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50歳主婦、異世界で勇者パーティー候補のイケメン僧侶と入れ替わりました。  作者: 海老のロドリゲス
1章

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10/25

10.勇者降臨①

 私たちは、市場で筆記用具やノートなど学業に必要そうなものを買いそろえていった。

 魔法陣を学ぶときに、魔素入りのインクを使うそうだ。それに合わせて万年筆も購入した。なんでも、魔法を使えなくても魔法陣は描けるんだとか。

 いまいち仕組みはよくわからないけど、私にも描けるのかしら?

 それはともかく、店で値札を見ていて気がついたことがある。

 この国の文字を読めるのだ。それも昔から知ってるみたいに、なんの違和感もなく。

 これも審理の庭の効果なら、新しい能力を得る可能性もなきにしもあらずだ。

 少しだけ希望が見えた気がして、買い物が楽しく感じた。





「やっぱり、武器屋や防具屋があるんだね」


 通りをのんびりと歩いていると、武器防具と書かれた看板が目に入った。ガラス越しに重そうな鎧が展示されている。その隣の店には、剣や杖が何本も並んでいた。


「そうだ。エミコ、グローブを買いませんか?」


 突然、リッカが言った。


「グローブ?」

「はい。戦闘を魔法でなく投石に頼るのなら、杖よりも手を守るグローブの方がいいでしょう。手甲でもいいかもしれません」

「そうね。そうかもしれない! 武器屋に寄ってもいい?」

「もちろんです」


 私たちは武器屋の扉を開けた。

 そこには先客がいた。

 目に鮮やかな赤髪が印象的な若者が、店主と話していた。

 

「ねえ、おっちゃん。そこの大剣ほしいんだけど、いくら?」

「あぁ? 予算は?」


 赤髪の青年は鞄から革の袋を出すと、店主に中身を見せた。


「一応、こんだけあるんだけど……」

「……! お客さま、お目が高い。そちらはミスリル鉱石を使った剣で、ミソシール一の工匠が鍛えた業物です」


 なんか、明らかに態度が変わった気がする。

 というか、所持金をあんなふうに見せちゃうのはアリなんだろうか?

 なんか危なっかしいなあ。

 私たちは商品を見ながら、なんとなく耳を傾けていた。


「そうなんだあ。俺って見る目あるぅ! それ買うよ!」

「金貨5枚です。毎度あり!」


 無事に交渉が済んだようだ。

 でも、金貨5枚って相当の金額だ。

 事前に聞いていたお金の相場から考えると、金貨1枚は日本円で10万くらいの価値があるような印象だった。

 いいとこのボンボンなのかな?

 私がそんなことを考えていると、リッカが突然、2人の間に割って入った。


「すみません。本当にそれ、ミスリルですか? 色も輝きも、本物には遠く及びません。それに本当にミスリルだったとしても、金貨3枚がいいところでしょう」


 ……どうやら、赤髪の青年はぼったくりにあっていたらしい。


「なんだあんた。何を根拠にそんなこと言うんだ? 商売の邪魔するな」

「少し勉強すればわかることです。それよりいいんですか? この方、勇者さまですよ? 勇者さまに紛い物を掴ませた店と評判になったら、それこそまずいんじゃないですか?」


 ……え?

 このアホそうな子が勇者なの!?

 どこをどう見て、勇者と言ったの?


「……嘘つけ! アホづらのこいつのどこが勇者だって言うんだよ!」

「彼、首元に星型のアザがありますよ?」

「……!」

「エミコ、この店は信用できません。行きましょう。勇者さまも、ほら、行きますよ」


 リッカは私たちの腕を掴むと、足早に店を後にした。

 

 

 

 私たちは広場の噴水のベンチまでやってきた。


「勇者さま、初めまして。私はリッカ・ヴィーンと申します。こちらはエミル・シュトー……、中身は別人ですが。2人とも、勇者パーティー候補です」

「おー! 候補生か。さっきはありがとな! 思わず買っちゃうとこだったぜ。俺はジョシュア・ジョヴァン。ジョシュアって呼んでくれよ。これからよろしくな!」


 私は、勇者と呼ばれたジョシュアのことをまじまじと見た。

 エミルよりは少し低いけれど、背は高く、がっしりしている。天真爛漫なアホっぽさは気になるけれど、これまたタイプの違うイケメンだった。

 それにしても、ジョシュア・ジョヴァンって……ジョジョじゃん。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 私は、さっきから気になっていたことをリッカに聞いた。


「ねえ。リッカはどうしてジョシュアを勇者だとわかったの?」

「勇者には、神の託宣が下りた後、首元に星型のアザができるのです。ジョシュアにはそれがありました」

「え? 星型のアザ!?」


 思わずジョシュアの方を見た。


「おう! 見てみるか?」


 そう言うと、ジョシュアは首をぐっと傾けて左側の首元を見せてくれた。

 確かにそこには星型のアザがあった。

 ……これはもう、ジョジョでしかないじゃん。

 ジョシュアがスタンドを使えても、私は驚かない。


「ありがとう。なんかいろいろツッコミどころが多くてびっくりした」

「そうかあ? なんかわかんないけどよかったな!」


 お礼を言う私に、見当違いな返事が返ってくる。リッカが心配そうにジョシュアの顔を見ながら聞いた。


「ジョシュア、これからのご予定は?」

「別の武器屋に行くよ。勇者パーティーの選抜に俺も一緒に参加するんだけどさ。それ用の武器を新調したくて」


 勇者は、もうジョシュアに決まっているのに参加するのだろうか?

 不思議に思ってリッカに聞いた。


「勇者も参加するの?」

「戦闘には連携も大事ですからね」

「なるほど」


 確かに大事なことかもしれない。

 ゲームも、個の強さも大事だけれど、バランスや組み合わせで戦いやすさが変わったりするもんな。

 そんなことを考えていると、ジョシュアが子犬のようなうるうるした目をして言った。


「なあ、どこかいい武器屋知らない?」

「うーん。私もこの街の人間じゃないので店は知りませんが、多少の目利きはできます。もしよかったらご一緒しましょうか?」


 リッカが私の方を見る。

 うん。絶対にその方がいい。

 うっかりすると、この子、身ぐるみはがされちゃいそうだし。


「いいのか? お前らも予定あるだろ?」

「あ、私もグローブ見たくて武器屋に行ったから。ついでだし一緒に行こうよ?」


 ここで1人で行かせて、パーティー選考の時に会ったらスカンピンだった、なんて言ったら寝覚めが悪い。


「おう! ありがとな。それにしてもお前……エミルだっけ? 女みたいな喋り方だな」

「それについては込み入った事情がありまして……」

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