の2階建ての大きな建物が見えてきた。


 まさか50になって、異世界で学生生活をすることになるとは。

 どうせなら、エミルのためにもがんばってみよう。

 私は決心を胸に門をくぐった。




 リッカと連れ立って、校舎に隣接する講堂に向かう。入り口の受付で身分証を提示すると、ネームプレートを渡された。


「エミコ、こちらを胸につけてください」


 私は言われるがままに胸元にそれをつけた。

 講堂は広く、舞台の前に何脚もの長椅子が並べられていた。少し教会の礼拝堂に雰囲気が似ていた。

 私たちは3列目の長椅子に腰掛けた。

 すでに何人かの候補生が席に着いている。その中に、背中に大きな翼のある男の子がいた。


「リッカ、あの男の子、翼がある」


 私は隣にいるリッカに耳打ちする。


「ああ、鳥人族ですね。ミッソゥ国ではあまり見かけませんが、東のジオ公国や南のビネガ共和国では、鳥人族や獣人族はそんなに珍しくありません」

「そうなんだ! 私のいた世界では人間しかいないからびっくりしちゃった」


 あらためて異世界にいるんだと実感する。

 あまり見すぎるのも良くないと思いながらも、立派な翼をつい目で追ってしまう。


「そうなんですね。ちなみにここ、ミッソゥ国や北のシュガ王国、西のソイソス王国ではエルフやドワーフが多いですね。まあ、どの国も一番多くいるのは人間ですが」


 定番の種族の登場に胸が高なった。


「やっぱりエルフやドワーフもいるんだ! 会ってみたいな。候補生にいるかしら」

「エミコはもう会っていますよ」


 突然そう言われて、記憶の中を探る。

 どこかであったかしら?

 私はたまらずリッカに聞いた。


「え? いつ?」

「武器を買った店の店主がドワーフでした」


 店主の姿を思い返してみる。

 小柄でがっしりとした体格は、言われてみれば確かに、私の思い浮かべるドワーフ像と同じだった。


「言われてみれば納得かも!」

「まあ、鳥人族や獣人族ほど特徴的ではないですからね。でも意識して見たらすぐにわかります」

「そうなんだ。じゃあ、エルフにも会ってる?」


 その時、リッカがイタズラっぽい笑みを浮かべた。


「ふふふ。会ってるもなにも、エミルがハーフエルフですよ」

「え? エミルが!?」


 私は驚いてリッカを見た。


「はい。エルフか、エルフの血が入っているものしか金髪になりませんから」

「でも、エルフって耳が尖ってるイメージなんだけど、エミルは普通じゃない?」

「ああ、ハーフエルフですからね。人間の血が入る分、特徴は薄れるんです」

「そうなんだ」


 確かに審理の庭で会ったエミルは、どこか人間ばなれしたイケメンだったし、長身なのもエルフっぽい。

 でもまさか、ハーフエルフの中に入ることになるとは、人生50年、生きてみるものだ。

 私たちが種族について話していると、後ろから声をかけられた。


「よお! エミル、リッカ。この前はありがとな」

「ジョシュア!」


 私たちは2日ぶりの再会を喜んだ。ジョシュアはリッカの隣に座ると小声で言った。


「鍛錬してたら遅くなっちゃってさ。遅刻しなくて良かったぜ」


 爽やかに笑いながら言うジョシュアは、うっすらと汗をかいている。勇者だけあって、こんな特別な日でも鍛錬は欠かさないんだと感心した。


「ほら、2人とも、壇上にメトスさまたちが出てこられましたよ」


 見ると壇上には、メトスさまを含め5人が並んでいた。そういえばメトスさまは講師として参加されるんだった。

 5人の中の1人、渋い壮年の男性が1歩前に出て大きな声で告げた。


「勇者、および勇者パーティー候補の諸君。初めまして。私が今回の勇者パーティー選考の総責任者であるガルド・ヴァルケンだ。剣技と近接戦闘を担当する。よろしく」


 低く迫力のある声が講堂に響く。

 私は身が引き締まる思いで、ガルド先生の次の言葉を待った。


「近年は新たな魔王の誕生と魔族の台頭による魔物の活性化で、各地で甚大な被害が出ている。そんな折に神の託宣がおり、新たな勇者が誕生した。勇者ジョシュア・ジョヴァン、起立せよ」


 私はリッカの隣にいるジョシュアを見た。スッと立ち上がったジョシュアは神々しく見えた。


「これから、この勇者ジョシュア・ジョヴァンとともに魔王討伐に赴くパーティメンバーを選考する。選考に漏れた者にも、後方にて支援を依頼することもある。世界の平和のために尽力を期待する。以上。それでは各講師の紹介に移る」


 ガルド先生は1歩後ろに下がると、隣のメトスさまを見た。メトスさまはうなづくと、前に出て小さく礼をした。


「わしはメトス・シューレンじゃ。今回補助系魔法と魔法陣の基礎を担当する。よろしく頼むの」


 その次は、小柄で優しそうな年配の女性だ。


「私はエレノア・フェルミナです。回復と治療魔法の担当です。よろしくお願いします」


 もう1人女性がいた。まだ30代くらいだろうか?背が高くて金髪をお団子のように結い上げている。彼女もエルフの血が入っているのだろう。


「セレスティア・ロゼルです。攻撃魔法と攻撃系魔法陣を担当します。魔法が使えない候補生にも一応魔法陣は教えますので。よろしく」


 最後は40代くらいの体の大きな男性だった。やけに笑顔が爽やかだ。


「俺はドラン・グレイヴ。防御の基礎、技術について教える。みんな、俺についてこい!」


 4人の講師の紹介が終わった。

 なかなか個性的な講師陣だった。果たして、授業について行けるだろうか?

 不安に感じていたところに、ガルド先生が迫力のある大きな声で告げた。


「この後、すぐに各人の実力を測るために試験を行う。これは実力把握が目的であり、選考に直結するものではないが、心して臨むように」


 早速試験が始まってしまう。

 私にできることなんて、岩を砕くくらいしかないんだけどー!

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